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第6話 時を渡り夕食の刻。ルーナと話す。

「なるほど……。マクベインさんが薦めるだけあってウマいな」

 ルーナが持ってきた料理を口にして、そんな感想を述べるラディウス。

 

「でしょ。お父さん、料理の腕だけは凄いのよね。……まあ、他はからっきしだから、それだけのお陰でここもどうにかなっている……と、言えるわ」

 ルーナがそんな風にため息混じりに言葉を返す。

 

 酒場の2階部分は宿泊客専用のスペースになっているのだが、そこにはラディウスしかいなかったりする。

 1階を見ると、結構な人数がやって来ているので、たしかに料理と酒が目当ての客ばかりのようだ。

 ルーナと同じ服を来た女性が2人、忙しなく行き来しているのが見える。

 

 ルーナがその女性2人を眺めながら、

「今日は、2人ほど来てくれているからいいけど、誰も来てくれなかった時は大変なのよねぇ……」

 そう言って両手を左右に広げ、首を横に振った。

 

「うん? 毎日雇う人間を変えているのか?」

 それは少し効率が悪いのではないかと思うラディウス。

 

「継続的に雇いたいんだけど、この忙しさだからね……。躊躇しちゃうらしくて、応じてくれる人がいないのよ……。仕方なく1日でもOKって事で、冒険者ギルドに依頼を出しているんだけど……毎日依頼を受けてくれる人がいるわけじゃないからどうしても、ね」

「なるほどな。……ところで、聞くか聞くまいか迷ったんだが……どうにも気になるから聞く事にするけど……ルーナのお母さんは、ここにはいないのか?」

 返ってくる言葉が良くない物だったらどうしようかと、少しビクビクしながら尋ねるラディウス。


「あ、もしかしてなんか重い理由があるんじゃないかとか考えていたりする? お父さんに愛想が尽きたとか、死んでるとか、そんな理由じゃないから大丈夫よ」

 ラディウスの心境を表情で察したらしいルーナがそう前置きした後、

「お母さんの実家――カレンフォート市に本店がある『クロックテック商会』っていう名前の商会なんだけど……半月くらい前に、そこの商会長をしているお母さんのお兄さんが突然倒れてね、原因不明だけど衰弱が激しいって事で、お母さんが出向いているのよ」

 と、そう説明した。


「そ、そうか。それは良かった……いや、その人の状況を考えると良くないけど。……っていうか、なぜルーナのお母さんが? 看病かなにかか?」

「あ、ごめんなさい、そこを説明していなかったわね。私のお母さん、薬師なのよ」

「ああなるほど。それでか……」

 説明されて納得するラディウス。

 

 ――そうか、この頃はまだまだガジェットをメインとした医療技術は発展途上で、専門の医者っていうのは少なかったんだっけな……

 だから、薬師が医者の役割もこなす事が多かったんだった。


 と、その事を思い出しながら、ふと考える。

 それなら、自分のガジェットでどうにか出来る可能性もあるんじゃないか、と。

 

「なあ、その人の所にちょっと行ってみたいんだが……」

 ラディウスがそう切り出すと、ルーナは首を傾げ問う。

「え? ラディって薬師だっけ?」

 

「いや違う。ただ、俺の持っているガジェットの中に、治療に特化した物があるから、もしかしたら役に立つかもしれないと思ってな」

「あ、なるほど、そういう事ね。うーん、そうねぇ……」

 ラディウスの言葉に納得したらしいルーナが、腕を組んで考え始める。


 ――さすがに、今日出会ったばかりの人間を会わせるのは無理って言われるかもな。

 なんて事を考えていたラディウスだったが、ルーナはしばし悩む仕草をした後、

「たしかに私も状況が気になるし……明日、行ってみる? 療養のためとかで、今はここから歩いて1時間くらいの場所にある、レマノーっていう名前の村にいるから、そんなに時間はかからないわよ」

 と、あっさりとそんな提案をしてきた。

 

「レマノー……ああ、フィルカーナの産地か」

 王都で砂糖を購入した時の事を思い出しながらそう口にするラディウス。

 そして、そのままルーナの方を見て問う。

「しかし……こっちから言っておいてなんだが、いいのか?」


「それは、今日会ったばかりの相手を信用していいのか? って事かしら?」

「まあそんな感じだ。無論、信用してもらって大丈夫だが……って、これも自分で言う言葉じゃないな」

「ふふっ、そんなの問題ないに決まっているわよ。だって、お父さんが半ば心酔しているマクベインさんが紹介した人だもの、それだけで信用するには十分すぎるわ。それに……私、人を見る目はある方だし。ラディは信用するに値する人間だと私は感じたわ」

 そう言って、ラディウスの顔をまじまじと見つめるルーナ。

 

「お、おう……そ、そうか。……ま、まあ信じてくれるなら感謝だ。あ、ちなみに出向くのはいつでもいいぞ。ルーナとディックさんさえよければ、それそこ朝でも昼でも夜でもオッケーだ」

「それじゃ、明日の朝食が終わったら行く感じでいいかしら?」

「ああ、問題ないぞ」

「なら、早速お父さんに説明しなきゃ。あ、ついでに次の料理を持ってくるわね」

 そう言い残して足早に去っていくルーナ。

 

 そして、次にルーナがラディウスのもとに戻ってきた時には、ディックからのサービスだと言って大量の料理が、その手に持った皿に載せられていた……!

 

 ――え、えーっと……ちょっと多すぎやしないか……? く、食い切れるだろうか……

 と、ラディウスは冷や汗を流すのだった。

というわけで、次の話からはレマノーへ向かいます!

おそらく、明日の12時に投稿出来ると思います。

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