第4話 魔軍事変。腹が減ってはなんとやら。
「急いで出立いたしましたからね。一応、サンドイッチを用意しておきましたが……」
馬車の後方で積荷の確認をしていたマクベインが、そんな風に言いながらラディウスへと視線を向けてくる。
「ああ、そういえば出る時に渡されましたね。ストレージに入れておいて欲しいと」
そう答えつつ、蓋のついたバスケットをストレージから取り出すラディウス。
「さすがはマクベイン! ナイスなのだわ!」
そう言って、開けられた――否、ひったくって自ら開けたバスケットに入っていたサンドイッチに手を伸ばすクレリテ。
「んんーっ! このタマゴサンド、実に素晴らしい味なのだわっ!」
なんて事を言いながら、至福の表情を浮かべてサンドイッチを食べるクレリテへに視線が釘付けになるセシリアとルーナ。
そんな姿を見たラディウスが、
「まあ……。とりあえず先に食べてからやるとするか」
と、そんな風にふたりに告げると、
「そうだね! そうしよう!」
「ええ、それがいいわ」
そう食い気味にセシリアとルーナが即座に同意した。
どうやらふたりも空腹だったようである。
――ま、腹が減っては戦は出来ぬ、って言うしな。
なんて事を思うラディウスだった。
◆
「こっちは全部終わったのだわ!」
「こっちも大丈夫だよ」
クレリテとセシリアが作業を終え、そんな風に言った直後、
「――あと少しでレスティアが見えてきます!」
と、そうフィルディオが告げてくる。
「間に合ったわね」
「ああ、これでどうにかなる」
声を掛けてきたルーナに対し、頷き答えるラディウス。
「マリス・ディテクターの反応あり、なのだわ!」
「これ……数が多すぎて、何体いるのか分からないよ……」
マリス・ディテクターを使い、魔物の位置と動きを捉えたクレリテとセシリアがそんな風に言ってくる。
「皆様が仕上げたガジェット――そして魔法が早速活躍していますね」
「さすがです。……この魔物の位置情報ですと、既に村の中に集団の一部が踏み込んでいるものと思われます」
と、同じくマリス・ディテクターを使ったマクベインとフィルディオが言ってくる。
そう、マクベインとフィルディオの分もしっかり作ってあるのだ。
……魔軍事変であるなら、戦力はひとりでも多い方がいいからな。
「とはいえ、村の中と思しき魔物はじわじわ数を減らしているから、今の所は耐えきれている……と考えてよさそうね」
「ああそうだな。そして、その魔物の数が減っていっている地点こそが、アルディアス枢機卿たちが籠城している場所と考えて間違いない」
ルーナとラディウスがそう口にした所で、馬車が停まる。
「ここが魔物に感知されないであろうギリギリの距離です! ここからは走って向かうといたしましょう!」
と、御者台からフィルディオが告げてきた。
それは、馬を魔物の群れに突っ込ませるわけにはいかない為だ。
「それじゃあ、手筈どおり二手に分かれて魔物を一掃するのだわ! ほらセシリア、レッツゴー! なのだわぁっ!」
そう言い放ち、セシリアを掴んで真っ先に馬車から飛び出していくクレリテ。
「ちょ、ちょっと待って待ってぇっ! まだ強化魔法使ってな……いからぁぁぁぁぁぁぁ!」
そんな声を上げながら、セシリアが勢いよく引っ張られ――引き摺られていった。
「やれやれ、相変わらずですなぁ……」
なんて事をため息混じりに呟くと、急ぎふたりの後を追うマクベイン。
「……まあ、俺たちも行くとするか……」
「……そ、そうね……」
「聖女殿は、こちらにした方が良かったのでしょうか……」
やや呆れ気味にそう口にしながら、ラディウスたちもまた、3人を追うようにして走り出した――
次回からレスティアでのバトルが続きます(予定)
そして、その次回の更新ですが……明後日、月曜日を想定しています!




