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恋人交換制度!?学校のアイドルたちが俺に彼女交換を申し込んでくる件  作者: ponshiro
第2章 ねぇ、私のこと・・・【初回交換編】
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第17話 私の幼馴染と黄金の海

 私にとって幼馴染はあっくん一人しかいない。



 私とあっくんとの出会いは小学校3年生の頃のことだった。



 私の家である法条家は、私が物心つく前に両親が離婚している。私にとって親はお父さん一人だったし、お母さんのお母さんが外国人で外国に住んでいたのもあって、離婚したお母さんは私が幼い頃に外国の実家へ帰ってしまい、もう会えなくなってしまったようだ。



 お父さんは2人の子どもを育てるために家政婦さんとか雇ったりしていたけれど、その分仕事が忙しくて中々私に構ってはくれなかった。



 これだけ説明すると大体みんな私に可哀想だねと言う。けれど、私はそこまで寂しくはなかった。そもそもお母さんがいないのは当たり前だったし、代わりに家政婦さんがいたし、忙しいお父さんの代わりも4つ上のお兄ちゃんがしてくれて、お兄ちゃんは私を目いっぱい甘やかしてくれたからだ。



 けれど、反対に4つも上だったお兄ちゃんはお母さんのことも良く覚えていたからお母さんが出て行ったショックは大きかったみたいだ。お兄ちゃんは一時期塞ぎこんでいたようだけれど、あるとき寂しさを紛らわせるためにみたアニメからヲタク文化というものを知って、どんどんとヲタク文化にハマっていった。


 そんなお兄ちゃんは傍らで私の面倒もしっかり見てくれていたから、私を自分の行きたいイベントにも一緒に連れて行くようになった。



 お兄ちゃんは私を「ふうちゃん」と呼んでいる。



 私の名前を付けるときに平仮名で「かえで」にするか漢字で「楓」にするかお父さんとお母さんで悩んでいたらしく、結局漢字にした場合「法条楓」はあまりにも堅苦しいということでお父さんが最初に主張した平仮名案が採用されたんだげども、お兄ちゃんやお母さんの中では私の名前はお母さんの当初の案である「楓」という印象らしく、「木の風」という楓の漢字から「ふうちゃん」と呼ぶようになったらしい。

 私はこのお兄ちゃんのあだ名が結構好きだったりする。私にとってホントに大切な人が私を「ふうちゃん」と呼んでくれるという特別感がそう思わせているのかもしれない。



 けれども、お兄ちゃんがはじめて私を連れて行ったヲタクのイベントは、小学三年生の私からすると大人ばっかりで私には少し居心地が悪い空間でもあった。



 あれはサン中野プラザっていう私の昔の家があったところの近くのイベント会場で行われた、通称「ゆかりん」こと「田中ゆかり」っていう結構有名な声優のイベントだった。



 イベント会場は普通のコンサートホールで座席も決まっていて、トークショー自体は皆、席に座って見ていたから私もよくステージが見えて楽しかったんだけれど、途中でライブが始まってから一変した。




 ライブが始まると皆、一斉に立ち上がり始めて歓声をあげ始めた。

 隣のお兄ちゃんも私を置いてきぼりにして拳を振り上げてジャンプしはじめて、完全についていけない展開になったんだ。




「「うおおおおおおおおおおおおお!!

 ゆかりんゆかりん!!宇宙一可愛いよー!!」」



「きゃあ!

 うぅ…見えないよぉ。みんな飛んでて怖いよぉ…。

 お兄ちゃん助けてよぉー」



 周りは大きな大人ばっかりでそれが立ち上がって飛び跳ねてるから全然ライブの様子も見えないし、大音量とそれに合わせて飛び跳ねる人たちの起こすズンズンという振動や狂ったような乱舞を見て私は潰されて死んでしまうんじゃないかと怯えていた。



 そんな私はお兄ちゃんに助けを求めてお兄ちゃんのシャツの裾を掴んだけれど、お兄ちゃんはお兄ちゃんで完全にライブに没頭してしまっていて、両手を振り上げてジャンプをしていたから、すぐに私の手は振りほどかれてしまったし、私にも気づいてくれなかった。



