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第1話 聖木の館への道中。街道を往く3人。

「凄いねこれ! 馬車とは比べ物にならないくらい速い! しかも、石畳の上を走っているのに揺れない!」

 後部座席に座るセシリアが、そんな歓喜の声を上げる。

 

 ――車用にアスファルトとかで舗装されている道路……なんてものは、まだないみたいだな。

 今も普通に石畳で作られた街道の上を走っている所だし……

 まあ、全然揺れない辺りは興味深いというか、どういう術式なのか気になるが。

 

 なんて事をラディウスが思っていると、

「まさか、ここまで運転が上手とは思わなかったのです」

 と、助手席に座るメルメメルアが関心するように言った。

 

「まあ、なんとなく感覚的……と言えばいいのかわからないが、妙にこう……しっくりくるというかなんというか……」

 ラディウスは、かつて――転生する前に似たような物を運転していたからだとはさすがに言えず、そんな感じの曖昧な返事をする。

 

 ――それにしても、まさかこの世界に車があるとはな……

 向こう側の世界にはなかったから運転するのは久しぶりだが、地球――いや、日本のそれと大差のない構造と運転方法だったから助かった。

 ……にしても、もう地球で車を運転していたのなんて何十年も前だが、意外と身体が覚えているものなんだな。

 乗って少し動かしたら色々と思い出して、あとはもう簡単だったし。

 

 なんて事を考えるラディウスのその視線の先に、分かれ道が現れる。


「……っと、道が左右に分かれているみたいだが、どっちだ?」

「あ、右なのです」

 ラディウスの問いかけにそう返すメルメメルア。

 

 それに従い右へ曲がって道なりに少し進んだ所で、

「それにしても、ほとんど車を見かけないね」

 と、助手席の背もたれに手を添えながら、正面を覗き込むようにして言うセシリア。

 

「たしかにな。……車って、所有者少ないのか?」

「帝都付近では少ないのです。それなりに値段がする上に、帝都内では使えないせいだと思うです。逆に地方都市へ行くと、型落ちや中古の車がそこそこ走っているのです」

「なるほど……。まあ、帝都とその近辺は鉄道網が発達しているし、走っている本数も多い感じだったから、納得といえば納得だな」

 メルメメルアの説明に納得し、そう返しながら曲がりくねった道を慎重に進むラディウス。

 

 と、大きめのカーブを曲がり終えた所で、長い直線の先に、久しぶりの対向車の姿が見えた。

 ラディウスは少し左に寄り、対向車の邪魔にならないようにする。

 ……が、何故か対向車は左右にフラフラするように走ってくる。

 

 ――なんだ? 故障でもしているのか?

 

 そんな事をラディウスが思った直後、火炎弾が対向車の後ろに着弾。爆炎が噴き上がった。

 

「わわわっ、な、なんなのです!?」

 火炎弾が見えていなかったらしいメルメメルアが爆炎と音に驚く。

 ラディウスは、対向車の後方にも車の姿がある事に気づき、

「状況は良くわからんが……とりあえずカーチェイス中って感じだな!」

 と、答える。


「カ、カーチェイスって何!?」

 当然の如く言葉の意味がわからないセシリアが、声を大にして疑問の声を上げる。

 ラディウスはそれに答えず、速やかに路肩へと寄り、車を停止させた。

 

「さすがに巻き込まれて壊したら大変だからな」

 と呟きながら、対魔法障壁を展開するガジェットを取り出し、発動。

 即座に、レスティア村に展開された物に似た障壁が車を包み込む。

 

 そこから更に、

「良く分からないけど状況は理解したよっ! えいっ!」

 という声と共に光を屈折させる魔法の膜が展開され、車自体も隠蔽される。

 こっちの魔法はラディウスではなく、声の主――セシリアが発動した物だ。

 

「ナイスだセシリア。さすがだな」

「ま、まあ、このくらいはやって当然だしね」

 ラディウスの言葉に、人差し指で頬を掻きながらそう返すセシリア。

 なにやら少し頬が赤い。

 

 そうこうしている内に対向車が近づいてくる。

 全部で3台だ。

 

 程なくして1台目が通り過ぎる。

 マクベインより少し若い感じの初老の男性と、ラディウスたち3人の中で一番若いメルメメルアよりも更に若そうな――というより幼そうな少女が乗っていた。

 無論、運転しているのは初老の男性の方だ。

 

 続いて2台目と3台目が通り過ぎる。

 そのどちらの車にも、カラスを思わせるような不気味な装束を身にまとった人間が、数人乗っていた。

 

「どうみてもヤバそうだな」

「どうみてもヤバそうだよね」

「どうみてもヤバそうなのです」

 ラディウスの言葉に続くようにして、セシリアとメルメメルアが、ラディウスの言葉遣いを真似たかの如く言葉を紡ぐ。

 

「ここは、一番前のふたりを助太刀して、後ろのヤバそうな連中をぶっ潰すのが正解だろうな」

 ラディウスがセシリアとメルメメルアを交互に見ながら言うと、

「そうだね。追いかけているヤバそうな方をサクッとぶっ潰しちゃおう」

「はい、後ろのヤバそうな2台をぶっ潰すのです」

 と、そんな返事をするふたり。

 先程同様、何故かラディウスそっくりの荒っぽい言い回しで。

 

 ――自分で言葉を投げかけておいてなんだけど、ふたりとも物騒なセリフをサラリと口にしてるなぁ……。というより、どうして俺の真似を……?


 良く分からず内心で頭をひねりつつ、ラディウスは速やかにUターンすると、通り過ぎていった車を追いかけるのだった。

というわけで、新章スタートです!

新章という事もあって(?)ちょっと長めになってしまいました……

まずは、こっちの世界の話がメインで続く予定です。

(若干、向こう側に戻る場面もあるかもしれませんが……)


さて、そんな所で次回の更新ですが……明後日、日曜日の予定です!

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