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「・・・・・私が、メアリー・ヘスティアと同じ立場ですって」

「落ち着け」

「これが落ち着いていられるものですが!国庫を貪るだけの害虫と同列扱いされたのよ」

私は思わずアルクトスに怒鳴ってしまった。

完全なる八つ当たりだとすぐに気づいて、気まずさから目を逸らした。

「ごめんなさい」

私の謝罪にアルクトスは苦笑する。

「元傭兵の俺なんかに謝罪するなよ。王妃様だろ」

「身分なんて関係ないわ。悪いことをしたら謝るのは人としての常識よ。今のは完全に私の八つ当たりだったわ」

「本当に変わってるよな、あんた」

そう言ってアルクトスは私の頭を撫でる。

「いいんだよ。そうやって感情を爆発させちまえ。何もかんも呑み込む必要はない」

「ありがとう」

アルクトスのおかげで少し気分がすっきりした私は今後のことを考えるようにした。

側妃にするということは側妃用の費用を作らないといけない。

でも側妃は国益に貢献できるから国が認めて費用を与えられる。メアリー・ヘスティアにはそれが期待できない。

「陛下の財産から出させるのが一番ね」

私は現在の国庫に関する資料を見ながらそう判断した。そうなると陛下がまた文句を言いそうだけど私は銅貨一枚たりとも彼女に支払ってあげる気はない。

「アイリーン様」

緑色の髪を左右に結んだ侍女が困惑した顔でやって来た。

彼女はリリー。私の専属侍女兼護衛だ。見た目は華奢で護衛には見えないが彼女は魔法師なのだ。

「どうしたの、リリー」

「ヘスティア子爵令嬢がアイリーン様に取り次ぎを求めています」

「面会依頼はなかったはずだけど」

「はい。いただいておりません」

面会の予約もとらずに格上の相手に突撃訪問など礼儀知らずにも程がある。

陛下の寵愛を受けているかと自分が上だとでも思っているのかしら。

「追い返して頂戴。会いたくば面会予約をしてからにしてと」

「畏まりました」

リリーが出て行った後

「私が会いたいって言っているのよ!どうして会えないのよ」

という怒鳴り声が聞こえた。

「気の強い女だな」とアルクトスはから笑いしていた。

「あら、気の強い女性が好みじゃなかったかしら」

「あんな性悪女はごめんだ。アイリーン様なら喜んで」

そう言って肩をくもうと手を伸ばしてきた手を私は抓った。彼は時々そうやってふざけてくるのだ。

彼はいつものことなので笑いながら私から離れて行った。

「あのお嬢さん、また来るだろうな。どうする?」

「私は彼女を側妃として認めるつもりはないから会わないわ。それに贈り物もしないつもりよ」

側妃を迎えることになると王妃から側妃に贈り物をするのだ。これから一緒に頑張ろうという意味も込めて。それから最低でも月に一回はお茶会に招待をして情報交換をするのだ。

因みに側妃の子供に王位継承権はない。これは側妃と正妃による王位争いを避けるためだ。

側妃の子は臣籍降下されて王太子を支える立場になるべく育てられる。

「あのお嬢さん、しつこいぞ」

アルクトスの言う通り、メアリーは翌日もやって来た。しかも、「今から伺います」という手紙を持ってやって来たのだ。

「馬鹿なのかしら」

リリーには通すなと言ってあるので彼女は毎回門前払いされている。

「本人が手紙持ってやって来るなんてレアケースだよな」

アルクトスは面白そうに笑っている。他人事だと思って。

その次の日は「今から伺います」と書いた手紙が届いた数分後にやって来た。

「面会予約の意味をご存知なのかしら」

「知らないから門前払いを受けているんだろ」

普通は何日も前に送って許可の返事を待つのだ。緊急時でもない限り当日の面会予約などない。

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