第5話 魔軍事変。魔法で切り開く道。
「ルミナスレイン!」
フィルディオの発したその言葉と共に、眼前の魔物の群れに向かって、光線の雨が上空――魔物の頭上に生み出された光球から降り注いだ。
「グギェェ!?」
「ギギィィ!?」
「ゲギァァ!?」
断末魔の叫びと共に、魔物がバタバタと倒れていく。
「シャドウザンバー!」
直後にラディウスの魔法が発動。
幾つもの黒い剣が地面から生えてきて、光線を免れた魔物を纏めて穿ち貫き、引き裂いた。
「周囲から魔物の反応が一気に消えたわよ」
マリス・ディテクターで得た情報を伝えてくるルーナ。
「よし、このまま進もう」
俺はルーナと俺の横にいるフィルディオに対してそう告げると、村の中心方面へ向かって進んでいく。
「このガジェットに組み込まれた魔法は、どれも強力な魔法ですね……」
フィルディオが、ラディウスから借りた指輪型のガジェットを眺めながら感想を口にする。
「まあ……魔物の群れを相手にする以上、このくらいの威力がないと厳しいですからね」
「たしかにそうですね。そして、これがあれば掃討も容易なのではないか、という気さえしてきました」
ラディウスの言葉に、そう返してくるフィルディオ。
――威力的には申し分ないが、どれもガジェットの魔力消費が大きいのがな……
あと、予備のガジェットを用意する余裕まではなかったから、魔力切れがちと怖い所なんだよなぁ……。
まあ、幸いオードさんから貰ったソルムの薬液があるから、ある程度はどうにかなるが……
そんな事を考えていると、前方に井戸の設置された広場が見えてくる。
「……結構な数の魔物がたむろっているな」
というラディウスの言葉に、
「そうね。でもそれは、逆を言えば纏めて倒しやすいという事でもあるわ」
ルーナはそう答えると「ここは私がやるわね」と言って、広場に近づいていく。
「ダークインプロージョンッ! ダークインプロージョンッ! ダークインプロージョンッ!」
ルーナが立て続けにそう言い放った瞬間、広場に密集する魔物の群れの中に、小さな黒い半球――ドームが3つ生み出された。
それは、瞬く間に巨大化しながら広がっていき、逃がれようとする魔物を容赦なく飲み込んでいく。
そして、3つのドームによって広場の魔物全てが飲み込まれたその刹那、パキィンッ! という破砕音と共にドームが砕け散った。中に飲み込まれた魔物ともども、だ。
破砕されたと思われる魔物の体液が、どういうわけか広場全体に撒き散らされるも、激しい雨によって一瞬にして洗い流されていく。
「あれだけの魔物が、一瞬にして粉々になるとは……先程、私が使った魔法以上に強力ですね……。しかも、あの魔法に飲み込まれたはずの周囲の家屋は、どういうわけかほとんど被害がないようですし……」
フィルディオが言う通り、魔法が炸裂した場所に含まれていたはずの家屋は、無傷とまでは言わないものの、大きな損傷がなかった。
「それはまあ……闇属性に分類される魔法は、無機物――命を持たない対象には、効果が大きく減衰しますからね。建物――石造りの家などは、まさにその『命を持たない対象』ですし」
「そうなのですか……。そのような特性があるというのは初めて知りました。闇の力を行使する魔法というのは、あまり見かけないというのもありますが……」
「ああ、たしかに遺跡などで発見されるガジェットは、不思議な事に、闇属性の魔法が組み込まれている物が少ないですからね」
ラディウスがフィルディオの言葉にそんな風に返した所で、家屋の影からワラワラと魔物が姿を現す。
それは、背中部分にしゃれこうべに似た見た目の、コブ状の器官を持つ人の3倍はあろうかというダニ型の魔物――アンブラル・マイトだった。
しばらく戦闘多めです。
という所で、次回の更新ですが……明後日の火曜日を予定しています!




