第2話 術式。構築。
「さあさあっ!」
「教えるのだわっ!」
「そ、そんなに勢い良く迫って来なくても、ちゃんと教えるからっ、も、もう少し離れて……っ!」
とまあそんな感じで、セシリアとクレリテに少し……いや、かなり押され気味な雰囲気から始まったルーナの説明だったが、次第に本来の調子を取り戻し、さっきのような事が起こらない様にしっかりとセーフティ術式の構築の仕方を教える事が出来た。
そして、セシリアとクレリテもまた、ルーナに教えられた通りに術式を組む。
初めてのセーフティ術式という事もあり、やや構成に怪しい所があるが、さっきのような事態にはならない程度にはしっかりとした形になっており、問題はなさそうだった。
その様子を眺めながらラディウスは思う。
――若干の不安は――主にセシリアとクレリテに――あるものの、とりあえずルーナがしっかり説明しているから、次は暴走する事はないだろう。
むしろ自分が教えると、ついわかっているつもりで説明し忘れる所があったりするし……今はルーナの方が適任かもしれない。
と。
そして、そうであれば、基礎的な所はルーナに任せておいた方が良さそうだと判断し、ふたりに教えるのはルーナに任せ、自身は作りかけのマクベインが要望した――実際にはそれ以上の物となりつつある――ガジェットの制作を再開する事にした。
――とはいえ、もう完成間近ではあるんだが。
むしろ、向こう世界で使うつもりの逆探知魔法を組み込んだガジェットの方が、まだまだなんだよなぁ……
あれも早く作って、いい加減向こう世界に戻らないとな……
と、そんな事を考えつつ作業を進めていると、
「なかなか賑やかじゃのぅ……」
なんて事を言いながら、シェラが工房へとやってくる。
横にはマクベインの姿もあった。
「先程、爆発音が聞こえましたが……」
マクベインがそんな風に言いながら、クレリテを見る。
「あー、まあ、ちょっとばかし術式の構築に失敗して爆発と放電が発生しましたが、大した事はないので大丈夫ですよ」
「それは十分大した事であるように聞こえますが……」
「何、ラディウスには強力すぎるレストアがあるからのぅ。すこし壊れたくらいなら、すぐ元通りになるじゃろうよ」
マクベインの言葉に対し、そんな事を言って笑うシェラ。
ラディウスは、マクベインは工房の事ではなく、ふたりの事を心配しているのではなかろうか……とそう思ったのだが、
「……そういうものなのですか? クレリテ様や聖女様たちのせいで貴重な魔導工具が壊れたら一大事だと思っていたのですが……」
なんて事を口にしてきたマクベインだった。
ラディウスが心の中で「あれ?」と呟いていると、それが伝わったのか、
「どうかしましたか?」
と、マクベインが問いかけてきた。
ラディウスがふたりの心配はしなくて良いのかと聞くと、
「クレリテ様は頑丈なので大丈夫ですよ。あと、聖女様も同じくらい頑丈だとマザーから聞いておりますし」
などと答えるマクベイン。
「そ、そうなんですか……」
ラディウスは苦笑しつつ、ふとセシリアと再会した時に、教会の中をドタドタ走ってた事を思い出し、なんとなくセシリアが周囲にどう思われているのかを、理解したのだった――
伯爵邸の一件のような事が起きない限り、平時は割とこんな感じに扱われているふたりだったりします。
さて、次回の更新ですが、金曜日を予定しています。
相変わらず間が空いてしまって申し訳ありません…… orz




