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第3話 親子の名。謎と謎。

 思案していたラディウスの頬に、ピチャっと冷たい物が当たった。

 

「ん?」

「おっと、雨が降ってきてしまいましたね」

 ラディウスの疑問に答えるかのように言う行商人。

 

「これはすぐに強くなりますですよ」

「あー、たしかにそんな感じだなぁ……。仕方ない、本格的に降り出す前に宿へ戻るか」

 娘の言葉に雲見上げて同意し、そう口にするラディウス。

 

「あ、ラディウスさん、傘は持っていますです?」

「いや、持ってきていないが、まあ……ここから宿まで走れば数分だから大丈夫だ」

 ラディウスは、娘の問いかけにそう返すと父親の方を見て、

「――話だけ聞いて、何も買わずにすいません……」

 と、言った。

 

「いえいえ、お気になさらず。あ、折角ですのでソルムの薬液を1つお持ちください」

「それと、これもお貸ししますです」

 行商人親子がそう言って、ソルムの薬液――正確に言うなら、薬液の入った大きなボトル――と、傘を手渡して来た。

 

「え? いや、さすがにそれは悪い――」

「英雄殿と面識を持った……そのお近づきの印とでも思ってください」

「もしくは、悪徳伯爵を倒したお礼という事でもいいですよ、ですっ」

 断ろうとするラディウスに、有無を言わさぬ勢いでそう言いながら更に強く渡してくる行商人親子。

 

 さすがにそれ以上断るのもどうかと思い、

「そ、そうですか……? で、ではありがたく……」

 と言って受け取るラディウス。

 そして、傘の方は後でレマノー村に訪れて返そうと考えた所で、ふと気づく。

 ふたりの名前を知らない事に。

 

「あ、そういえばおふたりの名前をまだ聞いていませんでしたね」

「……そう言われてみると、たしかにそうですね。――私はオードといいます」

「私の名前は、カチュアといいますです。是非とも覚えてくださいませですっ」

 ラディウスの問いかけに対し、それぞれそう答えてくる。

 

 ラディウスはふたりの名前を覚えると――若干、カチュアの勢いに対して引き気味になりながら――傘を返す為にいずれまた会う約束をし、宿へと急いで戻っていく。

 

 ……

 …………

 ………………


 立ち去って行ったラディウスの姿が完全に消えた所で、そちらへと顔を向けたまま、

「――これでよかったのでしょうか、です」

「現時点ではまだ何とも言えませんが……『前回』とは違う流れには出来るはずです」

「まあ、ラディウスさんであれば、なんとか流れを変えてくれる……そんな気はたしかにしますです」

「ええ、そうですね。『あの時』も上手く行きましたしね」

「……それもありますですけど、もしかしたら……私たちと同じようなニオイを感じるから、というのもあるかもしれませんです」

「同じようなニオイ……ですか? それは、もしや――」

 なんていう会話をするふたりだった。

 

                    ◆

 

 ――ふぅ……。カチュアから傘を借りておいて正解だったな。

 まさか、走り出して1分もしないうちに、ここまで雨脚が強くなるとは思わなかった……

 

 降りしきる雨を見ながらそんな事を思いつつ、傘を閉じて宿の中へと入るラディウス。

 

 と、そのラディウスの視界の端に、宿の方へ向かって勢いよく走ってくる馬が見えた。

 良く見ると、その馬には法衣姿の男性が乗っているようである。

 

「ん? なんだ?」

 法衣姿であるという点がどうにも気になったラディウスは、そう呟くとそのまま宿のロビーで待ってみる。


 すると程なくして、宿の入口の前で馬が急停止。法衣姿の男性が宿の中へと転がり込んで来た。

 そして男性は慌てた様子で、声を大にして問いの言葉を投げかけてくる。

「え、英雄ラディウス様たちが、宿泊なされている宿は、こちらで間違いありませんか!?」

 と。

ちゃんと名前が出ました! ……いやまあ、大事なのはそこではないのですが……

なんというか……プロローグから見て過去の世界であるという事は、ラディウスが強力な魔法のガジェットを作り、そして使い始めた『きっかけ』が、まだ出てきていないという事でして……


とまあ、そんな所で……次回の更新ですが、明後日の日曜日を予定しています!

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