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恋人交換制度!?学校のアイドルたちが俺に彼女交換を申し込んでくる件  作者: ponshiro
第2章 ねぇ、私のこと・・・【初回交換編】
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第16話 対抗意識

 そうこうしていると水無瀬が女子寮から出てきて中庭へと早歩きでこちらへと駆けてきた。



「兼平くーん!おまたせ」



 水無瀬の奴、意外と時間かかったな。そう思いながら水無瀬を見て俺は固まった。



 水無瀬の私服姿を見るのは1学期に大村たちと一緒に遊んだりもしていたから別に初めてではないんだが、休日に恋人とデートに出かけるモードの水無瀬を見るのはこれが初めてだった。

 その姿は1年半という付き合いのある俺でも一瞬、一体誰なのかと目を疑うほどだった。




 胸元が綺麗にレースがあしらわれた白のワンピース



 透き通るように流れる長い黒髪



 白と黒のコントラスト。



 フェミニンなデザインのワンピースは、少なくともD以上はあるだろう大きな胸も、引き締まったウエストも、そこから流れるヒップラインも、その全てを強調しているのに、全くいやらしくなくて清楚な感じで仕上げている。

 モデル顔負けとはこのこと。まるでドラマのワンシーンのような登場だった。



 こ、これが水無瀬の恋人とのデートのときの服装。

 そしてこれがもう一人の学園のアイドル…。

 その姿に思わずゴクリと息を飲んでしまう。





 ヤバい…。

 完全に殺しに来ている。




 殺すって誰を?それは俺をだ。そもそも黒髪ロングは俺の好みにドストライクだというのに、それに加えてこの服装はその中でも直球ど真ん中と言わざるを得ない。

 これが彼女の全力全開…。俺は好みの集中砲火SLBスターライト・ブレイカーを喰らった気分になった。



 それにその姿に魅了されているのは俺だけじゃない。その格好は童貞共にも激しく有効。

 ここは水無瀬にとっては敵地であり、アウェーだというのに法条の親衛隊全員の視線も水無瀬にくぎ付けになっている。それほどのインパクト。小坂ですら言葉を失って硬直している様子だ。



 俺も何かしゃべらなければと思ったものの出てきた言葉は見たままの感想だけだった。



「き、綺麗だ…。

 め、女神様みたいだ…」



「もう、やめてよぉ♪

 お世辞でもありがと♥」



 俺は水無瀬にお世辞を言ったつもりはなかったし、本当に見たままを述べただけだというのに水無瀬は手を口元に持ってきて、くすりと笑って嬉しそうにはにかんだ。その仕草ですら艶やかだった。やっぱ女神だろ、これ…。



 続けて水無瀬は俺の隣にいるこれまた水無瀬とは系統は違うもののとびっきりの美少女の方に向き直って声を掛けた。



「かえちゃんもおはよー。兼平くんにかえちゃんがいるってことはやっぱりそういうことだったんだね」



 勘の良い水無瀬は俺が電話した時点で俺と法条が交換恋人になったことを把握していたらしいが、法条の姿を見て俺達がカップルになったと確信したようだ。



 一方、俺の今カノであられる法条の方はといえば、登場してから自分を差し置いて俺や小坂たちの視線をくぎ付けにする水無瀬に大層ご不満の御様子。



「ちょっとモモ、アナタ、ずいぶん待たせてくれた上、そんな媚び売った服着ちゃってどういうつもりなのかしら…?」



「やだなぁ!全然そんなつもりないよー?今日は(誰のとは言わないけど)()()()()()()()と顔合わせだし、あんまり恥ずかしくない格好にしないと、とは思ったけどね」



 水無瀬は法条に挨拶しながら途中で何かをつぶやいたけれど俺には聞こえなかった。けれどもどうやらその服装は新しい恋人である小坂に見せるために選んだらしい。



 水無瀬よ。せっかくがんばったのにお前の新しい彼氏は「かえで命」のTシャツを着てるぞ。コレのためにここまでするとは、なんという美人の無駄遣い…。



 てか俺も水無瀬と同じ理由で今日は法条と初顔合わせということで、しかも法条は電話だと大人し目な印象だったから俺も大人し目な方が良いと考えて珍しくジャケットとか着ちゃってるが、そんな俺でも今日の水無瀬の隣を歩くのはギリギリといった感じだ。

