表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

愛情

作者: s

大きな扉を前に立った時、隣に立つ君が私の腕にそっと手を添えました。


将来、パパのお嫁さんになる!


君がそう言っていたのはずいぶん昔の話。


あの頃はそれはもう可愛くて、君のことを溺愛していました。


いつからだろう。


家に帰ってきても、君と話をしなくなったのは。


いつからだろう。


君と食事をしなくなったのは。


やがて君は大人になり、私たちの手から飛び立って行きましたね。


嬉しいような、悲しいような気持ちでいっぱいでした。


君がいなくなった家はなんだか元気がない。


それでも、君の話はよく出ていました。


あの子は元気でやっているのだろうか。


風邪などひいていないだろうか。


周りの人と上手くやっているのだろうか。


君への心配は尽きません。


ある日、お母さんがなんだかソワソワしていました。


その理由を訪ねる前に家のチャイムがなり、君が現れました。


1人の男性を連れて。


あぁついに。


娘を持つ者として、通るだろう道なのは分かっていました。


君は、本当に私たちの腕の中から巣立っていってしまったのですね。


少し寂しい思いでした。


お父さん。


もうパパとは呼んでくれない君は、照れ臭そうに笑いながら言いました。


他の人のお嫁さんになってごめんね、と。


君はもう小さかったあの頃の女の子ではなく、いろんなことを経験した女性なのだと思いました。


扉が開いた先の長いような短いような道を歩けば、この添えられている手は離れてしまう。


君を1番愛しているのは私だと思っているが、この道を歩き終えた時にはこの座を開け渡そう。


道が終わる先で待っている、君よりも緊張している君が1番愛した男に。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