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恋人交換制度!?学校のアイドルたちが俺に彼女交換を申し込んでくる件  作者: ponshiro
第2章 ねぇ、私のこと・・・【初回交換編】
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第21話 relations①

 さすがの法条も小梢にこんな好き放題言われて怒ったのだろうか?

 すまん、うちの小梢は戦闘民族なんだ。

 俺がそっと法条の方に近寄って様子を見て俺は驚愕した。






 法条の足元にポツ、ポツと雫がこぼれ落ちたからだ。





 法条は声も上げずに泣いていた。






 法条は俺が声をかけようとしたらそのまま俺を振り切って走り出して、部屋を出ていった。

 一瞬だけだが、すれ違い様に見えた横顔からは確かに目から涙がこぼれ落ちていた。





「ほ、法条っ!」




 俺はすぐに法条を追いかけた。





「えっ?どうしたの?」



 たった今、法条と入れ違いで滝川と部屋に入ってきた水無瀬は一体何事かと驚く。けれど説明している場合じゃない。



 ピッ…プシューーーー!




 くっ…。泣いている法条を見て動揺した俺は1秒程度だったかもしれないけれど、追いかけるのが遅れてしまった。



 この部屋の扉のギミックは楽しいが、一度閉まると開くまで時間がかかるからこんな時には余計な演出だ。




 だが、俺は扉が開くと同時に部屋から飛び出たけれど、すでに通路に法条の姿はなかった。



「クソッ!!法条…どこ行ったんだよ…」












 ****************














 どうしてこうなっちゃったんだろう…。私は強がっているのにももういい加減限界がきたみたいだ。


 ずっと楽しみにしてたあっくんとのデートなのにどうしてこんなにうまくいかないんだろう。



 私とあっくんの間にはいつも邪魔ばかり…。

 最初で一番の障害はお父さんの会社。あんなに突然引っ越しになっちゃって再会の約束すらできなかった。あっくんともう一度会いたいという願いは8年も待たされることになった。




 ようやく願いが叶ってあっくんにもう一度会えたというのに、今度はモモと神崎小梢が私の前に立ちはだかる。



 すっごく、すっごく今日を楽しみにしてたのに…。



 あんなの見せられて平気でいられるわけがないよ…。




 あっくんに会えるまで8年も待った。

 8年間ずっと大好きだったのに…。



 8年間もずっともっともっと可愛くなれるよう、あの人に好きになってもらえるよう、がんばったのに…。




 私が頑張れば、頑張れるだけ、好きでいれば、好きでいるだけ、あっくんも振りむいてくれる、好きになってくれる、そう思ってこれまで頑張ってきたし我慢もしてきた。






 けど、そんなのは幻想だった。勝手な私の片思い。一方的な想い。



 私もついさっきまでは神崎小梢だろうがモモだろうが絶対負けないって思ってた。




 あっくんに彼女ができたといってもつい先週の話だ。まだまだ挽回は可能、そう思ってた。

 けど、神崎小梢とあっくんの付き合ってる姿をこの目で見て、わかってしまったんだ。




 あっくんはすっかりとあの後輩彼女が大好きになってるってことが…。


 楽しそうにイチャイチャする2人を見て、私なんかが入り込む余地なんてまるでないってことが…。


 私に勝ち目はもうないってことが…。



 全部はっきりとわかってしまった。









 それに、あの子、ホントにまっすぐで強い。自分が絶対一番を取ってやるんだって凄い自信に満ちてる。




 私はあの子に比べたら全然だ。もちろん、私にだって負けたくないって気持ちもあるし、あっくんへの想いだったら今でもあの子に負けてないって思ってる。

 けど、私はあんな風には戦えないし、あんな風には振る舞えない。



 私はさっき、あの子がスクリーンに映ったとき、一瞬だけあっくんの方を見た。あっくんは苦笑してたけど、あの子の姿が見れて嬉しそうだった。



 私にはそれがショックだった。私の方は8年も待ったし、再会できてずごく嬉しかったというのに、あっくんは全然気づく様子もない。私が交換彼女になっても昨日は全然嬉しそうにしてなかった。




