9話
一人街道を歩む。町を出てはや二日。情報通りだとしたらそろそろ何かしら出てもおかしくはない。盗賊トレボー一家及び地を走る巨鳥。まだかなぁ。早くでないかなぁ。
おや? 気配を察知。道を外れ森へと身を潜める。んぅー…複数感じるな。サーモグラフィで見てみよう。人間だな。うん。人間だ。数は1、2、3…っと、8人か。わたしが街道歩いていたのを見られていたのか、こちらへと近づいてくる。
武装しているな。これで一般人ですって事はないはず…だけど。こちらのご時世どうだろぅ?
「っかしーな…確かに小さいのが一人歩いていたんだがな~…」
「見間違いじゃねーのか?」
「いや、俺も見たぜ…確かにガキっぽいのがなぁ~…」
僅かにだが声が聞き取れる。息を潜め出来る限り気配を消す。無だ。無になれ、わたし!
「ガキが一人旅って事もあるめぇ~近くに親か商隊がいるはずだ」
「違いねぇ」
「女がいねぇ~かな~ヤりて~ぜ」
キラーン!狩りの時間だ!右手に小剣。左手に丸盾。フードよし!わたし登場!かーらーのーシールドバッシュ!わたしの怪力で思いっきりのバッシュに男一人が吹き飛ぶ!
「な、何だ!? ガキが…ッ!」
「てめー…ぐふッ」
小気味の良いリズムを刻み込む様に切り捨てて行く。あと一人を残し、一合も切り結ぶ事無く終わる。わたしはフードを下ろし言う。
「ご機嫌よう!盗賊さん」
片手剣を両手で握りコチラに向けてガタガタと震えている男一人だけ。
「お、女!? 何なんだ…お、お前…俺たちをトレボー一家と知ってる…のか!た、ただじゃ置かねぇゾ…」
「へぇ~この状況でまだそんな事いえるのね」
わたしは男の持っている剣を小剣で叩きつけて弾き飛ばす。
「ま、待て…待ってくれ!命だけは…」
「あなた!今までそう言ってきた人達に何をしたのかしら?」
「ぐぅ…」
「アジトまで案内しなさい!」
「仲間を売れっていうのか!?」
「返事は、はい、か死あるのみよ!」
「わ、わかった…案内するから勘弁してくれッ」
男をロープで縛り上げて歩かせる。余計な事は喋らせないし聞かない。嘘を付く可能性が高いだろうから。それにどうせ聞くなら上役の方がいい。こんな哨戒しかしてない下っ端じゃ話にならない。
森を小一時間ほど歩く。どうも道を誤魔化そうとしてグネグネと回り道をしているようだ。わたしは自分が歩いた場所はわかるので蹴りを入れた。次やったら許さないと言い聞かす。
そしてようやく到着したアジト。到着したところで男が駆け出し叫ぶ。
「お頭ぁ~!女を連れてきたゼ~一人だ!ベッピンだが結構つぇぇ…―ッ?!」
こいつ、ロープで縛られているのに何をトチ狂っているのか。無論ロープの先は、わたしが握っている。ロープを引いて左手に装着したままの丸盾でバッシュ!綺麗な放物線を描いて飛んでいった。
アジト入り口付近が騒がしくなってきた。まぁ、どうせ潰すんだからいいんだけどね。
「はぃはぃ。ご紹介に預かりましたベッピンさんですよー皆さん集まれー♪」
おーおー出てきて出てきた男達がゾロゾロとまぁ。全部でー24人か。先の8人と合わせ+32ポイントゲットする!
「なんでぇ。ヤケに威勢がいいじゃねーか。嬢ちゃんよ。あとでヒーヒー言わせてやるゼ」
「へへへッいいねぇ。気の強そうなのがこの後どうなっちゃうのか楽しみだ!」
「お前らちょっと黙ってろ!外に出ていた奴らは、お前一人で片付けたのか?」
おっとボスさん登場ですか!40代の無精ヒゲの男が斧を片手で肩に乗せ問うてきた。
「そうだよー♪ 瞬殺、瞬殺ね!」
「ちッ。フザけた事を!野郎共!気ぃ~入れてかかれ!」
「ほんじゃ、いっきまっすよー♪」
全力ダッシュで盗賊達に迫る。駆け抜けざまに3人の首筋を小剣でなぞる。男達はめいめいに武器を振り下ろすけど、わたしの緩急付けた速度に戸惑っている様子。そして次々へと討ち取られる事により気合は焦りへ、焦りはやがて恐怖へと塗り替えられてゆく。
「なんなんだ…お前…一体なんなんだ?!」
「それじゃーメインディッシュ♪」
頭領の首筋に一太刀入れようとして躱された。む?もう一太刀!また躱された!やるなコイツ。
「クク…俺様を他の雑魚共と一緒にすんなよ!」
振り下ろす斧に対して小剣を叩きつける。ふむ。斧を手放さなかった事はやるな!と思うものの腕自体が曲がっちゃいけない方向へと曲がってしまっている。まぁか弱い少女の振るう小剣と筋骨隆々のおっさんんの振るう斧とではぶつかれば斧の方が優位に立つと思うよねぇ~。だけども、わたしの筋力と神様製の小剣。どちらが勝つかは目に見る通り。
「ぐぁぁ…な、何ッ!?」
「チェックメイト!」
トレボーさんの首を刎ねてお仕舞い。おや?おやおや?32人倒したのだから+32ポイントだと思っていたのに+33ポイントある。トレボーさん+2ポイントだった?ボスだけあった訳かー。ふむー。
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<ヒナタ> 種族:亜人 状態:平常 スキルポイント=28
筋力=156 敏捷=51 器用=44 体力=50 精神=50
スキル=剣術4、盾術3、健康な身体5、状態異常耐性5、異世界言語1、収納2、気配察知3、暗視3、怪力3、硬化3、酸の息1、逃走3、偽装1、温度感知2、解体3、脱皮1、突進1、爪撃1
未取得スキル=噛み付き
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ポイントが結構貯まってたので、未取得スキル2つと他スキルを色々と上昇させてみた。突進は曲がることは出来ないが直線なら距離10メートルくらいを一瞬で走れる様になった。爪撃は発動させると手の甲から太い鍵爪2本が生えてきた。うーん…ローガン!と思ったけど爪の数も太さも全然違ったわ。動物系じゃなく完全甲虫系だろ…これ。ま、強くなったからいいけど…いいのかぁ?わたし。
とりあえず、盗賊団トレボー一家は片付いたので装備品を収納へと入れてゆく。これがまた結構いい値段で売れるのよねぇ。たまらん!あとは地を走る巨鳥を探し出すかー。