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恋人交換制度!?学校のアイドルたちが俺に彼女交換を申し込んでくる件  作者: ponshiro
第1章 私と恋人になりませんか?【導入】
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第9話 決意表明

 その後、俺達はシャッフルされたカップル同士で仲良く夕御飯を食べたり、デュエットをしたり、他のカップルがデュエットしている間に一緒に軽く部屋を抜け出して外で軽く話したり、そんなことをしながら比較的リアリティのある模擬恋人交換をしてみた。



 一部リアルにギスってるカップルもいて色々な意味でリアリティある交換だった。何をしてもイケメンにしか見えないし、いつも余裕アリアリの大村だったというのにあんなにたじたじで面白い大村を見たのは初めてだったな。



 俺にとっては仮のものがさらに仮に変わっただけだから、恋人が交換されたというより、親友が交換されたというニュアンスの方が近くて、一番よく話す相手が小梢から寺本に変わっただけ、そういう感じだった。



 そう、俺にとって恋人交換制度っていうのは元からこういうイメージだった。逆にこれ以外のイメージはなかったからイメージ通りではあったんだけれどこれはこれでロールプレイングゲームとかアドベンチャーゲームをしてるみたいで普通に楽しかった。

 夕食も俺らだけはあーんして食べさせあったりしてイチャイチャカップルになり切って思いっきり楽しんでいた。




 9時ちょっと前くらいのところでカラオケ屋を出たのだけれど、大村たちと4人がもう40ポイントも貯まっていたおかげで4000円分まで割引になるらしい。

 夕食もとったのにカラオケ代は1人1~200円とかで済むとは、これがポイントの特典か…。確かにこうなると他のポイント高いカップルと行動したり組んだりするのはタダで行ける幅も広がるから一つ合理的な作戦になるな。なるほど。




 模擬シャッフルはカラオケで終わるかと思ったけれど、寺本がもうちょっと延長したい言い出したせいで、寮までの帰り道まで延長することになった。



 もう夜8時過ぎているから恋人と離れていても寮へと向かって帰っている限りシステムは介入してこない。



 これもこうして寺本たちと実験してみなかったら気付かなかったシステムの穴だ。こういうのを探すのは俺的には結構楽しい。



 小梢も乗り気でどこまで俺と離れられるのか試しますとか言って駆け出していった。


 そして走って帰っていく小梢を「夜だからあぶないよ」とか言いながら走って追いかけるお兄ちゃんを見ていると思わず噴き出してしまう。

 大村よ、これで少しでも俺の苦労をわかってもらえるとありがたい。



 しかも小梢は「大村先輩、早くー♪こっちですよー!」とか言って一見無邪気にいちゃつく可愛い彼女を演じているけれど、俺にはアイツのアレが早く寮に帰ってゲームやりたいだけの行動だということがわかっていた。

 そう、自分のわがままを許してくれそうな相手には甘える振りしてとことん利用する小悪魔なんだ、アイツは。



 周囲を見回すと滝川と水無瀬の2人もいなくなっていて完全に寺本と2人っきりの状況が成立していた。アイツらはアイツらで別のルートで帰ったんだろうか?なんとなく視線を感じる気がしないでもないが、気のせいだろう。


 俺は寺本とゆっくり歩きながら、俺の制度に対する考え方や俺と小梢のこれまでの在り方、今日のデートや今後の付き合い方を話した。俺にとってはこの制度は親友交換としか思えないこと、今日やってみてスゲー楽しかったこと、何となく自分の世界が広がったような気がしたことなんかを寺本に話した。


 それは紛れもなく本心だった。

 寺本とは以前も遊んだことがある友達関係にあったけれど、その時ですらここまでざっくばらんに話せる間柄ではなかった。けれど、今日、模擬とはいえ互に恋人になり切ってみると、全然違った。例えば寺本は寺本で歌う曲を俺に合わせて誰もが知ってるようなアニソンにしてくれたりしたし、俺も俺で寺本が好きなバラードを歌ったりもした。そういう普段はしない歩み寄りがあった。


 俺がバラードを歌うと俺にバラードは似合わなさすぎると言って大爆笑されたけれども、寺本はそんな感じで楽しそうに笑って喜んでくれていて、俺にはそれが嬉しかった。

 きっとこういう経験は交換してみないと気付かなかっただろうな。



  そんなことを話したら寺本は笑っていた。




「ぷっあははは!兼平って、マジ面白いね!そんなこと言うの兼平くらいだよ!おもろー!」



「そうそれ!俺、寺本がそんな風に可愛く笑うのとか全然知らなくてさ。

 つか、つい昨日まではいつも水無瀬にベッタリでうるさそーなギャルって印象しかなかったんだぜ?

