第3話 賢者にして英雄の工房。異端審問執行官と指輪。
今回も、更新が遅い時間になってしまいました……
「――闇討ち上等って……一体、クレリテは何を相手にしているんだ……?」
ラディウスはそんな風にクレリテに向かって問いかけてみる。
「悪人どもなのだわ!」
「悪人……?」
クレリテの返答を聞いてもさっぱりわけがわからず、ラディウスが首を傾げる。
「それだけ言っても伝わりませんよ……」
クレリテの言い様に対し、呆れたようにため息をつきながら、マクベインが言う。
そして、ラディウスの方へと向き直ると、
「――ラディウス殿は、異端審問執行官というのをご存知であろうか?」
そんな問いの言葉を紡いだ。
「異端審問執行官……。異端審問官なら聞いた事はありますが……」
ラディウスは、地球におけるそれ――異端審問官について思い出しながらそう言い、一度言葉を切ってから、
「教会の教え――教義に反する者を審問する人間……ですよね?」
と、マクベインの方を見て問い返す。
「そうですね……。たしかに、かつては――異端審問官と呼ばれていた頃のソレは、そうでしたね」
頷き、そう言うマクベイン。
「――かつて……という事は、今――いえ、異端審問執行官というのは、ソレとは違うという事ですか」
「はい。……この国に限った話ではありませんが、国の定めた法では裁けぬ悪党……というのが、一定数おります。そういった者をこの世から排斥するのが、我ら異端審問執行官……というわけです」
マクベインがラディウスの言葉にそんな風に答えると、話を聞いていたシェラが、
「ま、簡単に言うとじゃな……教会が独自に、そして秘密裏に悪徳な輩の調査を行い、その悪事を暴き、そして秘密裏に始末までしている……という話じゃよ」
と、補足するようにラディウスの方を見て告げる。
「そういう事なのだわ! 一昨日も、カレンフォートの悪徳商人を始末してきたのだわ!」
ラディウスはそのクレリテの言葉を聞きながら、この街にやって来る途中、『カレンフォートにちょっとばかし用がある』と言っていた事を思い出す。
「なるほど……カレンフォートには『そういう用事』で行ったのか」
「その通りなのだわ!」
「で、終わったからこの街に戻ってきた、と」
ラディウスがそう呟くように言うと、
「――終わったというか……その悪徳商人が保管していた書類に、伯爵との繋がりを示す書類があったのだわ。巧妙に偽装されていたけれど、そんな物はマクベインの前には無駄という物なのだわ」
なんて事を言って胸を張るクレリテ。
何故、クレリテが胸を張るのかと思いつつ、
「伯爵との繋がりを示す書類……?」
と、疑問を口にするラディウス。
「はい。伯爵に一部の輸入品を融通する代わりに、その者のライバル――いえ、一方的に敵視していた商会を潰すために、敏腕で知られるマーカスという名の商会長を亡き者にするよう伯爵と取り引きした事を示す、そのような物です」
クレリテに代わって、マクベインがそう答える。
その話に、ラディウスはふと思い至る事があった。
「……マーカス? まさか、あの指輪か? だが……あれに関しては、伯爵は実験と言っていたような……」
「指輪……ですか?」
「あ、はい。実はですね――」
ラディウスはマクベインの問いに頷き、ストレージに放り込んであった指輪の残骸を取り出しつつ、マーカスと指輪についての話をする事にした――
どうにか月曜日中に更新出来ましたが、遅くなりました……申し訳ありません。
次回は、木曜日の更新を予定しております。
……次こそ、12時ちょうどに更新出来るといいのですが…… orz
追記:誤字脱字があったので修正しました。




