テセウスの船
自分って何だろう?
他人って何だろう?
世界って何だろう?
わからないことだらけな作者が
思い付きで綴った
ちょっぴりペーソスな笑いをお届けします。
ワシの体験談を聞いて欲しい。
すぐ隣の平行世界に行って自分に会いたいと、助手と共に近接世界線跳躍機を完成、乗り込みいざ発進!
直系2mの銀色の完全球体で、上のハッチから乗り降りする。ハシゴ付き。輝くミニ潜水球と言った風情。
さあ、到着。だが、となりの世界の自分も同じ装置を完成させて居たようだ!移動先の助手が驚いて、
「いま丁度となりの世界に行きましたよ?」と。「さすが、となりの博士だ!そっくりなんですねぇ~!
全然見分けが付かない!」と、妙に感心している。
「ボクには装置に入ったあなたが、すぐに出てきたようにしか見えませんでしたっ!」
(何言ってやがる。お前だってうり二つのマヌケ顔してやがる。仕方ない、しばらく待つか。。。)
うーん、じれったい、なかなか帰ってこないな、今戻ればワシの世界にいる隣の自分に会えるかな?
「やっこさんもワシを待っているみたいだし、一度帰ってみるわ!」と再び装置に乗り込み移動。
助手に
「おい!あいつ、いやワシ、いや、隣の世界のワシはまだいるか?」
「残念!たった今発たれました」
「そっか、ならすぐ追いかけよう!お前は今度こそちゃんと引き止めて置くように!」
「はい!」
「あいつは?」
「あのー、今し方。。。」
「よし、すぐ帰るぞ!」
「いいえ、博士、引き止めて置くように言われていますので」
「・・・」。
こんなやり取りを何回か繰り返していたが、なかなか隣の世界の自分に会うことが出来ない。
(やはり、世界線が近いと行動も似たものになってしまうな。自分に会うのはこの装置では難しいか)と
諦めかけていると、助手がモジモジして、なにやら物言いたそうな顔で後ろ手に近づいてきた。
「あのー、博士、実は。これが外れてましたです。」
と、その手に握られたものは、装置のコンセント。(完)
ごくフツーの誰かが
ごくフツーに思い付くような
ごくフツーの面白さを
ごくフツーに形にできたら良いな
と思っています。どうぞよろしく。