第1話 村への道を進む。森と魔法について話す。
「――なんだか、かなり薄暗い感じのする森だな……」
周囲に広がる暗い森を見ながらそんな感想を口にするラディウス。
「あ、うん。この森、いろいろな薬草が生えていたり、良い食材があったりするから重宝するんだけど、高い木が多くて暗いのが難点なのよね。まあ、レマノー村へ行く分には、この道があるから迷うような事はないんだけど」
「なるほど……。しかし、村へと続く道という割にはしっかりとした石畳だし、随分と整備されているんだな……。俺の生まれた村から隣の町まで続く道なんかは、もっと簡素な――単に踏み固められただけの、そんな道だったが……」
ラディウスはルーナの説明を聞き、そう言いながら今立っている道を見回す。
その道は、森の中を切り開いた上で、表面が平らな石を敷き詰めてあり、人や馬によって踏み固められただけの道とは雲泥の差だった。
「それは簡単な話よ。この道は村へ続いているんじゃなくて、この辺り一帯を治める領主様――ヴィンスレイド伯爵のお屋敷へと続いている道なのよ。レマノー村は、その途中にある感じね」
「ああ、そういう事か……。たしかに領主の住む屋敷へと続く道なら、このくらいきっちり作られていてもおかしくはないな。しかし、なんだってそのヴィンスレイド伯爵とやらは、森の中に屋敷を……?」
「んー、聞いた話だと、領主様って学者肌の人で、なにかの研究のためにあえて人里から離れた所に屋敷を建てて、行事とかがない時はそこに籠もっているらしいわ」
「ふむ……研究のためってわけか……」
――ヴィンスレイド……。何か記憶の片隅に引っかかるものがあるんだが……なんだっけな……
ラディウスはどうにかして思い出そうとするも、まったく思い出せそうになかったので、そのうち思い出すだろうという事で諦め、
「そういえば、この森って魔物の類は結構出るのか?」
と、道の脇――森の方を見ながらルーナに問いかけた。
「それなりに住み着いていると思うわよ。薬草とか食材とか探しに森に入ると、3回に1回くらいは魔物と出会すわ。もっとも、この道にまで出て来る事は滅多にないわね。まあ……滅多にないとはいえ、出会す時は出会すから、こうして一応武装してきたわけなんだけど」
そう言って自身の背中を指さすルーナ。
「ああ……なるほどな」
ラディウスはルーナの方を見て、顎に手を当てる。
昨日とは打って変わって、ルーナはどことなくゴスロリ感のあるキャミソールワンピースにケープを羽織り、その背中に槍と盾を背負っていた。
――槍。近接武器とはまた古風だな。
ああでも、この頃はまだ銃型ガジェット……魔導銃は、そこまで一般的でもなかったか。
しかし、あれを最初に作ったのは誰なんだ? 俺が作るよりも前からあったが、古代の遺跡なんかからは、発見されていないんだよなぁ……銃は。
槍を眺めながら、そんな事を考えていたラディウスに対し、ルーナが問いかける。
「ところでラディは、どんな武器を使うの?」
「俺か? 俺は……ガジェットだな。何種類かあるから、それを状況に応じて使い分ける感じだな。もうちょっと武器らしい武器を用意したかったんだが、さすがに昨日の今日じゃ無理だった」
「なるほどねぇ……。そういえば私、照明器具や調理器具――オーブンとかそういう家庭用のガジェットは良く使うけど、戦闘用のガジェットって、使った事がないのよね。どういうものなの? っていうか、私でも普通に使えたりするのかしら……?」
という疑問を口にするルーナに対し、ラディウスは頷き、
「ああ、誰でも使えるぞ。戦闘用――タクティック・ガジェットも、基本的には家庭用のリーベン・ガジェットと同じだからな。違うのは、複数の魔法が発動出来る点と、その複数の魔法を使い分ける為の方法が、身に着けた際に、自動的に頭の中へ流れ込んでくる点か」
と、そこまで答えた所で、頭を掻くラディウス。
ルーナが、良くわからないと言わんばかりの表情をしている事に気づいたからだ。
「……まあ、口で言うよりも、実際に使ってみた方がわかりやすいよな」
そう言いながら、ループタイ型のガジェットを胸ポケットから取り出すと、それをルーナに投げて渡す。
「えっ……と?」
「それを貸してやるから、試しに魔法を使ってみたらどうだ?」
――え? え?
いきなりガジェットをポイッと気軽に……というか、雑に投げて寄越されたルーナは、困惑するしかなかった。
家庭用のガジェット……要するに家電の魔法版みたいな感じの物ですね。
ガジェット内の魔力を使うので、使い手側に魔力は必要ない点は戦闘用と同じです。
そもそも、この世界の人間には魔力がありませんし……
第2節の第2話、今日中に投稿予定です。
出来てはいるのですが、ちょっと(隙を見て)微調整したい所があるのでお待ちください……
多分、23時前後……でしょうか……
調整が早く済めば、もうちょっと前に投稿出来るかもしれません。