3話
ある日。森の中、熊さんに出会った。
って、そんな事考えている場合じゃない!ヤバイヤバイヤバイ!超危険な気配を感じて振り返ると全長5メートルはありそうな超デカ熊さんと今日は。慌ててゴブリン二人と一緒になって逃げ出す!
熊に出会ったらどうするんだっけ!? 死んだふり!? いやいやいやいや、それはやっちゃダメな奴だ。背後を見せて逃げ出すのはダメだとも聞いたけど、もうやっちゃってるし!ゴブリン二人の方が、わたしより反応早かったよ!あ、あー人生が走馬灯の様に…って昨日から始まった人生だし!終わるの早すぎーーー!
「ヤバいぎゃ!!アイツまだらぎゃ!」
「まだらぁ~?!」
「このモリのヌシだっちゃ!」
「いいから走って!そんな情報今いらないからぁ~~!」
とチビとノッポのゴブリンとの会話を楽しんでいると。チビが転けた。案の定の展開に草生える。ノッポは構わず走ってゆくが、わたしは思わず振り返り止まってしまった。チビに振り上げた爪を振り下ろす瞬間、わたしはチビの前に立っていた。振り下ろさる腕がやけに遅く感じる。それを右手で受け止める?いや受け止めてしまった!熊は唖然としているが、わたしは呆然としている。お互いにハッとして熊が手を引き戻す瞬間に、わたしは熊の顔面を殴りつける。何度もだ!バキとかボキとかそんな音を立てながら殴り続けていると熊はその場に倒れ伏す。
やった!のか?熊も死んだフリをすると聞いた事があった気もする。チビの持っていた槍を拾って頭をつついてみる。うむうむ。これは完全に死んどるな。
「ニンゲン…おマエ、まだらタおした…」
おや?これはやってしまったか?怯えさせてしまったかもしれない。冷静になって考えたら、わたし熊を素手で殴り殺したんだよね…。咄嗟にやってしまったが自分でも自分が怖くなってきたわ。そう思っていると。
「スゴい!スゴすぎる!おマエ、キョウからこのモリのヌシになるだぎゃ」
「えッ?主って何するの!?ってか、ならないし!」
ふと視線を感じ振り返ると離れた木の影からこちらの様子を伺うノッポがいた。わたしが見ているのに気づいたノッポは恐る恐るという風にこちらにやってきた。
「…これ…お、おマエがやったっちゃ?」
チビは凄い凄いを繰り返し言い。ノッポは完全にビビってるな。さてどうしたものかー。まぁやってしまった事をウダウダと考えるのは小似合わない。まず第一に考える事は肉!こんな大きな獲物を狩れたんだ。食べなきゃ損だ!とりあえず首なしうさたんを吊るした木に戻ろう。しかし、この巨体どう運んだものかと思ったら、わたし持てました。はい。運んでいる、わたしにも驚いているゴブリンコンビ。まぁ理解は出来るので文句は言わない。
改めてチビとノッポが名乗って来たのでコチラも名乗る。チビがバギという名で、ノッポがギラというそうだ。なんか魔法っぽい名前だけど大丈夫か、これ?わたしはヒナタと名乗った。新たな世界に転生したわけだし逸見性はまぁいいだろう。どうせ結婚したら変わっていたかもしれない性だしな。
それよりこの熊、血抜きしないとならないっぽいがどうすんだ?!よく見たら所々で毛の長さが変わっていて斑模様になっている。だからマダラなのか?安直な。北極熊と同じくらいのサイズなのか?とりあえず今更持ち出した小剣で首の所を切裂いて担いで高めで太めの木の枝に、エイヤっ!と引っ掛け吊るす事に成功する。おかげでなんか血まみれになってしまった。洗いたい。お風呂入りたい。まぁ無理だろうけどな!せめて川があれば…。
熊肉…美味しいのだろうか。北海道には熊カレーの缶詰があったような気もするし、お土産品になるくらいの味はするのだろう。うんうん。昨日から今まで瓜1つしか食べていない。飽食の日本から転生した身としては辛い。
血抜きを終えたうさたんはギラが槍に吊るして持ち、熊さんは、わたしが背負ってゴブリン達の住処へと持ち帰る事となった。2時間ほどかけて歩いてたどり着いた所は、崖下に荒屋が七件ほど建ち崖のところに洞穴がある寂れた感じの村だった。ここに男6人、女8人、子供5人の6世帯で暮らしているらしい。
村に入ると忽ち大騒ぎになった。なんたって森の主こと斑を倒しちゃったわけだからね!バギが事の経緯を大いに盛りに盛って盛り上げて話ている。もう村は神様、仏様、ヒナタ様って塩梅である。あと村の近くに小川が流れていたのでまず行水させて貰った。はぁ~さっぱりした!
村の衆が揃って熊と兎の解体を行っているのだけど何故かそこに、わたしが混じっている。解せん。働かざる者食うべからずなのか?!十分働いたと思うんだけどなぁ。まぁ解体は覚えておいて損はないだろうと思うのだが如何せん、お肉はパックにつまって売っているのしか見たことないときてスプラッターな展開に思う所もあるのだが、わたしはお肉が食べたい一心で頑張った!「ヒナタさまはヘタくそだんべなぁ」言われながらも頑張った!モノがものだけに時間かかったなー毛皮と肉を分ける作業だけで1時間以上かかった。
その夜にはお肉は焼きあがって宴会のような感じになった。大きな葉っぱの上に岩塩だけで味付けされたお肉いっぱいと今朝食べた瓜や、あと果物類が並ぶ。
村長が挨拶していたが皆構わず肉に手を伸ばしている。わたしも早速頂く事にする!んーッ!塩だけの味付けだけど悪くない!いや美味しく感じるお腹が減りに減ってた影響もあるのかもしれないが、とってもジューシーで美味しいく頂いた。
最初遠慮しがちだった子供達も大人が歌い踊りだしたら陽気にキャッキャと燥ぎ、わたしにも近づいてきた。わたしも子供達相手に抱っこしたり肩車したり大いに怪力を活かしたのだった。
そして落ち着いてきた時間に、わたしはステータスを見る。
<ヒナタ> 種族:亜人 状態:平常 スキルポイント=12
筋力=53 敏捷=9 器用=7 体力=8 精神=9
スキル=剣術1、盾術1、健康な身体1、状態異常耐性1、異世界言語1、収納1、気配察知1、暗視1、怪力1、硬化1、酸の息1
未取得スキル=逃走、突進、爪撃、噛み付き
おやー?若干の能力値上昇の他に、新たにスキルポイントなる表示と未取得スキルという表示が増えていた。