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第2話 第2の渡り手。王の剣と古代文明。

『我々ハ、新タナますたーノ命ヲ、遂行中』

『我々ハ、館ノ専守防衛ヲ任ゼラレシ存在』


 セシリアに指を差された2体のドールガジェットが、それぞれそんな風に応える。


「――と言っているように、そのドールガジェットたちは、この館の守衛のようなものだな。さっきのは……スキャニング――身体検査的な魔法らしい。怪しい物を所持していないかどうか調べたんだろう」

 ラディウスはセシリアにそう補足するように説明した後、腕を組み、一呼吸置いてから、

「……もっとも、魔法でスキャンしている以上、全裸状態にする必要性はないと俺は思うが……ま、あの魔法を作った奴の趣味なんだろう……」

 と、言葉を続ける。

 

「しゅ、趣味って……。ううっ、あの魔法を作った人間に出会ったら一発殴りたい!」

 と、怒りの口調で言うセシリア。それに対して、まあ……その気持ちは分からなくはないな、と思うラディウス。

 

「そこは……好きにしてくれ。作った奴は多分もういないだろうけどな」

 ため息混じりに首を振り、そう答える。

 

『殿下。我ハ冒険者ノ推測ニ肯定』

『旧ますたーハ、475万ト4507日前ニ、我ラヲ停止』

『しすてむりぶーと時、生体反応ちぇっく済』

『旧ますたーノ、生体反応ナシ。新ますたーニ管轄以降』


「475万4507日……?」

「んー、大体1万3000年くらい前だな」

 首を傾げるセシリアに、そんな風に告げるラディウス。

 

「1万3000年っ!? そ、そんなに昔に作られた物なのに動くの……?」

「そりゃあ、遺跡で発掘されるガジェットが、魔力を充填するだけですぐに使えるようになる事を考えたら、仕組み上は同じ物なんだから動くだろうよ」

 セシリアの疑問に、呆れ気味に言葉を返すラディウス。

 

「な、なるほど……そう言われると、たしかにそうだね」

「そういう事だ。ちなみに1万3000年前と言うと、当時の文明が最も栄えていた時代だから、この頃に作られたガジェットはどれも高性能だ。それ以降はほぼ発展が頭打ちだ」

「頭打ち……それって、誰も改良しようとか新しい物を作ろうとしなくなったって事?」

「んー、当時の記録はあまり残っていないから良くわからんが……さっき話した『災厄』が関係しているんじゃないか?」

 そうラディウスが言うと、セシリアは小首を傾げながら「どういう事?」と問う。


「『災厄』を乗り越える為に、多くの研究機関がそれに関する魔法の研究をメインにしていった事で、一般的な魔法――ガジェットの開発や研究に関してはそれ以上行われなくなり、技術的な部分が忘れられて劣化していった……と考えられなくもない」

「あー、たしかに長い年月の間に忘れられる物ってあるよね。これなんか良い例だし」

 ラディウスの説明に納得しつつ、神剣と呼ばれているガジェットを掲げてみせるセシリア。

 そして、それに視線を向けつつ、

「――神剣なんて言われているけど、実際にはちょっと特殊なセキュリティがかかっているだけの、単なるガジェットだし……」

 と、言葉を続ける。

 

「そうだな。まあ、それに関しては技術的な部分云々というよりは、古代文明崩壊後の……8000年以上に渡って続く、文明や技術の発展が完全に停滞した暗黒時代のせいだけどな」

 ラディウスは、なぜそんなに長い間、文明や技術が発展する事がなかったのかは、未だに謎ではあるんだが……と心の中で付け加えるように呟いた後、神剣へと視線を向ける。

 

 ――これをドールガジェットは『王の剣』と言った。

 つまり……この剣型ガジェットは、1万3000年前の王族が所持していた物――要するに、一種の証のような物であるという事だ。

 そう考えると、当時の王族や貴族のみが入れるような、高位の認証を要求される場面で役立ちそうではあるな……

 

 と、そんな事を思うのだった。

暗黒時代とはなんなのか、というのはいずれ……


次回の更新は明後日、水曜日を予定しています!

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