6話
今、わたしはロニーさんの隣で御者台に座りガタゴトと揺られていた。幸い三半規管は強い方なので酔はしないものの、この揺れはなかなかにキツい物がある。馬の足並みは遅く護衛のレッスさん達は歩いて付いてくるので結局のこところ二日かかるという行程に変更はないそうだ。
これから向かう先にあるのはボクスアップ王国という国のシャロレーという街だという。シャロレーは馬が名産の地で王国から手厚く扱われかなり繁栄しているらしい。馬かぁ。乗りこなせれば便利かもしれないけどなぁ。そういえばロニーさんの幌荷台を引く馬も足が太くどっしりとしていて逞しく感じる馬さんだ。
ハァ…そう言えばどうやってお金を稼ごうかな。レッスさん達の様に傭兵―…いゃないな。どっちかといえば行商のほうが―…収納を活かせば!でも収納持ちだという事を悟られるのもまずい気がする。んーんー悩むなぁ。有ったら良かったのに…冒険者ギルド。ロニーさんに聞いたところ商人組合はあるらしい。そこに掛け合って冒険者ギルドを立ち上げ―…でも、よく考えたら面倒だね。なしなし。
スキルポイント2余ってたな…解体を2に上げてしまおう!そして毛皮やお肉を商人に卸せば生活費くらいは稼げそうかな。魔物狩りは冒険者の仕事No.1だしね。その他だと薬草採取とかだったけど~薬草なんて知識ないしな。ヨモギ?ドクダミ?アロエ?何かになるのか?とりあえず街に着いてからだね!最終手段としてゴブリンと共存まであるし…?!
街までの行程中。夜。小剣に丸盾を持っている事をレッスさんに使えるのか?と聞かれ。使えます!と答えると模擬戦をする流れに…どうしてこうなった。レッスさんには余裕で勝利!興に乗ってきたラルヴさん、ペリコさん、最終的にはリーダー格のパゴニさんとまで模擬戦をして勝利してしまった。単に筋力の差です。柔よく剛を制すというけれど限度があるらしい。
「あんたどんな筋力してるんだいッ!?」
とはレッスさんの言。他二人は早々に諦めたけど納得いかないのかパゴニさんとはその後、数戦した。わたしの全戦全勝だったけどね!剣術のスキルではたぶん負けているのだろうけど盾でも小剣でも受け止められると手が痺れるのか途端に動きが悪くなる。わたしは攻めるのではなく受け止めるだけ!受け流すのではなく受け止めるのがポイント!全ては、わたしのスキルに怪力を加えたどこかの神様に文句を言って欲しい。OK?
これに驚いたのがロニーさん。まさかパゴニさんにまで勝ってしまうとは微塵も思っていなかったっぽい。まぁパゴニさん達傭兵団『沈まない太陽』は王都に居を構える大所帯の傭兵団らしくパゴニさん達は気の合う面子でロニーさんが行商に出るのを専属護衛しているみたいだしね。その傭兵団の中ではパゴニさんは中の上くらいの腕前らしい。
そんなこんながありながらも、次の日の昼過ぎにはシャロレーの街に到着した。一般の人は特に何もなく自由で出入りできるらしい。逆に商人は荷検めされるため時間がかかるらしく、ロニーさん達には載せてくれたお礼を告げ、ここで別れた。宿を探さないとだね。
表通りに面した比較的綺麗な宿をあたってみる。料金は一泊銅貨3枚、朝夕の食事を付けるなら銅貨1枚プラス。湯桶は屑貨20枚だそうだ。銅貨4枚屑貨20枚を支払って部屋をとる。
部屋は6畳間くらいの広さでベッドとその横に小さ目のチェストが付いている。湯桶を受け取り身体を拭く。あ~お風呂に入りたいなぁ。ベッドに寝っ転がりぼんやりと今後の事を考える。1日銅貨5枚稼げればとりあえず生活はできるのか…?小剣も丸盾も神様製なせいかやたらと頑丈だし。そういえば人族は魔族と争っていると言っていたけど、街の中は至って平和そのもので賑わっていた。ここら辺は安全なのかな?ボクスアップ王国は海に面した都市だと聞いていた。海かー海鮮だな!あーあと、大きな革袋と水袋しかもっていないし、少し日用品も買わないとだねぇ。お金もジャラジャラともって歩けないし、収納にいれているから邪魔ではないのだけど、少しは出して身に付けておきたい。完全手ぶらも怪しまれるしね。
っと、そろそろ夕食かな。羊肉を焼いたのと塩の効いた野菜屑のスープ、あと黒パンとレタスや人参、玉葱などを刻んだ野菜のサラダだった。ドレッシングはかかってない!不味くはないけど特別美味しい!という訳でもない。毎日食べたいとも思えないなぁ。部屋にもどって果物を取り出しデザートとする。まだシャクシャクとして瑞々しい。この収納スキルは時間停止型っぽいな~ラッキー!いや待て遅行型という線もあるのか?要検証だな。
久しぶりにベッドで寝たのでよく眠れた気がする。朝食はスクランブルエッグに焼いたベーコン。それに昨日の残りのスープっぽいのに黒パンだった。食事情も改善したい。
さぁ買い物だ! 銀貨4枚、星銅貨5枚、銅貨15枚、屑貨80枚、それが、わたしの全財産。
さて、どこから回ろうか。って、わたしこの街の事、全然知らなかったわ。困ったな。どこかに案内板みたいなのってないのだろうか?
そんな、わたしに声をかけてくる人物がいた。