「くすん…やだよぉ…。

 帰りたいよぉ

 助けてよぉ…」



 唐突な孤独感とあまりの怖さについには涙まで溢れてきた。真っ暗でグラグラ揺れるし、怖いし、もう死んじゃうんだと思った私はその場でぼろぼろと泣き始めた。



 とにかく支えが欲しくて私は必死に座席のひじ掛けを掴んで振動に耐えていたんだ。



 けれど、泣いていた私が震えて席のひじ掛けに必死にしがみついて振動に耐えていたら、急にその手を暖かい手が包み込んでくれたんだ。



 私はハッとしてその手の方向、お兄ちゃんとは真逆の隣の方を向いたら、そこには私と同じくらいの男の子がいた。



 私はそれまでお兄ちゃんの方ばかりみていたせいで今まで全然気づかなかったけれど、隣にそんな子がいたこと、このイベントの参加者が大人ばっかりじゃないこととか、私と同じくらいの子供もいることにビックリした。



 その男の子の顔は暗かったからそのときはよく顔が見えなかったけど、優しい顔をしているのだけはわかった。


 男の子は私の耳元でこう囁いた。



「ねぇ、一緒に楽しんでみない?

 俺一人だとちょっと勇気が出なかったんだけど2人ならきっと行けるし」



 私はその男の子がこれから何をする気なのか全然わからなかったけれど、私の左手を包んでくれている暖かい手が私をすごく安心させてくれて、その手を離したくなくてその男の子の提案にコクリと頷いた。



 そしたらその男の子はいきなり私にカンダムとかスター●ォーズに出てくるようなデカいビームサーベルみたいなものを何本も渡してきたんだ。

 今思うとただのペンライトだったんだけど当時の私にはデカいビームサーベルにしか見えなかった。


「すごいでしょ?

 これをぶんぶん振り回して回りみたいにはしゃぐとすっごく楽しいんだよ!」



 私は渡された明るく金色に綺麗に輝くビームサーベルにすっかり魅了されちゃっていた。

 けれど、そんなのも束の間で、彼は呆気にとられる私の手を引っ張って階段を駆け上がって、座席のさらに後ろ、一番後ろのスペースまで連れ出した。


 一番後ろの入り口前のスペースは座席よりも高くなってるおかげで私にもライブの様子が良く見えた。



 舞台にいる田中ゆかりっていう声優さんはトークのときと衣装とかを変えていて、金髪ツインテールですっごく綺麗だった。



 私も実は白人系のクォーターだから地毛は金髪なんだけども、日本で金髪にすると浮くということで黒に染めていた。だから、堂々と金髪にしつつ、ツインテールをぶんぶん振り回すその声優さんがとても眩しかったし、綺麗に見えた。


 それにファンのみんなも私と同じように金色に輝くペンライトを持ってリズムに乗ってぶんぶん振り回していて後ろから見たライブの光景はもの凄く綺麗だった。


「さぁ、ここで一緒に飛び跳ねてぶんぶん振り回そうよ♪」


 男の子は楽しそうな表情をしながら私を促してきた。

 彼はそうは言いながらも私と手を繋いだままだった。私に勇気が湧いたのは彼がそうして手を繋いでいてくれていたからかもしれない。


「さぁ一緒に跳ぶよ!」

 という彼の合図に、私もコクリと頷いて一緒に大ジャンプしてみた。





 彼と一緒に大ジャンプしてビームサーベルを振り回してみたら景色が一変していくのがわかった。






 さっきまでの暗くて怖かった景色が、キラキラと金色に光り輝く海へと変わったんだ。





 私がビームサーベルを前に突き出して金色の光を前へと送ると、皆も同じようにビームサーベルを前に突き出して、金色の光をどんどん前へと送って舞台にいる声優さんに届く。


 舞台の声優さんの足元からは、証明のライトがキラキラ放出されていて、こちらに明るい光が戻ってくる。



 光りと光が重なり合う黄金の海、そんな幻想的な景色に変わったんだ。




「なにこれ…すっごく綺麗ー!!!

 それに気持ちいいーー!!」



「でしょ!!

