第1話 次への道。辿り着くはカレンフォート。
予定より投稿が少し遅くなりました……
「これがカレンフォートか……。随分と人が多いな」
「隣接する2つの国の国境までの距離が大体同じくらいの位置にあるし、その2つの国同士の行き来も、山岳地帯と大森林地帯の関係上、ここを経由するのが一番早い――まさに、交通の要衝と言える街だから、自ずと人が集まるんだよねぇ」
活気に満ちた都市の町並みを見ながら、呟くように言ったラディウスに対し、セシリアがそんな風に説明する。
「なるほどな」
――グランベイル同様、時を遡る前にも来た事はなかったな……
たしか、早い段階で鉄道がここまで伸びていたはずだが……
そう思いながらラディウスが再び町並みに目を向けると、なにやら大通りに近い場所に妙な空き地が続いており、良く見るとそこに盛土されている場所があった。
「ん? あれは……あそこを列車が走るって事か……?」
「そういえば……王都からここまで、線路とかいう魔導列車が走るための道を伸ばしているとかいう話を、王都の大聖堂に行った時に聞いたのだわ」
ラディウスの疑問に対し、横から覗き込むようにして盛土を見ながら、そんな風に言うクレリテ。
「列車って?」
セシリアが首を傾げながら問う。
「そうだな……雑に言うと、鉱山で良く使われているトロッコを人が乗れるようにしたものというか……馬車の、俺たちが今乗っているこの部分を縦長にして、それを連結した物だ。高速かつ大量に人や物を運ぶ事が出来るのが最大の利点だな」
ラディウスは、この時代にも存在しているトロッコを例えに使う形で、そう説明する。
「へぇ、なるほどねぇ……。たしかに便利そうだけど……連結したら凄い重そうよね。馬じゃ引くのすら無理な気がするけど……それ、どうやって動かすのかしら?」
というルーナの疑問に対し、
「何らかの大出力の動力機関――蒸気を利用したりとか色々な方法があるが……このせ……辺りで一般的なのは、主に超重量の物を引っ張るのに有用な、そういう魔法が組み込まれたガジェットだが――を利用して引っ張る感じだな」
と、そんな風に答えた。一瞬『この世界』といいかけたが。
ラディウスは再び盛土を見て、そちらを指さしながら、続きの説明を口にする。
「ああいう風に地面を整地して、その上にレールを敷けば、引っ張って進むだけでレールの上を全ての列車が連なって進むからな、馬のように進む方向を微調整する必要もほとんどない。だから、多数連結しても速度が出せるし、ほぼ決まった時間で目的地にも着ける……とまあ、とても有用な移動手段物資兼輸送手段だといえるな」
「凄そうなのだわ。乗ってみたいのだわ」
「そうねぇ。そのガジェットと魔法の構成が見てみたいわね」
「あ、興味持つのそっちなんだ……」
クレリテ、ルーナ、セシリアの3人がそんな事を話していると、
「たしか……既に街のすぐ近くまで線路の方は作られていて、あとは街中の部分の敷設が完了すれば、線路自体は完成するそうですよ。ただ……肝心の駅の方が、まだ未完成どころかほとんど出来ておらず、建築を大急ぎで進めているという話を聞きました」
と、そんな風に追加情報を話すマクベイン。
「駅なんて、極端な話、列車を停めるためのプラットフォームさえあれば、駅舎は掘っ立て小屋だろうが、とりあえずは構わないと思うんだけどなぁ……」
「そうですね……。まあ、市長の見栄……みたいなものがあるのではないでしょうか。ここの市長は、世間体や外見といったものを気にする方なので……」
ラディウスの発言に対し、マクベインがため息混じりにそう返す。
「どこにでもいるものですね……そういう人間……。もっとも、折角の駅なので豪華に見せたいというのも、わからなくはないですが」
「ええ、都市の駅はどこも立派な造りですからね。……で、まあそういう方なので、本日我々が宿泊する宿も超高級だったりしますよ。――ここです」
マクベインが、ラディウスの言葉にそんな風に答えながら馬車を止める。
ラディウスたちが馬車を降りると、そこにはモダンな造り――日本の古い洋風建築のデパートを思わせる、そんな大きな建物が目の前に広がっていた。
「……なるほど。たしかにいかにも高級そうな、想定外の大きさの宿だな……これは」
それを眺めつつ、ラディウスはそう口にする。
というより、それ以外に発せる言葉がなかったのだった――
カレンフォートに移動した為、節が変わります!
思ったよりも鉄道関連の説明が長くなってしまいました……
次の話の途中か終わり際あたりで、向こう側の話に戻ります。
その次の話ですが、3日後の昼を予定しています。
……時間の方は遅くなるかもしれませんが……(汗)