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第2話 魔軍事変。決意と力。

「――枢機卿猊下(すうきけいげいか)は、迎撃の指揮を執るために村に残ると仰っしゃり……村で抑えきれなかった場合、魔物の陣容からして、次はカレンフォートへ向かう可能性が高い為、それを守備隊に伝えるよう私に命じました。このカレンフォートの市長は、教区長も兼ねているので話は通しやすいだろう、と」

 ラディウスが思考を巡らせている間にも、男性はそんな風に説明を続ける。


 ――ああ、あの市長って教区長でもあったのか……

 いや、だからこそ……なのか?


 そう思った所で、 

「守備隊への援軍要請って事?」

 と、問いの言葉を投げるセシリア。


「いえ……枢機卿猊下は、カレンフォートの守りを固めるよう伝えよと、私に仰っしゃりました。この街の城壁であれば、防衛戦がしやすいはずだ……と」

 セシリアの問いかけに、悔しさに満ちた表情でそう答えた後、

「一時は命を破り守備隊を動かそうとも考えましたが……それではこの街の防衛力が下がってしまいます。もし仮に、彼の魔物の集団に別働隊のようなものが存在していた場合、危機を招きかねません。そこで、私は思い出しました。……彼のグランベイルの一件で活躍した英雄殿の事を。高い魔導技術を有する英雄殿であれば、状況を打破する手段を思いつくのではないか……そのような期待を抱き、こうして押しかけた次第です」

 と言葉を続け、期待と願いを込めた視線をラディウスへと向ける男性。

 

 ――状況を打破する手段……か。たしかに状況を打破するだけであれば……

 そう、例え歴史が元の流れへ向かおうとしても……あの時とは違う流れに出来るはずだ。

 ならば……ここで取るべきは道は、ひとつしかない。

 

 ラディウスはセシリアの方を一瞥して決意する。

 

「……なるほど。良い判断ですね」

「ん? それって、助けに行くって事……だよね」

 ラディウスの言葉に意図を悟ったセシリアがそんな風に言う。


「ああ、そういう事だ。――幸い、想定はしてあったし、村とはいえ、立てこもる場所くらいはあるだろうし、今から向かえば十分に間に合うだろうからな」

 ついでに言えば、時を遡る前の世界で別の場所でだが、同じ状況を経験済みだから、というのもあったが、それは言っても混乱を招くだけな事は間違いないので、ラディウスはそれだけを口にした。

 

「じゃあ、みんなに伝えてくるね!」

 ラディウスの頷きに、そう言って駆け出していくセシリア。 


「ありがとうございますっ! 英雄殿が来ていただけるのなら百人力――いえ、千人力というものですっ!」

 心の底から感謝を言葉を伝えてくる男性に対し、

「……いえ、いつかは対峙する事になるであろう事態でしたので……。――それより、救援に向かうのはよいのですが、ただ救援に行った所でそれだけでは付け焼き刃にしかなりません。魔物を掃討する事が出来るだけの力が必要です」

 腕を組んでそう答えるラディウス。

 

「力……ですか?」

「はい。魔物の群れに有用な魔法を組み込んだガジェットが必要です。――レスティアへと向かうその間に、そういったガジェットを作ろうと思うのですが……馬車だとどのくらいの時間がかかりますか?」

 ラディウスは疑問を口にした男性に説明し、そして問う。


「なるほど……そう言えば、英雄殿は高度な技術をお持ちという話でしたね」

 男性はそう言って納得した後、顎に手を当て、

「っと、馬車の話でしたね。――大きさ次第ではありますが良い馬を使って急げば一刻半から二刻……といった所でしょうか。市長殿に話をしてすぐにご用意いたしますが、どのくらいの大きさがあれば良いでしょうか?」

 という問いの言葉を続けた。

 

「8人乗りくらいの物であると良いのですが……」

 ラディウスたちは全部で5人だったが、あまり狭いと作業をするスペースが取れないため、そう答える。


「承知! 8人乗りの馬車をすぐに手配いたします!」

 男性は教会式――聖騎士式の敬礼をすると、即座に宿を飛び出していった。

 

 ――さて、昨晩作った物を改良すれば間に合いそうだな。

 ……何が功を奏するかわからないものだな、ホント。

 

 そんな事を思いつつ、ラディウスもまた準備に取り掛かるのだった。

というわけで、次回はレスティアへ向かって移動します。

そしてその次回の更新ですが、明後日木曜日を予定しています!

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