 それがこれが今、俺の彼女なんだと思ったりするとさ、全然ちげーんだよ。寺本って何気ないところで俺に自然に波長合わせてくれたりするし、すげー気を遣えるのにそうは全然見せないところとかあってさ、優しくて良い子なんだなってよくわかった。

 あとそんな優しくて可愛い彼女がさ、俺のやることで楽しそうに笑ってくれると、すげー嬉しいし、寺本ってすげー可愛かったんだなって思い知らされたわ。寺本、お前、すげー可愛いよ。最高の彼女だよ」



「んな、ななななな」



「ん?どうした?俺なんか変なこと言ったか?」



 俺の言葉に寺本は顔を真っ赤にして目を若干右下に逸らしてそわそわしている。



「う、ううん!なんでもないっ!!兼平クサイこと言いすぎ!もうクサイこというの禁止!!

 うっ…私ってばいかんだろ…よりによってももの想い人をだなんて…」



「おい、寺本…?本当に大丈夫か?いや、確かにちょっと恥ずかしいこと言ったかもしれないな。

 ワリ―。ははは」



「……私だって知らなかったよ。兼平がそんな風にカッコいいところあっただなんて…。

 それに旭まで気づいてくれないところまで気づいちゃうなんて…。こりゃ前にコイツでいいの?、とかももに言っちゃったこと謝んないとなー。」



「ん?なんだ?」



 寺本はさっきから俺と会話しながら、その間に他人には全く聞こえないような小声でぼそぼそ独り言を挟んでいる。

 俺には内容までは聞こえなかったけれど、悪いことを言われているわけではないことは雰囲気で分かるから何を言っているのかは特に追及はしなかった。



「ううん、いいの!兼平はなんでも楽しもうとするんだね!だからこれまではクラスのみんなと一緒にいたりすると一部の冷めた層と温度差が出るからすれ違いが起こって、結局誰も近づかなくなってたんだ。

 兼平は多分、大勢いる中の1人だと浮いちゃうけど、1対1だとすごく安心感あって、頼れて、任せられる、そういう奴なんだなって私も良く分かった!」


「おおぅ!?なんだよ、いきなり褒められるとテレるんだが…。

 まぁとにかく俺みたいなのもいるしさ、寺本自身も俺みたいに割り切って親友交換だと思って付き合ってみると案外来週から楽しめるかもしれねーぜ?」



「……。

 ああ、やっぱり知ってたんだ。私が来週の恋人交換で落ち込んでたこと…」



「スマン。滝川から聞いた」



「そっか…。うん、そうなの。

 私、ホントに来週が憂鬱で憂鬱でたまらなかった。

 旭と2人でいるとさ、つい暗い話も多くなっちゃってさ。この前なんか、俺達別れようか?とか言ってきたんだよ?

 私も旭もお互い大好きなのになんで別れなきゃいけないの?って思った。こんな制度なくなっちゃえばいいのにって、本気で思った」


 そういう寺本はうつむいて本気で悔しそうな顔をしていた。俺は今まで認識が甘かったのかもしれないな。本当に真剣に付き合っている連中からするとそういうふうに受け取られる可能性があるシステムってわけだ。


 けれど、寺本は次の瞬間には顔を上げて眩しいような笑顔で笑った。



「けど違ったんだね。兼平のおかげで私、この制度の見方が変わったかも。こういう出会いもあるんだってこと。

 この制度はきっと、もっと優しい制度だったんだってわかった。私を心配してくれる人、私の仲間でいてくれる人、大切な人、それが誰なのかわからせてくれるし、そういう人を増やしてくれるそういう制度なんだなってわかった。

 親友交換制度かぁ…いいねそれ!私もそれでがんばる!」


 どうやら俺の受け止め方や俺なりのやり方ってやつを実践すればうまくいくかもしれないということがわかったらしい。なんにしても希望が見えてきたのは良いことだ。


「おう、がんばれ!」


 俺も笑顔で寺本に応えることにした。と、ちょうどそのとき、いつの間にか寮の目の前まできていたらしい。



「あっ、話してたらもう寮に着いちゃったね。

 兼平、ちょっとだったけど兼平が彼氏で楽しかったよ!ありがとね!」


「ああ、俺も楽しかった!ありがとな!」


「ふふ。私ばっかり良いようにやられちゃったのは若干悔しかったけどね!

 まぁそれはあとで旭に目いっぱい甘えることで解消しようかなっ!」



 寮の前でお互いに軽めの別れの挨拶をしたけれど、なんとなく寺本は俺とは違うところに一瞬だけ目線を向けてこちらに向き直ってニヤリと笑って「あっ、そうだ」と突然最後にとんでもない質問をしてきた。



「ねぇ、最後に一つだけ聞いて良い?

 私、兼平っててっきり、もものこと好きなんだと思ってた。 

 あなたたち1学期は一番仲良かったし。違うの?」


 寺本のやつ、別れ際になんてことを聞いてきやがるんだ!

