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第10話 第2の渡り手。サナトリウムへ向かう手段。

若干長めです。

「もちろん対処するつもりですのでご安心ください。というより……そもそもの話として、サナトリウムから連れ出すという事は、同時にその対処も行わなければ無意味だと考えています」

 ラディウスはそう答え、頭を上げるようディーゲルに言う。

 

「なるほど……そうであったか。だが、改めて言わせて欲しい。……娘を、よろしく頼む」

「はい、お任せを。……それで、そのサナトリウム――聖木の館というのは、どこにあるのでしょう?」

 というラディウスの問いに、ディーゲルに代わる形でメルメメルアが答える。

「帝都から東に200カルフォーネ(200キロ)の位置にある、レミカーナ大森林のすぐ近くなのです。レミカーナ支線という路線の終着駅から歩いてすぐの場所なので、鉄道で行く事が出来るです。……といっても、1日に上り下り3本ずつしか走っていなかったりするですが」 


 ――そう言えば、こちら側でも距離の単位は変わらないんだな。

 まあ、あくまでも平行世界であって、異世界ではないからそんなものかもしれないが。


 なんて事を思いながらラディウスは、

「なるほどな。……でも、駅って証明書代わりのカード――俺の場合なら冒険者ギルドのカードだな――の情報を更新するガジェットがあったよな。アレで居場所がバレたりはしないのか?」

 という、もっともな疑問を口にする。


「身分証明のカード情報を更新するガジェット自体は、カードを持ち歩かなければ反応しないので、大した問題にはならないのです。ただ、監視用のガジェットが設置されている可能性は十分に――いえ、場所を考えると確実に設置されているのです」

「うん、私もそう思う。そういう施設の玄関口とも言うべき場所に、監視の目がないとかありえないし」

 メルメメルアの返答に、セシリアが頷き、同意の言葉を紡ぐ。

 

「うーん……たしかにそうだな。となると鉄道を使わずに行くのが良さそうだが、200カルフォーネか……。歩きで行くには少々距離があるな……」

「私の足だと、丸一日歩いても4日くらいかかるのです……」

 ラディウスに問われたメルメメルアは、頭の中で軽く計算をしてそう答える。


「行けない距離ではないんだが……往復な上に復路は――」

「――ディーゲルさんの娘さんも一緒だから、結構な準備が必要になるよね」

 ラディウスの言葉を引き継ぐようにして、セシリアがそう言葉を続ける。

 

 それを聞いていたディーゲルが、ふむ……と口にしながら腕を組み、

「ラディウス殿たちの中に車――魔導自家用車を運転出来る者はいるかね? いるのであれば貸すが……」

 なんて事を言ってきた。

 

「……魔導……自家用……車?」

 セシリアは見た事も聞いた事もなかったため、首を傾げる。

 

「馬が引く代わりにガジェットで動く車なのです」

「へぇ、そんなのがあるんだ……。ラディは知っているの?」

 メルメメルアの説明にそう答え、ラディウスの方を見るセシリア。

 

「ああ、一応知ってはいるな。――というか、車なんてあったのか……。帝都で見かけなかったから無いのかと思っていた……」

「帝都は道が入り組んでいる上に、車で走るのには適さぬような道が多い。故に安全の為に使用が禁止されておるのだ」

 ラディウスの問いかけにそう答えるディーゲル。

 

 ――ふぅむ、帝都内では使用禁止なのか。

 それで今まで見かけなかったんだな。納得だ。

 

「なので、その代わりに地下トラムが縦横に張り巡らされているわけなのです」

「帝都の中に住んでいて、外に出る事が滅多にないようであれば車は不要だが、外縁であるここ第16区に住んでいると、あった方が何かと便利なのでな」

「なるほど。たしかに……」

 メルメメルアとディーゲルの説明を聞き、ラディウスは顎に手を当ててそんな風に呟く。


「あ、ちなみになのですが、レゾナンスタワーの前で出会った兵士さんなんかも、魔導装甲車とかいう名前の、魔物の攻撃を受けてもびくともしないような頑丈な車を使っているですよ。私たちが訪れた時も、少し離れた所に止まっていたのです」

 と、付け足すように言うメルメメルア。

 

「え、マジか!?」

「はい、マジなのです」

「あの時はレゾナンスタワーの方に意識が向いていたから、まったく気づかなかったなぁ……」

 

 ――ついでにあの時は、こちら側とあちら側、ふたつの世界の技術力――文明レベルの圧倒的な差について考えていたしなぁ……


 なんて事を思いながら、

「ちなみに車の運転って、免許のようなものは必要なのか?」

 と、そう問いかけるラディウス。

 

「免許……です? いえ、先程話に出てきた身分証明のカード――つまり、冒険者ギルドのカードなどがあれば、それで問題ないのです。……あ、でも、私は車の運転は無理なのです。どうにも上手く出来ないのです……。あれは魔性の代物なのです……」

 何故か途中から、目のハイライトが消えてブツブツと呟き始めるメルメメルア。

 

「そ、そうか……」

 なんだかよくわからないが、これ以上は触れない方が良さそうだと考えたラディウスは、腕を組み、

「だがまあ……俺も動かせるかどうかは、ちょっと見てみないとわからないなぁ……」

 と、そう呟くように言った。


「ふむ……。であれば、試しに乗ってみてはどうだろうか?」

「なるほど……たしかにそうですね」

「では、早速地下のガレージへ案内しよう――」

 ラディウスの問いにそう答え、地下のガレージへと誘導するディーゲルだった。

2話に分割するかどうか迷ったのですが、分割すると区切りがとても悪かったので、一気に最後まで行ってしまいました。

というわけで、3章はこれにて終了となり、次の話からは4章となります!

さて、その次の話ですが……明後日、金曜日の更新予定です!

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