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第3話 村への道中に魔物出現。しかし、瞬殺す……え?

「引き当てた? どういう事?」

 ルーナはラディウスの言葉の意味を理解出来ず、首を傾げて問いかける。

 そんなルーナに対し、ラディウスは森の方へと視線を向けたまま、

「――ディズ・スパイダーがこっちへ接近してきている。1体しかいないようだから、大した脅威ではないけどな。ああ、ルーナも『マリスディテクター』を使ってみるとわかるぞ」

 と、そう告げた。

 

「え? えーっと……あ、これかしら……? 『マリスディテクター・改』ッ!」

 言われたとおりに魔法を発動したルーナは、視線の先……東93フォーネ先に魔物――ディズ・スパイダーがおり、こちらへ向かってきている事を認識する。


「た、たしかに魔物が『いる』のが感じ取れたわ。距離も名前も、自然に頭の中に入ってくるし……。凄いわね、魔法って……」

「そうだな。……使い方さえ誤らなければ魔法ってのは便利だ」

「……ラディ?」

 暗い表情で言ったラディウスの言葉にルーナが首をかしげる。


 ――おっと、つい時を遡る前の事を思い出してしまった。

 ラディウスは頭を振ると、「ああ、いや、なんでもない」と言って、ディズ・スパイダーの迫ってくる森の方へと視線を向けた。

 

「にしても……あの魔物、一直線にこっちへ向かって来ているが……普通に考えたら変な動きじゃないか? あの距離から人間を感知して、しかも一直線に襲いかかってくるとか……」

「そう言われるとそうね……。もしかして、あの魔物の目的は私たちじゃない……とかだったりするのかしら……」

「うーん……魔物ってのは人間とは異なる感覚を持っているという話だし、こっちの方に、魔物特有の感覚を刺激するなにかがあるっていう可能性は、たしかに否定出来ないな」

「ちょっと下がって、様子を見てみるのもいいかもしれないわね」

「そうだな。試しに奴の進路上にならない位置まで下がってみるか」


 結論を出したラディウスとルーナが、予想されるディズ・スパイダーの進路上から離れる形で少し後退。

 それから程なくして、背中が風船のように膨らみ、緑色に紫色の斑がある毒々しい見た目の蜘蛛型の魔物――ディズ・スパイダーが森から飛び出してくる。

 

「さて、どう動くのやら」

 ディズ・スパイダーの動きを観察していると、戸惑った様子で周囲を見回した後、ラディウスとルーナの方を向き、迫ってきた。

 

「……私たちを狙ってきているような気がするわね」

「街道まで出た所で、なにやら戸惑ったような様子を見せた事を考えると、一概にそうとも言えないが……まあ、とにかく向かってくるなら倒すとするか。大して強い魔物でもないしな」

「あ、それなら私が魔法で倒すわ」

 ルーナがそう言ってラディウスと迫るディズ・スパイダーの間に立つ。

 

「そうか? じゃあ任せる」

 少し後ろに下がってそう告げてくるラディウスに、

「ええ、任せといて!」

 と、ルーナは自信満々に答える。


「あ、そうだ。この辺に住んでいるからわかっているとは思うが、奴にストーンフォ――」

「――ストーンフォール・改ッ!」

「って、おいぃっ!?」


 慌てて制止しようとするも、時既に遅し。ラディウスの視線の先に、先端の尖った岩が姿を現す。

 そして、ズドン! という音を立てて、ディズ・スパイダーを押しつぶした。


 と、その直後、ベチャ! という音と共に押しつぶされた背中が破裂。


「ふぁっ!?」

 中に詰まった緑色の体液が撒き散らされ――

「わぷぷっ!?」

 べっちょりとルーナの全身に、その緑色の体液が付着した。

 

「うえぇぇっ、な、なんなのよ、これ……っ。ネ、ネチョネチョしてて気持ちが悪いわ……っ」

「せいっ!」

 一歩下がっていたのと、ルーナが壁になっていたために事なきを得たラディウスが、手持ちの鞄から水筒を取り出し、中の水をルーナの顔にぶっかけた。

 

「わっ、つめたっ! きゅ、急に何するのよ!?」

 水をぶっかけられたルーナが、困惑と怒りの入り混じった声を上げる。

 

「その体液、水に触れると一瞬で無害化するんだ。っていうか、そうしないと皮膚が軽く溶解して、炎症を引き起こす。まあすぐ治るんだが、ルーナは人前に立つからな。炎症を起こすとまずいだろ?」

「そ、そうなのっ!? あ、ありがとう」

「……いや、お礼は後だ。その体液は皮膚だけじゃなくて、繊維――要するに服も溶かすんだ。つまり、放っておくと非常にマズい事になる。……ちなみに、俺の水筒の中身は……すまん、今ので空だ」


 水筒をひっくり返して中身がない事を示すラディウス。

 それを見たルーナは、

「えええええーっ!?」

 と、大きな声を上げつつ慌てて腰のツールポーチから水筒を取り出して服にかける。

 しかし、全身にかかった体液に対して、その程度では足りるはずもなく……徐々に服が溶け始めた。


「あわあわあわぁぁっ! 全然足りないーっ!? ど、どうしたらいいのっ!? み、水! 水ーっ!」

「この近くに水場はないのか? 川でも池でも、最悪泥沼でもいい」

「あ! あるわ! 300フォーネくらい先に、川が!」

「よし、ならそこまで走るぞ!」

 ラディウスが先に立ち、走り出す。


 ――あうぅーっ! こんなことになるなんて想定外よぉぉー!?

 って、走ると余計にネチョネチョするぅぅっ! ううーっ、気持ち悪いーっ!

 うわわわわぁーっ! どんどん溶けてきてるぅぅーっ!? ひぃぃーっ!


 ルーナはラディウスの後を追いながら、心の中で絶叫し続けた……

魔物の倒し方には注意しましょう! の回でした!(何)

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