 昨日の小梢のデートで来てたような動きやすさ重視の格好だったらかなり危なかった。


 Tシャツでも今の水無瀬の隣を堂々と歩けるのは容姿が抜群でTシャツでも十分カッコいい大村くらいだろう。普段からこれと一緒に歩けるとかやっぱ大村スゲーわ。



 ん?それにしても法条と水無瀬はお互いにあだ名を呼び合っていて、一見仲良さげだ。

 女の子同士なら不自然ではないのかもしれないけれど、滝川情報だとこの2人は仲良くなかったはずなんだが…。早速俺は探りを入れてみた。



「水無瀬と法条って知り合いかなんかだったのか?」


「うん。知り合いっていうか小学校の途中からずっと一緒の幼馴染かな」


「・・・・・・・・・。

 私はモモを幼馴染と認めたことはないけどね」



「と、まあこんな感じで私としてはかえちゃんと仲良くしたいんだけど、高校からは疎遠になっちゃってて…」



「へー、なるほどな」


 そうか。小梢と大村も幼馴染だったが、このペアも幼馴染だったのか。なんだかどこもかしこも幼馴染だらけだな。


 幼馴染か…小学校や幼稚園の頃の仲良かった友だちを幼馴染と定義するなら、残念ながら俺の幼馴染はこの学校にはいない。


 小学校の同級生であれば探せば中にはいるのかもしれないが、友だちだった奴は一人もいないから幼馴染0だ。


 可愛い女の子の幼馴染と再会、なんてシチュエーションにも当然ヲタクとして憧れはするが、そもそも俺は小学校の頃から今と変わらずゲーマーヲタク道まっしぐらだったわけで、悲しいことに小学校の頃から仲良かった女の子自体がいない。


 …いや、一人はいたか。小学生の頃、サン中野プラザでやってた小規模な声優のライブに行ったとき、たまたま隣にヲタクな兄に連れて来られていた同い年くらいの女の子がいて、大人ばっかりの空間で子供同士仲良くなったという女の子がいた。


 名前は知らないし、「ふうちゃん」というあだ名しかわからない。その「ふうちゃん」も数ヶ月一緒に遊んだある日を境にぱったりと会わなくなった。大人しい子でそれまで全然ヲタクな趣味に興味なかったはずなのに俺に付き合ってヲタクな生活を送らされていたから、いい加減嫌気がさしたか、どこか遠くへ引っ越したか。今頃どうしているだろうか?元気でやっていると良いんだけど…。「ふうちゃん」の成長した姿は見てみたいものの、あの頃からまるで進歩がないというか一層悪化している俺の姿は見せたくない気もするな。


 いずれにせよ幼馴染というのは現実にはなかなか厄介なもんだとこれで学んだもんだ。



 水無瀬と法条の確執についてもこうした経験からなんとなく俺も事情を察した。

 幼馴染って奴は昔の自分を全部知っている。それこそ黒歴史として封印したいものも全部。


 しかもそれだけじゃない。高校デビューとかしたい場合でも過去を知る幼馴染の存在は邪魔になる。



 法条はもしその素が昨日電話したような大人しめな性格をしていたとしたら、今はアイドル高校生としてやっているが、実はそれが高校デビューだったということになるし、それは普通は隠しておきたいはずだ。


 法条が水無瀬を遠ざけたい理由がわかってきたな。水無瀬は人を貶めるようなことをする奴ではないんだけれども、自分の昔を知る危険人物ということで遠ざけているといったところか。



 と、俺はそこまで想像していたのだが、それでもまだ全容を理解するには足りないらしい。水無瀬と法条は俺ら第三者には理解できない内輪の会話を始めていて、その会話からは他にも何か確執があることが窺えた。



「相変わらず、かえちゃんにとって幼馴染は彼だけなんだね」



「・・・そうだけどそれがなに?この泥棒猫さん」



「それは私じゃないでしょ?

 だいたい、かえちゃんも素直に言っちゃえばいいのに無駄にプライド高いんだから・・・」



「・・・どっちが?完全にブーメランじゃない」



「うぐぅ…」



 2人はぼそぼそと何かを言い合っていた上、部分的に聞こえた内容も俺には何のことを話しているのか全く分からなかった。しかもなんか2人が2人にしかわからない幼馴染トークをし始めてから険悪なムードだ。



 しかし、これはこれで渡りに船。この2人は混ぜるな危険な2人で一緒に行動するなんてもってのほかという感じだろう。ここはこれ以上ヒートアップする前に例の作戦を遂行するとしますか。



「と、とにかく水無瀬も法条さんも落ち着けって。

 今の問題を整理するところから始めたいわけだけど、水無瀬は小坂がちゃんと交換恋人をしてくれなくて困っているわけで、俺も法条と楽しいひと時を過ごそうと思ったらまさかの親衛隊集団の登場で困っているというわけだ。

 というわけで、ここは協定を組まないか?

 俺はお前らが崇める法条に対して変なことをしようって気も下心も一切ない。

 そもそも俺は今の本恋人にゾッコンだしな。ただ、法条に対しても学校で気軽に話せるような仲の良い友だちにはなりたいと思ってるし、この1週間は俺なりのやり方で楽しませたいと思っている。それでもってきちんと正当に評価してもらいたいって思っている。

 だから、俺に法条ときちんと向き合う時間を1週間だけもらいたいんだ。

 だが、これはお願いじゃなく、半ば強制だ。

 もしお前らがこれを飲めないというのなら、俺は法条を放置することで法条と共にペナルティを受ける。

 あと、小坂についても、きちんと水無瀬と交換恋人を全うせずに俺と法条に付き纏うようなら俺はそのときも法条と共にペナルティを受ける道を選択する。

 俺はウチがそれなりだからたとえペナルティで最悪、高校中退になろうがそこまで困ることもない。むしろゲームやる時間が増えて喜ばしいくらいだ。俺に対してペナルティの脅しは一切効かないと思ってくれて良い。

 というわけでこの提案についてどうだ?

