第6話 賢者にして英雄の工房。更に訪れし者たち。
更新が予定していた時間よりも、少し遅くなってしまいました……
「作って欲しい物……。周囲に幻影を展開して擬似的に透明になる魔法とか、2カルフォーネ先を見通す魔法とか、そういうのですかね?」
ラディウスは、異端審問執行官の活動内容を聞き、その辺りの魔法が必要なのではないかと思い、先回りするかのように問いかけてみた。
「い、いえ、トラップ型のガジェットを感知出来る魔法を作れないかと思いまして……。というか……そのような――今、仰ったような魔法が組み込まれたガジェットも作れるのですか?」
とんでもない事を言われたとばかりに驚き、問い返すマクベイン。
「ええ、一応作れますよ。トラップ型のガジェットを感知……というより、トラップ型のガジェットが配置されているのが視覚的に分かるようになる魔法と一緒に、今言った2つも、1つのガジェットに組み込んでしましょうか?」
「……え、あ、はい。か、可能ならばお願いします」
ラディウスの発言に対し、マクベインは一瞬何を言っているのか理解出来ずに硬直。
しかし、なんとか理解が追いつき、言われた内容を心の中で反芻しつつ、若干引き気味にそう答えた。
ラディウスは、マクベインの言葉にわかりましたと答えると、どんな術式にしようか考え始める。
「な、なんか、とんでもないガジェットが出来上がりそうなのだわ……」
「やはりというべきじゃろうか……。儂のツレよりも遥かに高い知識と技術を持っておるのぅ……」
と、そんな事を言うクレリテとシェラ。
そこまで強力かつ高度な代物を作るつもりはないのだが……と、ラディウスが思っていると、店の扉が開かれ新しい客がやってくる。
「やっほー、特に用はないけど来てみ――げっ」
やってきたのは、明るい声と共に、工房へと足を踏み入れてくるセシリアだったが、クレリテの顔を見るなり、嫌そうな表情と言葉を口にした。
「な、なんで――」
「――セシリアがこんな所に現れるのだわ!?」
セシリアの声を遮るように、クレリテが叫ぶ。
それに対し、
「それ、こっちのセリフ!」
と、困惑しつつも怒りの声を上げるセシリア。
「というか、セシリアの雰囲気がなんだか普通と違うのだわ。言動が軽すぎるのだわ!」
「言動が軽すぎるって何!? たしかに教会の中で『仕事』をしている時みたいにキリッとはしていないけどさっ!」
クレリテとシェラがそんな事を言い合う。
「……聖女が仕事とか言ってはいけませんよ……」
マクベインが呆れた口調で注意を口にする。
「あっ! げ、言動が軽すぎるって何!? たしかに教会の中で『お勤め』をしている時みたいにキリッとはしていないけどさっ!」
――いや、わざわざ言い直さなくてもいいだろ……
なんて事を思うも、それは敢えて口にはしないラディウス。
「……それで? 何をしにきたのよ?」
セシリアがクレリテに対し、改めて問う。
「ここは、ラディの工房――魔工具屋なのだわ。だとしたら、用事はガジェットを作ってもらいにきたに決まっているのだわ! セシリアみたいに用もなく冷やかしに来たわけじゃないのだわ!」
というクレリテの発言に、「うぐっ」と発して言葉を詰まらせるセシリア。
セシリアが何かを言い返そうと思考を巡らせ始めた直後、再び扉が開かれる。
「ラディ、今日も教えてもらいに来たわよー」
という声と共に入ってきたのは、ルーナだった。
「えっと……教えてもらう?」
「どういう事なのだわ?」
セシリアとクレリテが、同時にそんな疑問の声を口にする。
「俺、最近、ルーナに魔法――術式やガジェットの作り方について、教えていたりするんだよ」
そうラディウスが説明すると、セシリアとクレリテが「えっ!?」という反応を見せた後……
「私にもそれを教えて!」
「私も作り方を知りたいのだわ!」
同時にラディウスの方へと詰め寄るようにして言い放つのだった――
クレリテとセシリアのやり取り、実は最初はもう少し長かったんですが、工房での話が長くなっている事と、ルーナ登場までのテンポが悪かった事もあり、テンポ重視でかなり削りました。
話の流れ(展開)に、ちょっとぶつ切り感が出てしまった気はしますが……
さて、次回の更新ですが……土曜日を予定しています。
なかなか更新頻度を戻せる程の余裕がなく……このままだと、12月下旬くらいまで今の更新頻度が続きそうな気がします orz