 そんなあっくんが、あの子に照れてる姿を見てると胸が張り裂けそうになる。



 そして、チキンな私は、嬉しそうなあっくんを邪魔してまで、あっくんを独り占めするようなことをする勇気もなかった。



 あっくんが嬉しそうならと、あっくんが幸せならそれでいい、そう思って…

 再会くらいは邪魔しないであげようと思って、小坂くんを連れてあっくんと離れて室内の探索を始めたんだ。



 あの子の言う通り、私と小坂くんのやり取りは演技。でも、ちょっと誤解がある。



 私はヲタクギミックが楽しいと思うのは本心からだった。こんなことであっくんの気を引こうなんて思ってない。楽しんでる私可愛いでしょなんて演技はしてない。


 そもそも私はあの子を無視してない。できるわけがない。

 むしろ、無視できないからこそ直接は見ていたくなかっただけ。そしてあっくんが私に構わずあの子に会えるようにそうしただけ。私の精一杯の強がりでもあった。



 けれど、私がそうやって精一杯の強がりをしてる間もあの2人はすごく仲良さそうだった。



 そうしてショックを受けているところにあの子の宣戦布告、あっくんを私には渡さない宣言だった。

 ラブラブな2人の姿にこれ以上ないくらいに敗北感を既に味わっていたというのに、更にあんなに真っすぐな想いをぶつけられた私はもう限界だった。あんなのに勝てるわけがなかった…。



 私はこのままずっとどこか遠くに逃げてしまいたい、そんな気持ちだった。


 けれど、私にはそれすらもできなかった。


 私は自分はどんなに傷ついても構わないけれど、あっくんだけは傷つけたくない。そこだけはみじめな私に最後に残ったちっぽけなプライドだった。



 だって私がこのまま遠くに逃げたら私だけじゃなくあっくんがペナルティを受けてしまうから…。


 私にはあっくんを傷つけるようなことをする勇気すらなかったのだ。



 そんな私ができたことは司令室のすぐ隣の倉庫に入って体育座りで身を隠すことだけだった。






 あっくんには私を見つけられないかもしれないし、そもそも私を探さずあのままあの子とイチャイチャ楽しく過ごしてるかもしれない。



 …ずっと楽しみにしてたデートなのに最悪な気分だ。くすん…。





 私は体育座りで静かに泣きながら昔を思い出していた。ブラボー中野店で2人で夜まで一緒にやったアイドルガールマスター。通称アガマス。

 あのゲームセンターにはちっちゃな2人用カラオケボックスも整備されてて、100円で20分歌い放題とかだったから私たちはアガマスをやった後は、ちっちゃなカラオケボックスで熱唱したりもした。



 その中でも私が好きだった曲、relationshipの歌詞を思い出す。

 あの頃は意味も分からず聞いて入たけど、今はわかる。



 今の私の気分とそっくりだ。



 ――この想いが遊びだったら、割り切れるのに――

 ――あの子より私が好きなら、この手を握って。壊れるくらいに大事にして――



 私は幸せだった過去を思い出しながら誰も見ていないこの暗闇の中でひっそりと涙を零した。



 今は思い出の彼方にしかいない私の想い人が私の手をギュッと握ってくれる、そんなもう決して叶わない願いを夢見ながら…。










 ****************





「マチルダさん!今、女の子が出ていかなかったっ!?」



「少佐?どうしました?

