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第2話 時の先。告げる者と理解する者。

「それはどういう事です?」

 当然の如く、ラディウスの発言が理解出来なかった妖姫が問う。

 

 それに対しラディウスは、牢の扉を開きながら、未来からやって来た事を告げる。

 最初は半信半疑の妖姫だったが、以前妖姫と話した時の内容を告げていくと、最終的にはラディウスの言葉が真実であると判断した。

 

「ただ……どうして過去へ戻ってきたのかが謎なんだけどな……」

 説明の間に以前と同じく、敬語ではなくいつも通りの口調になったラディウスが、そう呟くように言う。

 

「――貴方は、懐中時計型のガジェットを手にした事で、パラレルワールドとの行き来が可能になったのですよね?」

「ああ。ヴィンスレイドの持っていたガジェットでな」

「……手にした時に、何かアナウンス――声のようなものは、聴こえませんでしたか?」

 問われたラディウスは、顎に手を当て、ガジェットを手にした時の事を思案する。

 

「……あー、そう言われると、あの時たしかに何か聴こえてきたな。……リンクだのインストールだのと言っていたような……。もっとも、それはどうやら俺にしか聴こえていなかったみたいなんだが」

「なるほど……やはりそうですか」

「やはり……?」

 何かに気づいたらしい妖姫の言葉に首を傾げるラディウス。

 

「……おそらくですが、そのガジェットに組み込まれていた魔法は、貴方にインストール――貴方の中に刻み込まれている状態なのではないかと……」

「刻み込まれている……。それは付与と違うのか? いや、インストールという単語の意味は理解出来るし、その名称でなんとなくどういう物なのか推測は出来るが……」

「それを理解出来るだけでも、この時代の人間としては凄いと思いますが……」

 という妖姫の言葉に、元々この世界以外から転生してきているしな……と、心の中で呟くラディウス。

 

 しかし、それを口にすると混乱を招くだけなので、ラディウスはそこには触れず、話を流す事にした。

「そんな事もないと思うが……。っと、それはともかく、付与とインストールの違いを詳しく教えてくれないか?」


「――『付与』というのは、あくまでも魔法の効果を対象に与えている状態であり、その状態を維持するには、当然ですが魔力が必要となります。対してインストールは、魔法そのものを対象に融合させる仕組みです。なので、先程は刻み込まれている、と表現しました」

「なるほど。……しかし融合……か。まるでヴィンスレイドがやっていた実験を思い出すな……」

「そうですね。あの男もたしかに古の時代から現代に至る間に失われてしまったインストールの仕組みを復活させようとしていましたね」

 

 ――なるほど、あいつのやっていた事は、失われてしまった魔法を『インストール』するという技術がベースになっていたのか。色々と納得だ。

 

 妖姫の言葉に、ラディウスはそんな事を思う。

 

「貴方と融合状態になっている『魔法』は、貴方の生命活動が脅かされる――つまり、死にかける事がトリガーとなって、発動。貴方の魂を定められた過去の時間へと転送している……と考えられます」

 そう言いながらも、妖姫は内心で引っかかりを覚えて思案を巡らせた。

 

 ――ですが、本当に『過去への転移』なのでしょうか……?

 パラレルワールド間を行き来する事が出来るようになる魔法であるのに、時間移動まで組み込んであるというのは、いささか不思議な感じではありますが……

 ……もっとも、時間と空間は古の時代の魔法学では近しい物として扱われていましたから、空間移動を主とするガジェットの一部に、時間移動を司る魔法が組み込まれているというのはわからなくもないのですが……パラレルワールド間の移動は、空間というより次元です。そこが少し腑に落ちないというか引っかかるというか……。うーん、一体なんなのでしょう……

 

 と。

あけましておめでとうございます! 

次回の更新なのですが、新年の諸々の都合で月曜日を予定しています。

それでは、今年もよろしくお願いいたします!

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