第6話 聖木の館と隠密宰相。そして少女。
予約設定がミスっていて遅くなりました……
「――それと、もう1つ気になる事が……」
ラディウスがそう口にすると、セシリアが聖女モードの口調で、
「アルフォンスという人が、どうして私たちと接触する事が分かっていたのか……ですか?」
と言って、ラディウスと初老の男性を交互に見た。
ラディウスは、さすがにこういう所では鋭いな……と思いつつ、
「ああ、その通りだ」
と返す。
「それに関しては、正直言うと私も良くわからないのですが……時々アルフォンス様は、まるで未来が分かっているかのような言動をなされるのです。しかも、本当にその通りになります。今回もこの少女を聖木の館から連れ出すように指示されましたし……」
初老の男性はラディウスたちにそう告げて、車内の少女を見た。
――もしかして、そのアルフォンスという男は、時を遡っている……?
という疑問が湧いてきたラディウスだったが、あくまでも可能性であり、確証があるわけでもないので、そこは口にしなかった。
「なるほどなのです。……ところで、指示されて動くという事は……貴方はゼグナム解放戦線の方なのです?」
「おっと……これは失礼いたしました。まだ名乗っておりませんでしたな」
初老の男性はメルメメルアの言葉を聞き、そう答えると一度咳払いをしてから、
「私の名は、テオドール・ダイクス・ディグナード。かつて、ゼグナム王国で宰相をさせていただいておりました者で、今はゼグナム解放戦線に属しており、『聖木の館』の潜入調査を行っております。いえ……おりました、ですね」
と言った。
「旧ゼグナム王国の宰相……。なるほど、貴方がかの『隠密宰相』なのですか。納得なのです」
メルメメルアが顎に手を当てながら、そう口にする。
「有名な方なのですか?」
「宰相でありながら、諜報機関の長でもあり、自身も非常に優秀な諜報員だったとギルドの記録にあったのです」
聖女モードのセシリアの問いかけに対し、そう答えるメルメメルア。
「なるほど……優秀な諜報員……」
「――そういう貴方様も諜報員であるとお見受けしましたが? あと、その言葉遣い……無理にそのように話しておりますよね? 普通に話されても結構ですよ」
セシリアの呟きに対し、そんな事を言うテオドール。
「っ! ……じゃあ、普通に話させて貰うね。あの話し方って疲れるから。――ちなみに、元諜報員であって今は聖女なんだ」
一気に普段の砕けた口調に変わったセシリアが、そう言葉を返す。
「元諜報員の聖女……。それはまたなんとも異色かつ興味深い経歴ですね」
メルメメルアと同じような感想を述べるテオドール。
……まあ、事情を知らないとたしかに異色……というか良くわからん経歴ではあるよな。
ともあれ、すっかり後回しになっていた自己紹介をする俺たち。
そして、俺たち3人の自己紹介が終わった所で、
「そちらの車に乗ったままの貴方は何と言うのです?」
と、メルメメルアが問いの言葉を投げかける。
「あ……申し訳ございません。それについてひとつ説明が抜けておりました」
反応のない少女に代わり、そう言ってくるテオドール。
「説明……なのです?」
「はい。――あの少女なのですが……実は呪法がかけられておりまして……。誠に申し訳ありませんが、話しかけても反応はいたしません」
首を傾げるメルメメルアに対し、テオドールがそんな説明をするのだった――
アルフォンスについては、結構登場が先になる予定です。
さて、次回の更新ですが……明後日、水曜日を予定しています!