 俺も一人じゃここに来る勇気がなかったんだけど、キミがいて良かったよ」



 私はその言葉にクスリと笑ってしまった。初対面の女の子とこんな大胆なことができちゃう彼の言葉をそのまんまに信じるほど、私はメルヘンな女の子じゃない。



 私にはその彼の言葉が、泣きながら必死で席にしがみついていた私を見て、そんな私を助けるためについてくれた優しい嘘だとわかっていたけれども、「うん♪」と大きくうなずいて彼と一緒にはしゃいだ。



 それはこれまでの人生で一番楽しい一瞬だった。

 それに繋いだ手から伝わる温もりにすっごくドキドキさせられた。



 胸がドクンドクンってどんどん高鳴っていくのがわかった。もうこのまま破裂しちゃうんじゃないかってくらいに。

 きっとここが明るかったら私はリンゴ以上に真っ赤かな顔をしていたと思う。



 生まれてこれまで男の子にここまで強く手を握られたこともなかった。もうおかしくなった私は、ライブ中に何度も彼に「大好きっ!」って叫びたくなっちゃったりもした。




 ・・・・・・・・・・・




 楽しい時間も長くは続かず、たった1時間のライブが終わって再びトークショーまでのお着替えタイムの休憩に入るとお兄ちゃんが私を探しに歩き回っていた。



「ふうちゃーん?どこー?」


「おにいちゃーん!こっちだよー」


「ふうちゃん!後ろにいたんだね!確かに中央の席は見難かったもんね。ごめんね。

 けど、危ないから勝手に席を離れちゃダメだよ?

 あれ、キミは?」



「俺は隣の席だった兼平秋人です。

 ごめんなさい。俺がこの子を後ろに連れ出しちゃったんです。

 この子は悪くないんです。俺が全部悪いんです」



 私は彼がさっきのに続いてさらに優しい嘘をついてお兄ちゃんから叱られようとする私を庇おうとするのに驚いてすぐに制止をさせた。



「!?そんな!違うよ!

 お兄ちゃん、この人は悪くないよ!私が自分で付いて行ったんだもん!

 それにこの人がずっと手を握ってくれて支えてくれてたから危なくなかったよ!」



「ふふふ。そっか。わかったよ。

 見ず知らずの子のために平気で庇えるなんて秋人くん、キミ、とっても良い子なんだね。

 安心したよ。

 ふうちゃん、良い友だちができて良かったね!」



「うん♪」



「ふうちゃんっていうんだ。

 俺は秋人。よろしくね、ふうちゃん」



「うん、あっくんだね!よろしくね!あっくん!」




 そのときの私はもう幸せいっぱいといった感じだった。

 私はクォーターでちょっと日本人と違うのもあって学校でもすっごく仲が良いっていう友だちはいなかったし、日本人の流儀に従って大人しく空気を読みながらひっそりと生活をしていたから、こんなふうに自由にはしゃげる空間があるなんて、こんなふうに全力で一緒に楽しめる人がいるなんて想像もしていなかった。


 学校じゃいじめられそうになってる私を助けてくれる同い年の子は今まで見たことなかったし、男の子っていうと何かにつけていじめてくる野蛮なイメージしかなかったけれど、顔も知らない私のことをずっと守ってくれた彼だけは私にはすごく特別に思えたんだ。運命の人ってきっと、こういうのを言うんだろうなってそう思った。




 私は彼と手を繋いだまま一緒に席に戻ってトークショーを楽しんだ。



 彼は本当に優しい人だった。この手を離さないでっていう私の心もちゃんとわかってるよ、って言わんばかりに私の手をずっとずっとイベントが終わるその時まで離さないでいてくれたんだから。



 やがてイベントが全部終わって会場が明るくなって私は初めて彼の顔を見た。




 その顔は私の予想通りだった。凄く優しそうな顔をした男の子、ううん、私の理想の王子様だった。



 顔は普通に整っていると思うし、頭も凄く良さそうな感じだった。けど、私はそんなことよりも彼の手の暖かさだったり、優しく私に微笑みかけてくれるその笑顔だったり、優しい嘘をついてまで他人を庇えちゃうその心だったりがとても魅力的に思えた。





 あっくんはイベントが終わって私の手がお兄ちゃんとしっかり繋がれたのを見ると、手を離してお別れの挨拶をしてきた。


「それじゃあ、またどこかの会場で会えたらいいね!」


「ま、待って!