 俺は突然不意打ち気味に繰り出されたクリティカルヒットに激しく動揺させられたせいで、俺の後ろもガサガサとなんだか騒がしくなってたことにも気が付きようがなかった。



「え、えっとーそれはそのーなんといいますかー。

 大変難しーーい問題がございましてぇ…。好きといわれても好きにもレベルというものがございましてですねぇ…」


「あはは!兼平おもろ!動揺しすぎでしょ!何その下手くそな政治家ww

 じゃあ神崎ちゃんと、ももだったらどっちが好き?」



「ブッ!お前、それあまりにもダイレクトな質問だな!

 ・・・・・。

 けど、その問題の答えだけど、わからんというのが正直なところだ。

 ホントに自分でもよくわからないんだよ…」


「そっかそっか。私はなんとなくわかったよ。

 それに答えが出ないってことは兼平はきっとまだ本当の恋ってやつをしたことないんだね!

 私とか可愛い女の子にアタックされちゃうとドキッとするけど、それって恋の一歩手前、本気になる一歩手前って感じな気がする」


「!?

 あ、いや…確かにそうかもしれないな。

 そっか。だからだったのか…。俺があのときあっさり水無瀬から身を引けたのもそういうことか…。


 寺本、俺もこの制度での目標が見つかったわ!

 俺、恋ってやつをしてみたいと思う。沢山の親友を作りながらさ、その中から一人、仮じゃなくて本物の恋人を作りたいってそう思うよ」



「うん!良い意気込みだね!良いじゃん!本物のリア充目指しちゃおー!

 ただ、兼平よ!

 もし私と交換されちゃったときは私もその候補に入れてくれるのかな?」


 寺本は冗談だとは思うけれども、思わせぶりなセリフを吐いて、顔をこちらに突き出すように前かがみで下から覗きこむように俺の様子を窺ってきた。その動作は結構あざとい。やっぱこいつも小悪魔系か。



「ば、ばか!

 そ、そんなの…そんなのわかんねーよ!!」



「うふふ!わかんないって言ってくれてありがと!

 けど、私は旭一筋だからだーめ♥ごめんね。

 さ、そろそろホントに戻らないとダメな時間だ!じゃね!」


「ちぇっ…結局俺の方がやられてるじゃねーか。誘い込まれた上に振られたし。」



 しかし、それも含めて楽しかった。寺本由依は一途で可愛い優しい良い子だとよく分かった。


「今日は楽しかった。()()じゃな!」



「ちょっ!?

 ふふ。まったく兼平は結構負けず嫌いなんだね。

 ()()、またね!」







 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「と、いうことらしいよ?もも、良かったね?」


「うぅぅ…なんか釈然としない上、由依ばっかりポイント稼いだだけな気がするぅ…」


「そ、そ、そんなことない、わよ?」


「おい、由依ぃぃぃーー!

 なんか兼平と良い雰囲気過ぎなかったか?

 俺、由依が取られちゃうんじゃないかってマジで心配になってきたんだが…」


「バカね。そんなわけないでしょ!だいたい、私と兼平くっつけたのも旭の発案なんでしょ。

 私のこといつも見守ってくれてありがとね。旭、大好きよ♥」



「お、おお!

 由依ーーー!俺も大好きだーー!」



「あはは。由依たちは仲良さそうで羨ましいなぁー」



「確かにももの方は大変そう。ほんのちょっとだったけど私、兼平と一緒にいて凄く安心できた。

 なんかアイツ、私といても楽しそうにしてて居場所をくれるっていうのかな、そんな感じで居心地よさが凄い。長く一緒にいたら結構ヤバかったかも。

 兼平、たぶん、来週からすっごいモテるんじゃないかな。趣味がアレなだけで、スペックは普通にめちゃくちゃ高いじゃん。勉強なんてそもそも1番だし。1週間もじっくり中身見られたら結構ライバル出てきちゃうんじゃないかなー」



「ちょっと由依ーー!私、ただでさえ自信ないのにぃ…」



「あはは。ももってば1学期末にアイツにエントリーしたのに成立せずで落ち込んでたもんねー。まぁそこで取り消しちゃったのが、ももらしいチキンぷりだったねー。たぶんアイツ、ももが普通に告ってたらコロっといってただろうに。そもそも誰もアイツにエントリーしなかったみたいだし」



「そういうのはヤなの!お互い好きって状態で成立したいのっ!」



「もう、変なところで理想が高いんだから…。それが仇にならなきゃいーけどね。

 特に今日カラオケでケンカしたあの子なんてかなりヤバいよー。部活の絆パワーとかもあるし」



「うっ…。け、けど絆なら私だって負けてないもん!ぐすん…」



「はいはい、がんばれー

 私はいつでも、ももの味方だからねー」

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