第1話 ディーゲルの館再び。ドールガジェットの反応。
「レ、レゾナンスタワーで襲ってきたドールガジェットなのですっ!」
「やはり、予想は間違っていなかったようだな……っ」
そう口にしたふたりに迫るドールガジェット。
――あの時に使ったドリルとかトラップとかのガジェットは、急造だった事もあって、半数以上が使い捨てだ……
こいつらの相手をもう一度するならば、同じ物を揃えて来ないと駄目だが……どうやらあの時とは違って、いきなり攻撃を仕掛けてくる感じではないな……
いわゆる、バトルモードになっていない状態……といった感じなのか?
レゾナンスタワーの時とは異なる動きを見せるドールガジェットに対し、ラディウスはもう少し様子を確認しようと考える。
『迎撃対象条件――分析完了。一致セズ』
『身元判定――OK 鑑定士メルメメルア』
『身元判定――OK 冒険者ラディウス』
『来訪予定者検索――該当0』
――レゾナンスタワーではノイズめいた音しか聞こえなかったが、今は普通に『音声』として聞こえるな。……少し機械音声感が強いが。
ってか、冒険者……?
「あれ? 俺、今回はまだ冒険者登録していなかったと思うが……」
思考中に抱いた疑問を口にするラディウス。
それに対して、メルメメルアは、
「あ、それなら簡単なのです。時間を遡ってきた直後に、もしかしたら……と思って、時間を遡ってくる前のラディウスさんのIDをデータベースに登録しておいたのです。私も時間を遡る前に持っていた物をそのまま持っていたので、ラディウスさんも同じく登録証を既に持ってるです……よね?」
と、ラディウスの方を見て、少し不安そうにそんな風に問いかけた。
「ああ、たしかに持っているな。ナイス判断だ」
ラディウスはそこまで口にすると、そこで一度区切り、2体のドールガジェットを交互に見る。
そして注意深く観察しながら言う。
「……で、それはそれとして……。こいつら、何だかあの時と違って、攻撃を仕掛けてくる気配がないな……。普通に音声も聞き取れる内容だし」
「そう言われると……その通りなのです」
答えながらメルメメルアもまた、2体のドールガジェットを交互に見る。
『ネクストプロセス……来訪者ヘノ問イヲ実行……』
『来訪者ニ問ウ……訪問ノ理由ヲ告ゲヨ』
そんな事を言ってくるドールガジェット。
――やはりバトルモードではない感じだが……話し方が機械的というかなんというか、ちょっと変な感じだな。
流暢な言葉遣いが出来るタイプではないのか、それとも言語を司る術式部分に問題があるのかは、わからないが……
ラディウスはドールガジェットの発する言葉に、そんな感想を抱く。
「あ、えっと……ディーゲルさんに話があって来たのです」
『……音声解析。――ますたートノ会談ヲ要求』
『判定実行……要確認』
――メルの言葉を『会談の要求』と認識したのか。
そんな認識をするという事は、以前はそれなりの地位の人間が使っていたのだろうか。
メルメメルアとドールガジェットのやりとりを見ながら、そんな事を思うラディウス。
「え、えっと……?」
メルメメルアは、反応がそれ以上返って来ないドールガジェットに対し、どうしていいかわからず、呟くようにそう口にする。
「要確認……と言っていたから、通信かなにかで、ディーゲルに連絡を行っている最中……とかなんじゃないか?」
「なるほどなのです。たしかにありえる話なのです。だとしたら、とりあえず待ってればいいですかね?」
「だと思う……ぞ。ドールガジェットからの反応がないから、多分としか言えないけどな」
「まあ……ここまで来た以上、少し待ってみるのです。それで駄目なら考えるのです」
「そうだな。その方向性で良いと俺も思うぞ」
ふたりはそんな事を話し、そのまましばらく待つ事にするのだった――
ドールガジェットは、最初、まるで機械翻訳にかけた文章のような、もっと分かりづらい喋り方をしていたのですが、あまりにも分かりづら過ぎたので、かなり抑えました……
さて、そんなこんなで次回の更新ですが、明後日木曜日の予定です!




