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第1話 賢者にして英雄たる者。それを知る。

「ところで、その障壁ってどのくらいの攻撃まで耐えられるの?」

 馬車へと戻ってきたラディウスに、セシリアがそんな風に問いかける。

 

「ん? ああ、ドールガジェットのソーサリーブラスターくらいなら余裕で耐えられるな」

「ドールガジェット? ソーサリーブラスター?」

 ラディウスの回答が良く分からず、首をかしげるセシリア。

 

「あー、えっと……鉄製の城門を一瞬で溶解して大穴を開けられるくらいの威力を持った魔法だな」

「「「…………」」」

 ラディウスの言葉にセシリアのみならず、他のふたりも絶句した。

 

「鉄製の城門を一瞬で溶解して大穴を開けられる魔法も色々おかしいだけど、それをあっさり防いでしまう障壁も、同じくらい色々おかしいよね……」

 一番早く立ち直ったセシリアが、額に手を当てながら呆れた口調で言う。

 

「ま、まあ……どんな襲撃があっても安全という意味では素晴らしいですけどね」

 と、司祭。

 そして、御者台のアイシャがそれに続く形で、「そ、そうですね」と同意の言葉を口にした。

 

「相変わらずラディの作ったガジェット――というか……改造した魔法って、規格外すぎるよね……」

 やれやれと言わんばかりの表情と口調で告げてくるセシリアに対し、

「そ、そうか? ……魔法の構成を理解出来れば、誰でも同じくらいの事は出来ると思うが……」

 と、ラディウスが言葉を返し、そのまま思考を巡らせ始めた。

 

 ――いかんな。やりすぎを是正する為に過去へ戻ってきたのに、ついうっかりやりすぎてしまう……

 ここはやはり、俺と同じくらいの知識と技術力を持つ人間を増やして、別に特別ではないという事にしてしまうのが一番だな……

 となると、まずはルーナを育成するのが良さそうだが……

 

 そこまで考えた所で、正面の方から歓声が聞こえてくる。

「……ん?」


「この歓声は一体……」

「それはまあ……聖女と、聖女を拐かし、操り、更に人々を魔物化させようと企んだ悪逆の徒たるヴィンスレイドを討滅した英雄たる賢者の帰還ですからね」

 ラディウスの疑問にそう返しつつ、ラディウスとセシリアを交互に見る司祭。

 御者台では、アイシャも頷いている。

 

「英雄!? 賢者!? ど、どういう事ですか!?」

 ラディウスが驚愕と困惑が入り混じった声で問う。


 司祭はラディウスの問い直接的な返答はせず、

「聖女であるセシリア様が囚われ、妙な魔法によって操られたり、人を異形の化け物へと変えてしまうような恐るべき研究が進められていたりと、ヴィンスレイドが行った数々の所業は、正直……過去に類を見ないようなものばかりです」

 そんな風に言った。

 

「それはまあ……そうですね」


 ――この世界よりも技術力が発達している世界から来た人間だしな……

 

 口には出さず、心の中でそう呟くラディウス。


「そのような相手をあっさりと排除し、更に聖女や兵士たちを元に戻した……。となれば、教会内でどう扱うべきか悩みました。一歩間違えば、ヴィンスレイドと同レベルの危険人物とみなされかねません」

 という司祭の言葉に、ラディウスはたしかにそれはあるかもしれないと思う。


「そこで『賢者』という事にしました。賢者であるならば、そのくらいの事をしても――出来たとしても、別におかしな事ではありません」

「そ、そういうものですか?」

「はい。古くから賢者と呼ばれる者は、常人よりも優れた知識や技術を持っていましたからね。自分たちの理解が及ばぬほどの言動をしようとも、賢者であるというだけで『危険』ではなく『納得』へと変わるのですよ」

「な、なるほど……?」

 

 ――凄い無理矢理感があるというか、かなり勢い任せの強引な理屈である気がしないでもないが……まあ、たしかにそういうものかもしれないな……


 司祭の言葉に、なんとなく納得してしまうラディウス。

 そんなラディウスに対し、司祭が言葉を続ける。

「そして、そんな賢者が聖女を救い、邪悪な貴族を倒した……。となれば、人々がその者を英雄として扱う事は必然であるといえるでしょう」

 

 ――誰が救って、誰が倒したのか秘密に出来なかったのだろうか……

 ああ、そういえば……『俺がやった事にはしないで欲しい』みたいな事は、まったく言ってなかったな、俺。

 うーん、しっかり口止めをしておくべきだったな……。今更気づいても、後の祭りという奴だが……


 額に手を当て、そんな事を考えるラディウスだった。

レゾナンスタワー側へ再び戻るまで少しかかる想定なので、節を変えました。


次回は木曜日を予定しています!

火曜日は更新がありません! ごめんなさい!

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