 ま、また会えないかな?」



 私にしてはかなり大胆な発言だったと思う。

 これだけで私があっくんのことを好きだって気持ちが伝わってしまわないかと内心ドキドキしちゃっていた。


 けど、残念ながらそんなことにはならずだった。どうやらそういうことには彼は鈍感らしい。けど、そんなところも私には愛おしく思えた。




 彼はスマホを差し出してきて「じゃあ連絡先を交換しよう」と提案してくれた。けれども私はその提案に少し固まってしまった。


 うちは小学生に携帯を持たせる家庭じゃなかったから携帯は持ってなかったし、そういう理由でしばらく手に入る予定もなかった。



 私が黙り込んでいると、そんな事情すらも頭の良さそうな彼は察してくれたようで代替案を提案してくれた。


「じゃあ、ここ出て、道渡って中野ムーンモールを突っ切ったところに、ウチ…じゃなくて、BDカネコ直営のブラボー中野っていうこの業界じゃ結構有名なゲームセンターがあるんだ!

 BDカネコの直営だから普通のゲームセンターと違って雰囲気も良いし、タバコなんかも分煙してて子供でも入りやすいって思う。

 俺は土日は大体そこで遊んでるから良かったらそこに遊びに来てよ」


「うん!わかった!約束よ!」



 こうして私とあっくんは約束を交わした。

 そのおかげで土日はあっくんと一緒に仲良くヲタクの町である中野で遊ぶようになり、私は彼とお兄ちゃんの2人掛かりによってどっぷりとヲタクの世界にハマっていった。



 彼が金髪ツインテールのアイドル声優、ゆかりんこと田中ゆかりが大好きだって知って、私もゆかりんが大好きになったりもした。


 今では私はあっくんの影響を受けて、周りの視線を気にしてわざわざ髪の毛を黒に染めるのを止めて堂々と地毛の金髪を晒している。

 それだけじゃない。あっくんがアイドル声優のゆかりんが大好きなのはよーく知っているから、私もあっくんに好きになってもらえるよう、ゆかりんみたいに明るい女の子になろうって努力もした。その結果が今のアイドルバージョンの私だ。まぁ彼には全然気づいてもらえなかったからこの作戦は完全に失敗だったのだけれどもねっ!



 それはおいておいて、あっくんと私の別れについてもお話ししておこうと思う。



 私は大好きな人と毎週デートできて、すごく幸せな日々が続いたんだけれど、携帯を持たない私にとって彼とのつながりは中野のゲームセンター、ブラボー中野店だけだった。


 幸せな生活も長くは続かなくて、私のお父さんが突然会社から転勤を言い渡されて、それもたったの三日で転勤しなければならないことになって、急いで荷物とかを片付けたり転校の手続とかしている内に私は彼にさよならも言えないまま、遠い名古屋に引っ越すことになったんだ。


 そんな私は高校こそは全寮制の東京の高校に通おうとして国立である今の高校に進学したのだけれど、東京に来てからブラボー中野店に行ってみたものの、何度通っても彼には会えなかった。



 私は激しく落ち込んだ。運命の人だったのにこんなことあるのって?



 けれど、それは私の勘違いだった。


 あっくんは間違いなく私にとって運命の人だった。だってあっくんはすぐ側にいてくれていたんだから。



 私は1年の途中で異変に気が付いた。



 それは私の引っ越し先の名古屋の小学校で知り合った水無瀬百々奈。

 モモは私が散々あっくんの自慢をした相手でもあった。まぁそのせいで変にアイツの理想が高くなってしまって、中学でも私と並んで何人もの男子に告白されたのに全部お断りしていた。


 同じ高校に進学してからもそれは変わらずで、あれは間違いなく行き遅れるタイプだと私は思っていたのだけれど、ある時を境に、あのモモがどうやら同じクラスの冴えない男子に夢中になっているのではないかという情報が女の子ネットワークで流れてきたんだ。



 私には信じられなかった。あんなに理想が高くてもはやあっくんレベルに優しくてカッコよくて夢に向かって頑張ってる人以外は一切受け付けないといった様子だったあのモモが夢中になるなんて一体どんな男なのかと見に行って私は固まった。



 賢そうでスマートで何よりあの優しそうな顔は見間違いようがなかった。


「あ、あっくんだ…。

 こんなところにあっくんが…。やっぱり運命の人だったんだっ!


