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第2話 時を渡り忘れる。この時代にある物を。

「――クレリテ様は、時々こうして急に暴走なされるもので……。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません……。後はこちらでお話しておきますので、ご安心を」

 マクベインが申し訳なさそうにそう言って、気を失ったクレリテを担ぎ上げる。

 

「す、すいません。ありがとうございます」

 そう感謝の言葉を述べたラディウスは、マクベインに担がれているクレリテを見ながら、思う。


 ――助かったけど、今、マクベインさん何をしたんだ? 魔法を使ったようには見えなかったけど……。

 というか、マクベインさんって一見すると老執事って感じだけど、目が戦いに慣れた者の目なんだよなぁ……

 そして、もっともそれはクレリテも同じなんだけどな……

 

 ふたりの事について考え込んでいるラディウスに、

「おや、どうかなさいましたか?」

 と、クレリテを馬車内に寝かせ、戻ってきたマクベインが尋ねた。


 それに対し、今考えていた事を問いかけるのは、なんだか気が引けるな……と思ったラディウスは、

「あ、いえ、グランベイルに来たは良いものの、どうしたものかと思いまして……」

 と、とっさにそんな風に答える。

 実際、あまり深く考えていなかったのはたしかである。


「といいますと?」

「とりあえず、ちょうどいい物件を見つけるまで滞在する事が出来そうな、安い宿はどこにあるのだろうか……とか、そういうのですね」

「ああなるほど、そういう事でしたか。……ふむ、そうですね……。この町には、昔知り合った冒険者が、引退してやっている宿がありますので、そこをご紹介いたしましょう。元冒険者ゆえ、言葉遣いは少々荒っぽいのですが、料理の腕は優秀ですので、おすすめですよ。これをお持ちになって私の名をお出しください」

 マクベインはそう言うと、どこからともなく印によって封がされた手紙を取り出し、それをラディウスへと手渡してくる。


 ――い、いつの間に……?

 いつの間にか用意されていた手紙に、心の中で驚きつつも、ラディウスはそれを受け取る。

 そして、手紙の裏を見ると、『古き籠手亭』主人宛と書かれていた。

「その古き籠手亭という場所がそうです。その道を真っ直ぐ行くと噴水のある広場があります。そこを右――聖堂を背にする形で歩いていくとすぐに辿り着きますよ」

 と、説明しながら道の1つを指さすマクベイン。

 

「なるほど……。わざわざありがとうございます。……っと、そうだった」

 ラディウスはそう言いながら肩に掛けている鞄を漁り、

「……後でクレリテに、これをあげておいていただけませんか?」 

 作っておいた金平糖もどきと小さな緑色の宝玉がついたネックレスを取り出して、マクベインに手渡す。

 

「これは……ラディウス殿がコンペートーと呼んでおられた砂糖菓子に、アクセサリー……いえ、ガジェットですかな?」

「ええ。そのガジェットは……ピンチになった時に自動的に発動する防御魔法が組み込まれているので、身につけておくと少し安心かな、と思いまして」

「それは……話を聞く感じだと、随分と高価そうな物ですが……よろしいのですか?」

「実はそれ、俺が練習で作った物なんですよ。なので、高価そうに見えるだけで、実際には大した物じゃありません。まあ……お守り代わり、という事で」

「そうでしたか……。それはそれでなんというか凄いですね。よもや、本当にガジェットをお作りになられる程だとは……」

「あー、いや……。それは練習というか実験というか……まあ、そういった感じで作った試作品的な代物でして……。そこまで強力な物ではないので、あまり期待しないでください」


 ラディウスは試作品的な代物だと語るが、実の所、発動する防御魔法はとてつもない性能を誇っていたりする。

 それはもう、鋼鉄をも一瞬で溶かすドラゴンのファイアブレスを完全に防ぎきれるほどに。


「いえいえ、ここまでしていただいて、きっとクレリテ様も喜ばれる事でしょう。――さて、それでは改めまして……ラディウス殿の歩む道に幸多からん事を――」

 マクベインはそう言うと御者台に飛び乗り、馬車を進ませ始める。

 

 ラディウスは、おじぎをしてそれを見送ると、馬車の進む方向とは反対の方向――さっきマクベインが指さしていた道へ向かって歩き出す。

 

 ――実に良い出会いだったな。いろいろな意味で感謝だ。

 しかし……マクベインさんのお陰で、宿の問題は解決したけど、問題はこの町にちょうどいい物件があるかどうか、なんだよなぁ……

 それと、もし見つかったとして、ガジェットショップ――魔工屋をやるには、なにが必要だったっけか…… 

 えーっと……魔導連結装置……は、まだ出来てなかったはずだ。なら、マテリアルコンバーター……も、なかった気がするぞ……?

 

 そこまで考えた所で、ラディウスは頭を掻きながら、

「……いかんな、この時代に存在していた物が何だったか良く思い出せん。歩きながらではなく、落ち着いた場所で考えるとするか……」

 と、そう呟いて顔を上げる。

 

 すると視線の先に、空に向かってそびえ立つ尖塔(せんとう)が見えた。

 

 ――あの尖塔は神剣教会の……。なるほど、あそこが大聖堂か。

 うーん……大聖堂なら静かそうな感じがするし、折角(せっかく)だからちょっと行ってみるかな……

前の話で、今日中にと言っておきながら、日を跨ぎました…… orz


追記:誤字と脱字を修正しました

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