第2話 ディーゲルの館にて。待つふたり、混乱するふたり。
「……なかなか反応がないのです」
「うーん……。時間が時間だしなぁ……不審がられても仕方がないっちゃ仕方がない」
「それはまあ……間違いない……です」
「ただ、会う気がなければすぐに追い返される気がするんだよな」
「あ、たしかにです。だとしたら会える可能性もあるです。もう少し待ってみるです」
そんな会話をしながら待つ事しばし……
『ますたーカラノ反応アリ』
『結果提示……会談許可承諾』
と、突然そんな事を言うドールガジェット。
「どうやら、会ってくれるっぽいな」
「よかったのです。早速、会いに行くです」
ラディウスとメルメメルアがそう口にして玄関へと向かう。
だが――
ドールガジェットがふたりの前に立ち塞がる。
「あ、あれ? 許可されたのではなかったのです?」
というメルメメルアの疑問に対し、
『許可ハ、鑑定士メルメルア単体ヘノ物』
『護衛ノ冒険者ハ、外デノ待機ヲ要求』
ドールガジェットがそう告げてくる。
「なるほど……。どうやら、俺は単なる護衛要員だと思われているようだ」
「ど、どうするです? 許可を取り直すです?」
メルメメルアは、少し慌てた表情でラディウスの方を向いて問いかける。
「うーん……それでもいいが時間食うし、冒険者同伴だと怪しまれて会ってくれなくなる可能性もゼロじゃない。護衛なら武装していると普通は考えるからな」
「あ、なるほどです。たしかにこの時間に尋ねてきて、武装しているであろう者と一緒に入れてくれというのは、ちょっと怪しい感じがするのです。実際に武装していなくても、です」
ラディウスの説明に納得するメルメメルア。
「まあ、俺が武装しているかどうかまでは、向こうから判別出来ないって事だな。……とりあえすメルだけで言って、ディーゲルに話をするのが一番良いんじゃないか?」
「……たしかに、それが一番良さそうではあるのです」
ラディウスは、メルメメルアが玄関の方へと向き直るのを確認すると、3歩程下がる。
そして、
「了解した。俺はここで待機している」
と、ドールガジェットの方に向かって言った。
『理解ニ感謝スル』
「では通っても構わないのです?」
念の為、そう問いかけるメルメメルア。
『通行前ニ……危険物ノ持チ込ミ可能性ヲ考エ、身体検査ヲ実施』
などと告げてくるドールガジェットに対し、ラディウスはそれはもっともな話だが、身体検査ってどうやってやるんだ? と疑問に思う。
それはメルメメルアも同じだったようで、こちらも小首を傾げていた。
直後、両方のドールガジェットの胴体部分がパカッと開き、マジックハンドのような形状をしたアームが4つ出現する。2体で合計8つだ。
「ん?」
意味が分からずそのアームを眺めるラディウス。
するとその8つのアームが、左右から素早くメルメメルアの衣服を掴んだ。
『確認開始』
『スキャンニング実行』
というドールガジェットの声と共に、アームが光る。
――あのアーム自体がガジェットのようだが……
などと思っていると、
「ふへ?」
と、メルメメルアが素っ頓狂な声を上げた。
見ると、そこには何故か全裸状態のメルメメルアの姿があった。
「あわわわわわわわわわわわっ!?!?!?」
理解が追いつかず混乱するメルメメルア。
ラディウスもすぐには反応が出来ず、しばし硬直したままだったが、ハッとなって、
「ちょ、ちょっとまて! こ、これはどういう事だ!?」
と、そんな風にとりあえず叫んだ。
というより、あまりの出来事にそれ以外の行動が頭に浮かんで来なかった。
――スキャンニングって言ってたよな!? なんでこんな状態になるんだ!?
脱衣アームか!? いやそんな魔法聞いた事ないぞ!? でもあるのか!?
いや、そもそもアームは服を引っ剥がしたりはしていないぞ!?
なんで!? アームなんで!?
思考が混乱し、次の行動に移せないラディウス。
『スキャニング完了』
『問題ナシ』
ラディウスとメルメメルアの混乱などどこ吹く風、といった感じでそんな風に告げるドールガジェット。
するとその直後、まるで何事もなかったかのように、メルメメルアは服をしっかり身に纏った状態へと戻っていたのだった――
忍者の変わり身の術めいた何かです(違)
まあ、真実は『スキャンニングではあるが、そうする意図が良くわからない魔法』です。
術式を構築した人間の趣味とか嗜好によるものなのでしょう。……多分、きっと。
それはそれとして……次回の更新ですが、明後日の土曜日を予定しています。
もしかしたら、12時きっかりではない可能性もありますが、おそらく大丈夫なはず……です。
※追記(変更点)
タイトルの『第2話』の数字部分が、全角文字(2)になっていたので、半角文字(2)に変更しました。




