16話
歩こう進もう魔族の領域♪
という訳で、やって来ました魔族の支配地域。ここはサーポロス連邦を東に六日程の距離にある魔族の前線都市。元々は人間の町だったが魔族に占領された様だ。どんな廃墟探検になるのだろうと思っていたけど…案外普通だね。
魔族の町なのだから勿論魔族がいる。町に入るとき呼び止められたけど、触覚を見せて人間じゃない事アピールしておいたんだ。そうそうこの娘はラキ。わたしが両手を腰に胸を張って人間ではないアピールしていた様子を見ていたらしい。戦士階級の魔族に怯えず対応していたので驚いて声をかけてくれたみたい。
見た目15歳前後。つまり、わたしと同年代!綺麗な銀髪を腰の辺りまで伸ばし瞳はターコイズブルー、頭には羊のようなねじれた角が2本あるのが特徴的で、それ以外は人間と変わらない。給仕服身に纏っていて身体は細く明らかに戦闘向きではない。そんな彼女は存在値1以下のスレイブ階級にあるとか。ん? 存在値ってなんぞや?
「え?ヒナタちゃん自分の存在値を知らないの?」
「あー…いゃ、そもそもその存在値って何?」
「え?え?こちらの世界に顕現するのに必要な魂の階級値じゃない。やだなぁ、ヒナタちゃんしっかりしてよー…魔族でそんな事分かんないなんて…ヒナタちゃん?あなた魔族よね?」
「見よ!この頭にでーんとそそり立つ触覚を!こんなの生えてる人間なんているわけないじゃない。あははは」
ふむー魂の階級かー。よく分からないなぁ。待てよ?スキルポイントに何か関係がないのかな?
「ねぇねぇ。戦士階級では存在値はどれくらい?」
「そうねぇ。正確な事はわからないけど存在値2以上5以下ってじゃないかしら」
やはりかー。今まで倒してきた魔族が大体2~5ポイントだった。つまりは存在値=スキルポイントになるわけか。ふむふむ。
「ねぇ。戦士階級の上はどんな階級になるの?」
「んー…私も詳しくは知らないのだけど…戦士階級の上が従士階級、騎士階級、あとは貴族の階級になっていくはずよ」
「貴族って男爵とか伯爵とかの?」
「そうそう」
「騎士階級より上の存在値はどのくらいになるのかな?」
「さー…私もよく知らないわ」
「うーん…そっかぁ。まぁ戦ってみれば分かるか」
「えッ? 戦うの!?」
「あ、あー!ほらほらッ訓練とかよ訓練!」
じとーっとした目つきで見つめられる。ただ只管に笑ってごまかすっきゃない!なははははッ。
さてさて町での魔族の暮らしも人間と大差ないようだ。基本上の階級の者に雇われ働き、働きに応じて生活に必要な物品が支給される。ここでは人間社会のお金に価値はなさそうだね。ラキは給仕の仕事をしているとの事。それとスレイブ階級が戦場に出る事はまずないらしい。
魔族は戦闘種であり戦闘できないスレイブは戦士以上の階級者に雑に扱われているときた。そもそも魔族がこの世に顕現するには存在値が必要で、戦える戦士階級は最低でも人間一人以上の存在値が使われている。動物なども存在値はあるもののその数値は低く主にスレイブ階級者しか顕現できない。妖魔などは存在値が高い者がいるものの顕現化が不安定になるようで人間が好ましい、との事。魔獣は戦士階級も生み出せるので積極的に狩られる。だから人間の国に魔獣も逃げ散って行くっぽい。
また、顕現化は元々は国元で行われていた様だが貴族階級の者が同等の儀式を行えるらしく、今現在では現地で顕現化が可能。そんなラキもこの町で顕現化されたという話。と、言う事は?この町にも貴族階級の魔族がいるのか。まぁ、ラキに聞いただけだから詳細は不明な点が多いけどねぇ。
「きゃッ…」
「あぁーーん?テメェ。スレイブ風情がぶつかってくるとは良い度胸してやがんなぁ…コラ!」
「ラキ大丈夫?ちょっと!アンタ達からぶつかってきたんじゃない!」
「んだとぉ~ゴラァ!」
「あッ、ヒナタちゃんやめて!すみません…許してください…」
「スレイブは幾らでも潰しきくからなぁ~!俺らのサンドバックにでもなりやがれッ!」
「へへへッ。こんな小さい奴らじゃ一発でお陀仏だろうがよッ!」
おー!定番のネタキター!しかし普通手籠めにするもんじゃーないのかぃ?サンドバックというのが魔族の定番なのかな?まぁいっか。どうせ結果は変わらない。
「ひッ!」
「任せて!ラキ!」
「おらぁッ!」
2メートル近い身長のある戦士階級らしい魔族の右腕振り下ろしを左手で軽い枝でも受け止めるように掴む。
「えッ?」
そのまま曲がってはいけない方向へと腕をへし曲げる。ミシィッーボキィッーーー!!
「ぐぁぁぁぁーッ‼」
「てめぇッ!」
殴りかかって来た奴に、へし曲げた奴の右腕を放してまるで小石でも放り投げるように投げぶつける!
「「ぐぇッ!」」
ふんっ!弱いなこいつ等!二つ手を叩いて告げる。
「どぅ?まだやる気はあるのかな」
「ひぇぇーーッ!すいませんすたー!」
「痛てぇッ…俺の腕が…え?あ!ま、待ってくれーッ!」
両手を腰にして、走り去る二人の戦士階級をふんすと鼻息荒く見送る。
「まったく、大した事無いくせに威張り散らしてからに…おかげでフラストレーションが凄いじゃない!」
「ヒナタちゃん…その、庇ってくれてありがとぅ…でも、ヒナタちゃん強いのね!戦士階級の人達をあんなアッサリとやっつけちゃうなんて!まるで上級階級者の様な…え?あれ?ヒナタちゃんってもしかして凄い人だったりする?」
「いゃいゃいゃ。そんな、ぜ、全然大した事ないヨ!あははは」
「う~ん…まぁ、ヒナタちゃんがそう言うのなら追及しないであげる!でも、何かお礼をさせて!」
「いゃ~っそういうんのはイイのだけど…あ、そうだ宿がどこにあるか教えてくれない?今夜泊まるところがないの!」
「え?この町に宿なんてないけど…ここ前線だしね。好き好んでくるのは戦士達だけだし、戦士には宿舎があるのよ。皆そこに泊まってると思うわ」
「むぅ、そっかー…」
「あ、よければ私の部屋に泊まりにくる?」
「お? じゃ、お願いしちゃおっかな!」
そんな訳でラキん部屋にてお泊まり会開催決定!




