第3話 次への調査。逆探知した地点の先へ。
ラディウスの眼前に、レゾナンスタワーの通信制御室の光景が広がる。
無論、すぐ近くにはメルメメルアもいる。
――なんだか久しぶりな感じだな。メルからしたら一瞬だろうけど。
メルメメルアの方に視線を向けつつ、そんな事を思いながら、作ったばかりのガジェットを起動するラディウス。
「そのガジェットはなんなのです?」
メルメメルアが小首を傾げながら、当然の疑問を口にする。
「ああ、こいつはこのSWレシーバーもどきに送られて来ている……あるいは来ていた術式通信を捉え、その発信元を探知する――まあ要するに、逆探知の魔法を組み込んだガジェットだ」
「逆探知!? そ、そんなものまで持ってるですか……!?」
「……色々あって、前に作ったんだよ。ただまあ……作ったには作ったが全然使っていないから、上手くいくかはわからないけどな」
驚くメルメメルアに対し、ラディウスがそんな風に誤魔化した直後、ガジェットの真上――プレートの表面から少し浮いた場所に、幾重にも円が描かれたホログラムのようなものが出現。
そしてそれに続くようにして、中心から見て右上方向に、赤く光る点が出現する。
「ふむ……。北東約2カルフォーネの地点が発信元のようだ」
「そ、そこまで詳細な位置がわかるだなんて、凄いのです! 凄すぎるのです!」
「そんなに驚く程凄くはないぞ。というのも、発信元がここからあまり離れていなかったからな。もし、数百カルフォーネとか離れていたら、ここまで詳細には分からないからヤバい所だったし」
メルメメルアの再びの驚きの声に、そんな風に言って一度言葉を切り、周囲を見回した後、
「……っと、それよりも、だ。ここから大した距離でもないし、その地点まで行ってみるか?」
と、告げる。
「もちろんなのです! 何者が何の目的で動いているのか、少しでもいいので、情報を得たい所なのです!」
鼻息荒く拳を握り、ラディウスの方へ顔を近づけるメルメメルア。
それに対しラディウスは、引き気味に後ずさりながら頷き、答える。
「あ、ああ、わかった。それじゃ行くとしよう」
◆
「……ここらへんのはずだが……」
「誰もいないのです」
ラディウスとメルメメルアは、逆探知の魔法が割り出した地点――ゴツゴツとした岩や石が無数に転がる湖畔で、周囲を見回しながら、そんな風に言う。
「逃げられたです?」
「まあ……こちらから送られていた術式通信が途絶えた時点で、逃げに転じた可能性は十分にあるな。術式通信だけカムフラージュとして送っておけば、俺達がここへ来るまでの時間を利用して逃げおおせる事が出来るしな」
「なるほどなのです。でも、術式通信を送るためのガジェットはどこかにあっていいはずなのです」
ラディウスの言葉に頷きつつ、そう返して再び周囲を見回すメルメメルア。
「まあたしかにそうだな……」
と言いつつ、ラディウスは逆探知用の魔法の探知範囲を狭め、より詳細な位置を掴める形へと魔力の消費と流れを調整し、探知しなおしてみる。
……すると、程なくしてなにかが近くにある事を示す反応が返ってきた。
その反応を頼りに湖畔を歩きながら注意深く周りを観察する。
そして、波打ち際へと視線が移った所で、ふと不自然に石がまったく転がっていない場所があった。
波打ち際は、河原のように大小様々な石がゴロゴロと転がっている状態であるのにも関わらず、そこだけは地肌が露出しているのだ。
「……ん? もしかして、あそこ……か?」
ラディウスがそんな風に呟きつつ、そちらへと歩み寄る。
……すると、その石がなく地肌が露出している地点に対して、ガジェットが強い反応を示し始める。
見えざる何かがそこにある事を確認したラディウスは、地肌の露出している部分へ向かって手を伸ばす。
と、その直後、手に何かが触れた。何も見えないのに、だ。
だが、それによってラディウスは予想が当たっていた事を理解する。
そう……。そこには、魔法で透明化されたガジェットが設置されていたのだ――
しばらくは、こちら側の話が展開します(多分)
さて、次回の更新ですが、土曜日を予定しています。
なかなか更新頻度を上げる余裕が取れずに申し訳ありません。




