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第1話 魔軍事変。襲来の報。

「えっと……ラディウスは俺ですが……。どうかしたのですか?」

 宿の人間が答えるよりも先に、ラディウスが男性にそう問いかける。

 

「なんと、貴殿がそうでしたか! すぐにお会い出来るとは、まさに奇跡! ――お願いします! 我らの仲間を……民を……枢機卿猊下を、お助けください!」

 男性はラディウスに駆け寄りながら、そんな事を一気に捲し立てた。


 ――ん? んん? 助けてくれ? 何か切羽詰まっている感じはするが、ここで慌てたまま進行したら逆に大変な事になりそうだな……。急がば回れ、という奴だ。


 時を遡る前の、そして転生前の経験もあり、冷静にそう判断するラディウス。

 常人の2倍以上の人生によって積み上げられた経験は、伊達ではなかった。

 

「あ、あの……すいません、なんとなくヤバそうな事は理解しましたが……状況がさっぱりわからないので、少し落ち着いて詳しく話していただけませんか?」

 アルディアス枢機卿が危機的状況にありそうだという事はわかったが、そうは言っても情報がなくては動きようがないので、ラディウスは情報を得るべく、敢えて冷静な態度でそう告げる。

 

「っ!」

 我に返ったような表情を見せる男性。


「……申し訳ありません。私とした事が、あまりの奇跡的な状況に興奮し、取り乱してしまいました……」

 その言葉に、思ったよりもあっさりと落ち着いた辺り、本来は冷静な人なのかもしれないな、と思うラディウス。

 

「――大きな声が聞こえたから何かと思って来てみたけど……どうかしたの?」

 今度はそんな声が聞こえてきた。

 ラディウスが声のした方を見ると、そこにはセシリアの姿があった。

 

「……事情は今聞いている所だが、どうもアルディアス枢機卿――と、その周囲の者たち、さらに一般人までが、なんらかの危機にさらされているようだ」

 近寄ってきたセシリアにそう説明するらで言う素。


「えっ!? ちょっ!? そ、それってマズくないっ!?」

「それはわかっているから、落ち着け……」

 ラディウスは、今度はこっちか……と思いつつ、慌てるセシリアを落ち着かせる。

 そして、改めて男性の方を向いて問う。

「それで……何があったのです?」


「……魔物です。魔物が現れたのです。それも集団で」

「集団……? 魔物が集団で動いているのですか?」

 男性の言葉にセシリアが疑問を口にする。


 それもそのはずで、この世界の魔物は、本体群れて行動するような習性を持っていないのだ。

 いかに強くとも、単体あるいは少数であればやりようはある。

 だからこそこの世界では、魔物は害獣と同程度の、脅威度の低い存在であった。


「はい。ここから東にあるレスティアという村の者から、村付近に、まるで統率が取れたかのような動きをする魔物の集団が現れたという報せを受け、向かった所、たしかに軍隊を思わせるような、統率の取れた魔物の集団がいました」

 という男性の言葉に、ラディウスは時を遡ってくる前の事を思い出した。

 

 ――そう……ここは過去の世界だ。

 つまり……俺が強力な魔法を作るきっかけとなり、人々が、魔物が脅威度の低い存在ではないと認識を改めるに至った『魔軍事変』がまだ起きていない状態だという事でもある。

 今、この人が話している内容――それがこの『魔軍事変』であると考えるのが一番だが……発生があの時よりもかなり早いのが気になるな。

 まさか、ヴィンスレイドを倒した事が……既に存在していない事が影響していたりする……のか?

 ……対処の手段は……一応ある。急造だが『あの時』の魔法をもう一度生み出せばいい。

 だが、それをして歴史の流れがあちらへ向いてしまったら……どうする……?

 

 ラディウスは再び歴史の流れが戻ってしまう事を懸念し、そして躊躇し、助けに行くとすぐに言えなかった――

……タイトルで思いっきり『魔軍事変』と書いてしまっていますが、他にこの節共通の良いタイトルが思いつかなかったのでやむなし……


ま、まあそれはそれとして、次回の更新ですが……火曜日を予定しています!

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