 って、モモのヤツ…よりによってそこなの!?あの泥棒猫っ!!」



 私はアイツにあっくんの自慢をしたことを激しく後悔した。

 もちろん、モモが本物のあっくんを見て幻滅する可能性だって十分あっただろうけど、そうはならなかった。それもそのはず。なんたってあっくんはたった1時間2人っきりで一緒にいただけで私をここまであっくん大好きにさせちゃったんだから。

 側にいたときの安心感だったり、あっくんが持つ本当の意味のやさしさだったりはきっとただのクラスメイトや友人関係じゃ気づけないのかもしれないけれど、1時間だけでも二人っきりになったらはっきりわかっちゃう、あっくんはそういう人だ。

 モモもあっくんと一緒に過ごしてみてはっきりとそれがわかってしまったらしい。



 そんでもって、あっくんはあっくんで既にこの学校でも有名になりつつある私には全然気づいていない様子だ。


 まぁ私はあの頃の黒髪から金髪に変わっているから気づかないのも無理はないかもしれない。



 けれど、問題なのはむしろもう一人の学園アイドルと呼ばれていたモモに夢中になりかけていることだった。モモめぇーー!私とモモの関係が険悪になったのは、これ以外の他に何でもない。いや、険悪というのはちょっと違う。今でもそれなりに仲の良い昔からの友人であることは間違いない。

 むしろ私たちの関係を表すならライバル。

 アイツはあっくんが私の大事な運命の人で、初恋の人で、私がこの東京の学校を受験した理由でもあることを全部わかりながら私からあっくんを奪ってやろうという挑戦状を叩きつけてきていたんだ。別にそのこと自体は嫌じゃない。むしろあっくんの良さに気がつくなんてさすがはモモだと認めてもいる。


 私はモモの挑戦状に上等だと受けてたった。



 私はあのモモからあっくんの注目を奪い返すために、あっくんに私に気づいてもらうために、あっくんが好きな「ゆかりん」と同じ金髪ツインテールのアイドルとしてこの学校で有名になってやろうと心に決めたんだ。


 あと、全然私に気づいてくれないあっくんに私はちょっと怒ってもいた。



 そんな私のほんの些細なプライドが邪魔して素直に打ち明けることをさせてくれなくて今ではこんな取返しのつかないことになってしまったというわけだ。


 あいにく、モモも夢見がちで、これまで男子との交際経験0の純情ちゃんだけあって、思わせぶりなことはしながらも自分からは決していかないというチキンでもあったから、あっくんに振り向いてもらうには至っていない。


 今の私にとっては敵はモモというより、私たちがそうやってお互い回りくどいことやってる間に、あっくんの魅力にいち早く気づいた上、最短ルートで攻略まで完了しちゃったというとんでもない最速攻略少女の方だ。



 モモもそれは同じなようで、今のモモのライバルも私じゃなくてどうやらあの攻略少女と捉えているらしい。


 けれどあの攻略少女も全く隙がないわけじゃない。というかあの攻略体質がまんま弱点になっていて、こんな時期にあっくんと付き合い出すだなんて、私たちともきっちり白黒つけないと気が済まないようだ。


 あっくんを好きになる人は私を含めて負けず嫌いのそういうタイプが多いみたいだ。そっちがその気なら私も容赦するつもりはない。なんたって、あっくんを好きだった期間は私がこの中では最長なんだから。


 私は幼馴染は負けフラグとかいうアニメ業界の定番も良く知っているから絶対に私が「ふうちゃん」であることは私が勝利するその瞬間まで悟らせないようにしようと思う。


 昨日はあっくんが交換恋人として選ばれて、運命の赤い糸を確信しちゃったせいで舞い上がってつい全部話しちゃいそうになってしまったけれど、もうそんなミスはしない!



 あっくん、大好きよ。


 だから絶対、モモにもあの攻略娘にも負けないんだからっ!

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