第6話 次の行き先。続く言葉は……
「それは別に構わないが……」
そう言いながら、ストレージから湖畔で回収したガジェットを取り出すラディウス。
「何か気になる事でもあるのか? さっきの会話中、なんだか様子がおかしかったように感じたが……」
ラディウスがメルメメルアに手渡しながら、問う。
「それは……その……。――えっと、その話は長くなるです。なので……というのも変な話ではあるですが――ラディウスさん、私はこれから封魂術のガジェット作成を依頼しに行くつもりなのですが、それに付き合って欲しいのです」
僅かに目を泳がすメルメメルア。
なにかあるな……と思ったラディウスだったが、それは口にせず、
「ん? ああ、むしろそれを頼もうと思って追いかけてきたんだ。……というか、正確に言うと、封魂術のガジェットを自分で作れないかと思ってな。作り方を教えてくれないかだろうか……と」
メルメメルアの言葉にそう返すだけに留めた。
「な、なるほどなのです。……う、うーん……」
ラディウスの発言に納得した後、思案を巡らせるメルメメルア。
エンシェントファクトリーと悠久工房、どちらが良いか……と。
――エンシェントファクトリーは、大きな工房なのです。
作成の依頼には良いですが、作り方を教えて貰うには向かない気がするのです。
……それに、このガジェットの調査をするのなら……
メルメメルアは、そこでラディウスから渡された湖畔で回収したガジェットへと視線を落とした後、ひとり頷いて結論を出し、
「――それでしたら、悠久工房の方が良さそうなのです。構わないです?」
と、そうラディウスに告げる。
「エンシェントファクトリーと悠久工房だっけか? ぶっちゃけ、その辺の差とかは良くわからないし、メルの決めた方で構わないぞ」
こちらの世界に来てほとんど経っていないラディウスにとっては、どちらが良いかと言われてもさっぱりなので、そんな風に答えた。
「了解なのです。それでは、悠久工房へ行くのです」
◆
……そうして歩き始め、大通りから裏路地へと入った所で、メルメメルアが周囲を見回し始める。
そして、人のいない事が確認出来た所で、ラディウスの方を見て口を開く。
「――先程、ラディウスさんが問いかけてきた件について話すのです」
「あーまった。そんなに警戒するような話なのか? ……なら、音を遮断する結界でも展開するか? 発動者の移動に合わせて、結界も動くように改造してある奴でな、前にノリで作った物の、使い道がなくて放置状態になっているものがあってな……」
そう問いかけて頭を掻くラディウス。
そんな事を言われたメルメメルアはというと、
「そ、そんなものがあるです!?」
という驚きの声を上げた。というより、それ以外の反応が出来なかった。
ちなみに『前にノリで作った』というのは、煩悩的な何かを退散させるつもりでガジェットを夜通し作っていた時の事であったりする。
「と、とりあえず使って欲しいのです」
「ああ、わかった」
メルメメルアに対して了承しつつ、ストレージからガジェット――ペンライトのように見える形状のガジェット――を取り出すラディウス。
そしてそれを手に持ち、一呼吸置いてから、
「――サイレントベール・改!」
と、言い放った。
直後、薄白のオーロラのようなものが周囲に漂い始める。
「……よし、これで大丈夫だ。俺たちの会話はこのオーロラの外に漏れる事はない。ああそれと、このオーロラは外からは見えないから気にしなくていいぞ」
ラディウスは周囲――オーロラのようなものへと視線を向けながら、その魔法の説明をした。
「な、なんというか……相変わらず、とんでもない魔法なのです……!」
「そこまでではないと思うが……まあ、それより話の続きだ」
驚きながら周囲を見るメルメメルアに対し、ラディウスはそんな風に答える。
そう言われたメルメメルアは、「あ、はいなのです」と返し、ラディウスが渡したガジェットを見た。
そして一呼吸置いてから、
「――実は、なのですが……このガジェットを仕掛け、私たちにドールガジェットをけしかけて来た人がわかった気が――わかってしまった気がするのです……」
と、意を決したかのような雰囲気を纏いつつ、告げたのだった――
ちょっとキリが悪い気もするのですが、このまま進めると1話が長くなってしまうのと、その分量の影響で土曜日に更新出来なくなってしまいそうだった為、一旦ここで切りました。
さて次回の更新ですが……先日記載した通りの状況の為、水曜日になってしまう想定です。
20日を過ぎれば、もう少し更新頻度が上がると思います…… orz




