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第3話 ディーゲルの館より移ろう者。以前どこかで見た光景。

「へ? はれ? ……ふえ?」

 なおも理解が追いつかずに、混乱したままのメルメメルア。

 

「……なんだ? 幻影魔法、あるいは透過魔法……それとも投影魔法……か? いや、それらの複合というべきかもしれない」

 ラディウスが顎に手を当てながら、やや現実逃避気味に思考しつつ言う。

 

「え、えっと……そ、その……」

「……俺は何も見ていない。いや、見えたが、きっと幻影だ。うん」

「で、ですです。きっと幻影なのですっ!」

 などと、幻影という事にしようとするふたりだったが、互いに顔が赤かった。


 そうこうしているうちに、用は済んだから通れとばかりに、横へずれて道を開けるドールガジェット。

 

「……ま、まあ……あれだ。何か抗議したい事があったら、ディーゲルに直接言ってくれ」

「そ、そうするのです……。何もなかったけど抗議するのです……。ふんすっ!」

 ラディウスの言葉にそう返し、なにやら握りこぶしを作るメルメメルア。

 良く見ると、尻付近のコート背面部分が少し盛り上がっていた。

 

 ――あれって、さっき見えた尻尾の位置だよなぁ……

 今まで意識していなかったから気づかなかったけど、意識して見ると良く分かるな。

 内心怒っていて尻尾が立っている状態ってところか……


 と、そこまで思った所で、幻影のせいにできてねぇぇっ! と心の中で叫ぶラディウス。


「では、行ってくるのです」

 そうラディウスに告げ、館の中へと向かうメルメメルア。

 

 ラディウスはその姿を「ああ」とだけ短く言って見送る。

 そして……メルメメルアの姿が完全に消えて少し経った所で、

「駄目だ、やはり幻影には出来ない。実にエライモノを視てしまったものだ……。というか、尻尾を初めてみたな。あんな風になっていたのか……なんか良いな、モフモフしてて。……って、違う! ……あ、いや、違くもないか、尻尾をみたのが初めてなのは間違いないし、モフモフもしていたし……。……ってぇぇっ、いやだから、そうじゃないだろぉっ! 違くはないけど、違うし、そういう事なじゃないぃ――」

 などと、迷走した事を口走り――叫び始めた!

 

 今まで無理矢理混乱を抑え込んでいたものが、メルメメルアの姿が見えなくなった事で抑えがなくなり、爆発した……とでも言えば良いのだろうか。

 ともかくそんな感じで、しばし暴走し続けるラディウス。

 実はメルメメルア以上に混乱していたようである。


 まあ、ここは自然公園に近い人の住んでいない場所であり、館の中に入っていったメルメメルアには聞こえていないし、ドールガジェットもラディウスの叫びには無反応なので、別に問題はないのだが、街中だったら完全に変質者である。

 

 閑話休題。程なくして……

 

 ――って、何をやっているんだ俺は……。駄目だ、ちょっと落ち着こう……

 

 ようやく我に返った所で、一旦深呼吸をするラディウス。

 

 そして、どうにかこうにか冷静な思考を取り戻した所で、あの変態的な――おそらく改変されたスキャンニング魔法であろう――を仕込んだのが、ディーゲルなのかそれ以外の誰かなのかはわからないが、何かあった時にはすぐに館の中へと突入出来るような魔法――ガジェットを用意しておいた方が良いかもしれない、と思った。

 

 ――あと、アルディアス枢機卿とも話をしておいた方が良いかもしれないしな。

 ……向こう側とこちら側、どうも妙な繋がりがありそうな気がするし……

 そ、それと、一度この場から離れて冷静になった方が良いからな! うん!

 

 ラディウスはそんな事を考え、カレンフォートの宿を思い浮かべた。


                    ◆


 ……カレンフォートに戻ってきた翌日の朝――


「……夜の帳が下りた頃だったと思っていたら、夜の帳が上がる頃だった」

 などと呟くラディウス。

 そして、その周囲には作ったばかりのガジェットが多数転がっていた。

 

 それはまさに、『以前どこかで見た光景』そのものだった――

以前よりも反応が酷くなっているのは、尻尾のせいなのかもしれません(何)


……ま、まあ、それはそれとして次回の更新ですが、週明けの月曜日の予定です!

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