第9話 次の階へ。館の探索と魔封じ。
前の話で2章ラストと言ったのですが、長くなりすぎたので分割しました……
「うーん……。時間帯が時間帯だけに、やっぱり暗いな……」
「です……。いっそ、館の照明を点けるです?」
そう言いながら、なにやら照明ガジェットの方へと視線を向け、起動したそうな様子のメルメメルア。
――暗いのが苦手なのか?
いやでも、レゾナンスタワーも明るいという程じゃなかったよなぁ……。どちらかというと暗かったし。
「そうだなぁ……。まあ、侵入しておいて今更って感じもするし、点けてしまうか。もし、ディーゲルさんが現れたりしたら謝ろう」
「そうするです。暗いよりはいいのです。ちょっと点けてくるのです」
ラディウスの言葉にそう返し、起動しにいくメルメメルア。
……だが、メルメメルアがいくら操作しようとも、照明のガジェットはうんともすんとも言わなかった。
「どうやってもガジェットが起動しないのです。壊れているです?」
館の中にある照明ガジェットを起動させようとしたメルメメルアがそんな風にラディウスの方を見て言う。
「いや、見た感じではどこも壊れているようには見えないが……」
そう言いながら、近くにある別の照明ガジェットに視線を向けるラディウス。
「でも、どれも使えない状態なのです」
メルメメルアのその言葉に、ラディウスは「うーん……」と照明ガジェットを良く見てみる。
――ちょっとわからないな。中を覗いてみるか。
ラディウスはそう心の中で呟きつつ、解析に使う手袋を取り出す。
「マジックストラクチャー・オープン!」
「わわっ、驚いたのです」
「今まで見た事なかったのか? ガジェットの中身」
不思議に思い問うラディウス。
「いえ、中身を見た事自体はなくもないですが、ここまできっちりしっかり中身が見える状態というのは初めてなのです」
「あー、まあ、少し改良してあるからなぁ……」
メルメメルアの言葉に、ラディウスは頭を掻きながらそんな風に返す。
「それはさておき……これ、魔封じの類が付与されているっぽいな……。しかも、おそらく外側から何らかの方法を用いて、だ」
「魔封じ……です? たしかに、どれも使えない状態なのです」
ラディウスの呟きに答える形で、メルメメルアが他の照明ガジェットを確認しながら言ってくる。
――うーん。これは何者かが意図的にやらないと無理だよなぁ……
こうなると、それを仕組んだ者が何者なのか注意して探る必要がありそうだ。
この館の主であるディーゲルが自らがやったっていうんなら、話は実に簡単かつ手っ取り早いんだが、どうもそれはなさそうだしな……
そんな事を考えつつ、携帯式照明ガジェットを取り出し、それを起動させるラディウス。
それに続く形で、メルメメルアも携帯式照明ガジェットを起動した。
「これは、慎重に進んだ方が良さそうだな……」
「……一旦出直すです?」
「それはそれで悪手な気がするな……。出直している間に全て消されそうだ」
「……たしかにありえるです。もう少し調べてみるです」
ふたりはそんな事を言い、館の探索を始める。
……だが、館の1階部分をくまなく探索してみたものの、人の気配はまったくなく、ただ単に照明ガジェットが全て壊されているだけであった。
「誰もいなかったのです。幽霊もいなくてほっと一息なのです」
全ての部屋を確認し終え、階段のあるホールまで戻ってきた所で、そんな事を言うメルメメルア。
――もしかして、照明を点けたかったのって、幽霊が怖かったから……なのか?
メルメメルアの発言を聞き、ラディウスはそんな風に思いながらも、それに関しては敢えて問いかけずに、
「1階は完全にもぬけの殻だな……。やはり逃げた後……なのか?」
と、そう口にした。
「かもしれないのです。……一応、2階も見てみるです?」
「ああ、そうしよう。ここまで調べたなら上も調べないとな」
メルメメルアの問いにそんな風に返し、階段を登るラディウス。
と、ピチャンという水音が聞こえてきた。
「……水音?」
ラディウスが首を傾げると、
「どこかで水漏れでもしているです?」
そう言いながら、メルメメルアが周囲を見回す。
「まあ、そう考えるのが妥当だが……あっちの方だな」
水音のした方を指さすラディウス。
「たしかに、向こうの廊下の先から聞こえてくるのです」
「とりあえず、行ってみるか……」
そう答えつつも、ラディウスは思う。
――こういう時の水音って、大体ロクな結果が待っていないんだよなぁ……
と。
分割になってしまって申し訳ありません…… orz
ただ、かなり進行はしている為、次の更新は金曜日……と言いたい所ですが、
少々予定が入っており……土曜日更新となる見込みです。
ちなみに、その次は月曜日更新を予定しています。