第3話 聖木の館からの逃亡者。話をする3人。
「――シルバリーレイッ!」
セシリアが前を行く車のタイヤに狙いを定め、声を大にして言い放ちながら引き金を引いた。
するとその直後、キュイィンッ! という甲高い音と共に銀白色の光線が銃口から発射され、タイヤを穿ち貫いた。
というより、威力――貫通力がありすぎてそこで止まらず、そのままその先にあった別のタイヤも撃ち抜いていたりする。
無論、そんな一撃を受けて無事であるはずもなく、前を走る車は瞬く間に制御不能に陥り、先の車と同じ運命を辿る事となった。
「うわぁ……さすがというかなんというか、とんでもない威力……」
「ですです。あんな細い光線なのに恐ろしい貫通力なのです」
そんな感嘆と呆れの入り混じった言葉を口にするセシリアとメルメメルア。
「いや、そこまで強力な物じゃないぞ。タイヤくらいならああして貫けるが、壁とかはちょっと厳しいし」
「あ、そうなの?」
「ああ。あ、いや……薄い壁ならいけるか?」
「十分強力だった!」
などというやり取りをラディウスとセシリアがしていると、
「あれ? 前の車が速度を落としたのです」
と、告げるメルメメルア。
「さすがに後方の状況――追っ手の車がいなくなって、代わりに私たちの乗るこの車がいる……っていう事に気づいたんだと思うよ」
そうセシリアが言い、ラディウスも同感だと思う。
……程なくして、前の車が路肩に寄って停止する。
「よし、こっちも止まるとするか」
ラディウスはバックミラーで後方を確認しつつそんな風に言うと、前の車の後方に車を停止させ、ドアを開けて車外へと出た。
セシリアとメルメメルアが、ラディウスに続くようにして車外へと出た所で、前の車のドアが開かれ、初老の男性が中からその姿を見せる。
「貴殿らが、追手を――後方から追ってきていた車を撃退してくれたのですか?」
単刀直入に、状況だけを速やかに確認したいと言った雰囲気で、そんな風に問いかけてくる初老の男性。
ラディウスはそれに対し、追われているという状況を考えればまあそうだよなぁ……と思い、さてどう返すか……と思案を巡らせようとした所で、セシリアが一歩前に歩み出た。
そして、
「はい。差し出がましいとは思いましたが、『この先にある聖木の館まで、ちょっとばかしひとりの少女を迎えに行く所でしたので』そのついでに、手助けさせていただきました」
などと、言葉の一部を強めにしつつ聖女モードで答える。
ラディウスは、ここはセシリアに任せた方が良いかもしれないと考え、腕を組んで動向を見守る事にした。
「聖木の館に……。なるほど……そうでしたか。ふむ……」
初老の男性は、セシリアの言葉に何か思う所があるのか、そう言葉を返しつつ自身が乗ってきた車の中をチラリと一瞥する。
そして、セシリアたち3人を見回した後、
「よろしければ、少しばかり詳しくお話をお聞かせいただきたいのですが……」
と、そんな風に話を切り出した。
「はい、こちらも詳しく事情をお聞きしたい所ですし、願ってもない申し出です。……ですが、ゆっくりとお話をする前に……排除しておかねばならない存在が近づいてきているようです」
セシリアはそう言いながら、後方へ鋭い視線を向けるのだった――
向こうの世界よりも、こちらの世界の方が性に合っているんじゃないか感全開のセシリアです。
次回は、『神剣の聖女』としての本気が垣間見える……かもしれません。
そして、その次回の更新ですが、明後日木曜日の予定です!