 い、いえここからは誰も出入りしてませんけど?」



「そうですか…。スマホの警報も鳴らないし、もしかしてアイツ…。

 マチルダさん、悪いんだけど、こっちの内部側のカメラ映像を全てオンにしてくれないかな」



「了解いたしました。どうぞ!」



「ありがとうございます。

 法条…どこだ…?」



 警報が鳴らないということは法条は間違いなく俺の近くにいる。


 俺はわずかな手がかりすらも見逃さないよう、隈なく監視カメラの画像を確認した。



 けれど、隈なく確認するまでもなかった。あんなに目立つ金色の髪は他にいない。



 法条は倉庫のドアに寄りかかって体育座りをしていた。顔は腕で覆っていてみえないけれど、間違いなく法条だ。



 俺はさっそく迎えに行こうと思ったが、一つ問題があった。法条は内開き型の倉庫のドアに寄りかかっているわけで、このままじゃ開きそうにない。



「マチルダさん、あの倉庫って他に入口あったりしないですか?」



「あの倉庫は表のカフェ側でも使ってますから、表側にも扉はありますよ。だから向こう側に回ってもらえれば。

 あの、少佐、いえ、秋人くん。女の子泣かせちゃダメですよ」



「はい。全く面目ないです。

 なので今から迎えに行ってきます。

 そうだ、アレ、もらえますか?」


「アレ、ですね!もちろんです♪

 あの様子ですと気持ちが落ち着くまでもうちょっとだけ一人で泣かせてあげた方が良いと思いますし、出来上がるまで他の皆さんに説明しながら待っててください」



「そうですね。

 俺はこの後、あの子と出掛けることにします。

 他の連中はここに置いていきますけど、アイツらのことよろしくお願いします」



「畏まりました♪」





 ・・・・・・・・・・・・・







 準備を終えた俺はこっそりと倉庫へ入室するとス●ーク並のスニーキング力でお目当ての人物へと近づいた。

 目標は顔を伏せているからこちらに全然気が付く様子はない。



 俺はそっと彼女の隣に腰かける。そして―――






 ・・・・・・・・・・・・・・・・




 その少し前、俺は司令室に立ち寄っていた。





「か、兼平くん!かえちゃん見つかった?大丈夫!?」



「ああ、見つかったよ。今から迎えにいってくる」



「そっか良かった!」



 俺が水無瀬に事情を説明すると、小梢が気まずそうな表情をしていた。



「小梢、お前が嫉妬してくれたのは嬉しいけどさっきのはちょっと言い過ぎだったよ。

 それに本恋人が交換恋人に干渉するのはNGだろ。直接的ではないけど、結構ギリギリだったよ、今のは。

 まぁ俺も調子に乗ってアイツの前でお前といちゃついちゃったし、俺も悪かった。猛省だ」



「うぅ…すみません、せんぱい。そのとおりでした。ちょっとやり過ぎました…。


 せんぱい、私、凄く勘が良いんです。

 きっとあの人はせんぱいを私から奪い取れちゃう、それも私とは全然違うやり方、正反対のやり方で…。私、それがわかっちゃったからちょっとつっかかっちゃいました…」



 小梢はそんなことを告白してうつむく。小梢は小梢でしっかりと反省しているようだった。

 まったく良い子だな、小梢も。



「小梢、お前、それは誤解だよ。

 一つ目は、女の子がみんな小梢みたいにコロコロ男を手玉に取れる奴だと思うなよ?お前は特殊というか、小悪魔中の小悪魔だからな。お前の目からは純粋な天使すら小悪魔にみえるだろうよ。他人が蛇に見える奴が蛇なんだってやつだ。

 いずれにしても法条はお前とは全然違う。ちょっと、いや大分不器用なんだ。アイツはいつもなんでも遠回りなんだよ。俺はそのことを良く知ってる。()()()()


 それに二つ目には、俺はお前のものだということだ。この気持ちはそう簡単に変わるものじゃない」



「せんぱい…それもう完全にフラグ…」



「兼平くん…」



「とりあえず俺はアイツを迎えに行ってくる。

 水無瀬に小坂。すまんが、俺らはここから別行動する。さっきも言ったけれど、ここは自由に使ってくれて良いし、好きに食べたり飲んだり、ゆっくりしていってくれ。滝川と小梢もだ。

 小梢もいいよな?」



「はい。今の私はせんぱいの彼女じゃありませんし、せんぱいを縛る権利はありません。

 それに私も思わぬ強敵出現に当初の目的をちょっと忘れてたみたいです。

 せんぱい、法条先輩のこと、ちゃんと仲直りして楽しませてあげてくださいね♪」



「ああ。

 小梢、わかってくれてありがとな」



「はい♪」



「か、兼平、なんだかよくわからないが、がんばれ!俺も少しは神崎の手綱が握れれば……いや無理か」



 滝川マジでドンマイ。



「兼平くん、かえちゃんのことよろしくね。

 小坂くんは私の方できっちりと教育しておくから安心して!」



「あ、ああ。「きっちりと教育」とやらの中身はなんか危なそうだから聞かないことにしておくよ。

 あとはよろしく」



「兼平氏、かえで様を頼みます。

 拙者、あんなかえで様は初めて見ました。

 拙者はすべてを把握しきれているわけではありませんが、お二人を見て何となく察しました。


 かえで様は今まで誰かのために頑張ってこられたことは我々親衛隊全員気づいております。我々はそんなひたむきなかえで様に心動かされてきたのですから…。

 兼平氏、どうかかえで様をお願いいたします!」



「もちろんだ!

 だが、お前はお前で鬼教官の下でがんばってくれ」



「かしこまった!

 それに拙者、このお方の隠れドSな雰囲気にちょっとだけでござるが惹かれてきてるでござる…」



「小坂くん?何を言ってるのかな?

まずはその拙者とかござるとかヘンタイチックなこととか言うのを止めるところからはじめよっか♪ねっ!」



「ヒィ!ゾ、ゾクゾクしてくるでござる。水無瀬殿、拙者の足を踏ん付けてる件についてはどういうことでござろうか」



「ん?なぁに?これからそういう気持ち悪いところ直していかないとね!」



「はいでござr……グエっ!」



「た、達者でな…。さて、行くか」












 もう俺の中では法条の正体について察しがついていた。


 昨日のLIMEでの態度や電話での態度、そしてアイドル法条、ちぐはぐで不器用なアイツを見ていると俺の良く知る人物が頭の中にチラつく。



 その上、実際会ってみると俺のことをまるで昔から知っているような態度をしてくるし、俺と全く同じ趣味嗜好のヲタクだし、あの日と同じように泣いてる姿を見せられたら、気付かない方がバカって話だ。



 はぁ…けど俺もここまでかかっちまったのはバカだったな。






 俺は俺の幼馴染の大好物であるたい焼きならぬマチルダさんお手製のカンプラ焼きを手に持って彼女の下へと向かった。



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