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第7話 聖木の館の研究。少女の呪法。

「え? 呪法?」

 セシリアがそう口にする横で、ラディウスはその呪法とやらの術式を確認してみようと思い、いつも通りガジェット――術式チェッカーの解析魔法を使いつつ、少女を凝視する。

 

「うへ……マジかよ……。魂魄(こんぱく)雁字搦(がんじがら)めにして封じ込めるような……そんな拘束術式が何重にも『身体そのものに』刻まれていやがる」

 術式を見ながら顔をしかめるラディウス。

 

「それって、私が伯爵にされたような?」

「ああ。あれと似たような術式だ。といってもタチの悪さではこちらの方が圧倒的に上だがな」

「うわぁ……。そんな代物を、直接身体に刻み込んでるとか……。外道すぎ……」

 ラディウスの説明を聞いたセシリアが、ドン引き気味の表情と声でそんな風に言う。

 

「まったくだ。よくもまあこんな極悪な術式を思いついたもんだ……」

 と、呆れ半分嫌悪半分といった口調で言うラディウス。

 そして、何かに気づいたように首を傾げる。

「ん?」

 

「どうかしたです?」

 メルメメルアが少女を凝視するラディウスに疑問を抱き問いかける。

 それに対しラディウスは、

「いや、これ……封魂術の術式が一部使われているみたいでな……。しかも魂を外から取り込む術式が発動状態だ。……もしかして、妖姫と皇女のように、魂を別の誰かと入れ替えられている……のか?」

 なんて事を呟くように言った。

 

 それを聞いていたテオドールが、

「――アルフォンス様もそのような事を仰られていましたね。ディーゲル殿のご息女の魂がこの身体には封じられている可能性が高い……とも。もっとも、アルフォンス様にしては珍しく、あくまでも推測――可能性でしかない、などと仰っていましたが……」

 と、そんな風に言う。

 

「ええええええっ!? もしそれが本当だとしたら、外道の極みすぎじゃない!?」

「まったくなのです。……でも、です。それが本当であると考えると、色々と合点がいく所あるのは事実なのです……」

 驚き、憤るセシリアに同意しつつ、そう言って顎に手を当てるメルメメルア。

 

 ――なるほど。要するにあの時の……時を遡る直前に見た――いや、対峙したディーゲルの娘は、『中身が別人』だったわけか……

 だとすると、やはりこの少女には本物のディーゲルの娘――魂が封じられていると考えた方が良さそうだな。


 ラディウスはメルメメルアが何を言いたいのか理解し、心の中でそんな風に呟く。

 

「なんにせよ……呪法を解く必要があるな……。その上で、場合によっては魂を再度入れ替え直さないと駄目って事か……。これは、ディーゲルの娘さんを救出すればそれで終わり、とはいかなそうだな……」

 そう言って腕を組み、「うーむ……」と思案顔になるラディウス。

 

「うん、たしかに……。というか、『聖木の館』ってサナトリウム兼幽閉のための場所……ってだけじゃなさそうだよね、間違いなく」

「はいです。あのエリミネーターとかいう奇妙な格好をした連中も、怪しさ満点すぎるのです」

 セシリアとメルメメルアのその言葉に、

「あの者たち――エリミネーターは、表向きサナトリウムとして運営されている『聖木の館』の廃棄処分を行う仕事をしている者たちです。もっとも、ここで言う廃棄処分の対象は『人間』なのですが……」

 と、こめかみに指を当てながら、そう説明するテオドール。

 その言葉には、嫌悪と憎悪が含まれているのが感じられる。

 

「……表向き。そして人間の処分……『聖木の館』は何かの研究施設?」

「ええそうですね。正直申しますと、完全に調べきれていないのですが、そこに関しては間違いないと考えて良いと思います」

 セシリアの問いかけに対し、テオドールは頷き、そう答える。


「何を研究しているのかは不明なのです?」

 そう問いかけたメルメメルアに、

「はい、流石というべきか、なかなかにガードが固く……。エクリプスがどうとか……という所までは情報を得る事が出来たのですが、それ以上は不明でございます……」

 サラリととんでもない事を言って返すテオドール。

 

 それを聞いたセシリアが、

「うええええええっ!?」

 と、再び驚きの声を上げるのだった――

思ったよりも話が長くなったので、一旦ここで区切りました。

というわけで(?)、次回の更新ですが……明後日、金曜日の予定です!

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