2話
<逸見日向> 種族:亜人 状態:平常
筋力=52 敏捷=8 器用=6 体力=7 精神=8
スキル=剣術1、盾術1、健康な身体1、状態異常耐性1、異世界言語1、収納1、気配察知1、暗視1、怪力1、硬化1、酸の息1
ステータスを見るとこんなだった。ふむふむ…気配察知は触角のせいか? ちょっと待て、いや、色々と待て種族が亜人!? そして視覚が以上に広いけど、これ複眼になってないか? 能力値も怪力1のせいか筋力だけが52もあるのですけど…通常の人の平均値がどれくらいか不明だから、これがどれ程なのかは分からないけど。で、酸の息。お前はダメだ。蟲人となってんじゃないのかこれ。どうすんだ。おい。
いや、でも触角さえ隠せば見た目は普通の人間だ…。落ち着け落ち着けーまずは深呼吸ひっひっふーひっひっふー…。うん。まぁ、なんとかなるだろう。
とりあえず、自身の確認はこれくらいとして。周囲を見回し状況確認。Q.ここはどこですか? A.森の中です。はぁ!?森の中とかありえないっしょ!どないせいっちゅーんじゃ…あんのボケ神様が!か弱い少女を森の中へ転送させる意味とかわからないし!
空を見上げる…鬱蒼と茂る葉でよく見えない。陽の傾きとかで方角とかでも分からないものかとも思ったけど、どっちの方角に進めばいいのかすらわからないときた。サバイバルモードなのか?!迷った時は下手に動かない方がいいと聞いた事あったような気もしたけど…そもそも救助なんて来んがなぁ!!
改めて所持品確認。小剣、丸盾、フード付きのローブ。以上―終了!食料すら持っていない!あ、服のポケットに銀貨が5枚入っていた。お金があってもお店がない!収納の中に何か入っていないだろうか…と、期待するが収納を発動し手を突っ込むも何も出てきやしない!からっぽじゃ!
季節的には暖かい様なので暖を取る必要性はなさそうなのだけが救いか…。
置かれた状況に呆然としていると近くの薮がガサガサと揺れた。すわっ魔物か!?と思い慌てて振り返ると1羽の兎だった。あーうさたん可愛ええ。癒されるぅ。兎なんて近所にあったペットショップでくらいでしか見たことないし。近づいては来ないが堪能した!兎はわたしを見て鼻をヒクつかせた後、興味を失ったかのように去っていった。
はぁ。ここでじっとしていても何も起こらない事はわかったし、とりあえず歩き出す。方向適当だけどな!
何か食べ物ないかなぁ。木の実でもいいけど。キノコさんを時たま見かけるけどこれに手を出すほど、わたしは馬鹿じゃーない。山菜は怖いのだ。
水がないのもキツイ。近くに川などないものだろうか。耳を澄ますも水のせせらぎは聞こえてこない。歩けば体力も消耗する訳で、当然お腹も空いてくる。周囲も暗くなってきた。何この絶望感。ありえないんだけど。仕方なく大きな木のうろでローブに包まりその日は就寝。できるかぁ!こんな森の中で絶望を胸に安心して眠れるだけ、わたしは強くはないのだよ!
お父さんお母さん先立った不幸の末、転生したのにもかかわらずまた先立ちそうな、わたしをお許し下さい。そんなこんなでいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
「イキているんだがや?」
「わからん」
何かつつかれている感触と声で目が覚めた。
警戒心ももなくガバっと跳ね起きる。と、わたしより背の低い肌が緑色で頭に小さな角を2本生やした生物が2体いて、槍状の物でつついていたっぽい。
「ゴブリンっ!?」
言わずと知れた異世界ではよくいる雑魚敵代表だ。性格は凶暴で人を見ると襲い来る。そして女の子は拐われてチョメチョメな事をされてしまう!小剣を抜く事さえ出来ず怯えていると。
「おめさ、ニンゲンのオンナだぎゃ?こげなとこさでナニしてるだぁ」
「こんなモリのオクにまでヒトリでハイりこむっちゃ。シんでしまうべ」
なんか普通に話しかけられてる。何この状況。
「あのー…襲っては来ないのですか?」
「ニンゲンのオンナヒトリおそってもシカタあんめぇ」
「ナニかクいもんでも、モってるんか?」
「…昨日から何も食べても飲んでもいないんですぅ!助けて貰えませんか!お願いします!」
そう言うとゴブリン二人はやや困惑顔で見つめ合って言った。
「おらタチ、クいモノとうばん。おマエもカりするか?」
「行きます行きます!手伝います!」
「おマエ、ナニできるだか?」
「わたし力持ちです…たぶん。それ以外でも何か言ってくれればするので言って下さい!」
まず最初に向かった先にあったのは木に蔦を張った瓜の様な実だった。思わずすぐに1つ毟り取って口に運ぶと、スーっとした果汁が一気に溢れ口の中を爽やかな刺激で満たす。あっという間に食べ尽くし、もう一つと手を伸ばすと止められた。どうやら一日に一人一つまでとの決まりらしい。
それはそうと何故ゴブリンが人間?である、わたしを襲わないのか聞いてみたところ。
「おマエ、ウバうクいモノもってないだぎゃ」
との事だ。つまり食べ物を持っている人間はゴブリンに襲われるという事だった。馬が引いた荷台などの食べ物を奪うため集団で襲撃する事もあるらしい。うーん。やっぱ人間とゴブリンの相対する関係は敵対的なのが基本なのだろうか。しかし彼らは非常に穏やかに思えるんだけどなぁ。
水分補給も済んだ事だし次は腹を満たしたい!何が言いたいかと言うと肉が食べたい!という訳で3人で必死にうさたんを追いかけている。そんな可哀想…などという気持ちは既にない!だが如何せん敏捷8では、うさたんに追いつけない。そこで必殺の投石!どこかに当たって動きを緩ませれば良いと思っていたら頭を打ち抜きましたよ。ええ。飛び散りましたとも。ええ。えぇぇエエェ~…どいう事さ!
ゴブリン達は。
「おマエ、スゴい!よくヤッタ!」
と大喜びですよ。はい。首なしうさたんを木にぶら下げ血抜きをしていると、わたしの気配感知にビンビンに引っかかる巨大な影が迫っているのだった。