 まずは俺の相手である法条に意見を聞きたいが」



「私はそれでも構わないよー☆

 変なことしようにもセンサーで監視されてるし、通報アプリもあるから何かあっても大丈夫だしねー!


 私もペナルティーを受けるのは嫌だなー。みんな、ちょっとだけの辛抱だし、協力してくれないかな?」



 法条がいつものアイドルモードでファン一堂に声を掛けるとファン連中は難しい顔をしながら、2通りの反応を見せる。


 連中は法条が言うならしぶしぶ了承といった様子の者が半分と、リーダーである小坂に一任しますと言わんばかりに小坂の方を見つめる者らが半分といった感じだ。


 

 視線が集まる小坂の方を見ると、小坂は激しく悩んでいた。



「うーん…。百歩譲ってこの魔女と1週間きちんと過ごすことは約束してやっても良いとしても、さすがに1週間ずっと兼平に2人っきりでかえで様を任せるというのは…。

 かえで様をお守りするのは我々親衛隊の務めでもあり、我々の存在意義でもあるわけで…」



 小坂は大分悩んではいるが、少なくとも水無瀬のことについては了承してくれている。

 これはほぼほぼ了承してくれてるも同然だ。あと一押し、水無瀬から後押しがあれば行けるだろう。


 そう確信した俺は水無瀬にアイコンタクトを送る。



 あとは水無瀬が「小坂が兼平くんの案に協力してくれないようなら私自身も自滅を選ぶよ?そうなって私がペナルティを受けたら兼平くんも連動するように法条とペナルティ落ちすることになるよ?」と脅してくれれば完璧だ。水無瀬、やってくれるな?


 俺は俺と水無瀬のこれまでの信頼関係や友情関係を踏まえればこの程度のアイコンタクトであれば絶対通じると信じて必死で表情で訴えかけた。結果、水無瀬は俺の方を見て軽く微笑んでから小坂に切り出した。



 よし、やはり通じた!

 と、そう思っていたんだが、残念ながらその期待は2秒で裏切られることになったのであった。




「それならさ、小坂くんが兼平くんを信じられるって納得するまで私たちとのダブルデートの形式にするのはどうかな?

 いきなり、かえちゃんと離れ離れになるのも小坂くんにとってはきっと辛いだろうしそれくらいは兼平くんも譲歩してくれるよ?ね?」



「な、なるほど!それは妙案だ!それで行こう!」


 

 な、なんだってーーーー!?おい、水無瀬、何言っちゃってるんだよ!

 てか、小坂も折れるの早っ!




「モモってば…ホントにもう。

 これじゃあノーといえないじゃない…」



 法条もブツブツ言いながら水無瀬の提案にしぶしぶ了承といった顔をしている。

 小坂以外の法条ファンの連中も全員が小坂がきちんと見届けてくれるなら安心だといった顔をしていて了解しており、法条としてはこいつらファンを裏切るような真似はし難い状況だ。



 一方、水無瀬の方は最後に「ね?」と言って、俺に対して例の全く笑っていない笑顔を向けてきて、賛同してくれるよね?と無言の圧力をかけてきている。

 はぁ…これはもう詰んだな。



 俺は俺の予想もしなかったところから梯子を外されて垂直落下した。

 俺の作戦には俺の想定していなかった穴があった。

 それは小坂にとって最も譲歩しやすい提案は4人のダブルデート方式だということ、そして、小坂と2人っきりが良いだろうと思っていた水無瀬がそんな提案をしてくるということ、その上、そんな内容の自分の案について、俺に賛成しろと逆に圧力をかけるようなことを言ってくるということ、だった。



 マジかよ…。小梢との初デートに続いて、法条との初デートでもなぜか俺は水無瀬カップルとのダブルデートに行くことになるのかよ。どうなってんだよこれ。




「うん♪

 みんな納得みたいだし決まりだね!じゃあ早速このままお出かけしよっ!

 兼平くん、今日はどこにいくつもりだったの?」



「えっと、アキバだけども…」



「いいね!じゃあ早速行こう!」



 水無瀬はリア充系女子だというのにヲタクの巣窟であるアキバに行くことに全く抵抗感がないどころか、水無瀬自身も相当乗り気のようだ。小坂も水無瀬がここまで乗り気じゃ反対はし難いし、代案もないといった顔で了承している。

 一方、法条は興味ありませんけど風を装いながら興味津々といった顔をしている。


 これはしゃーないな。幸いアキバは俺の第二の庭のような街だ。62人はともかく、4人くらいならちょうど良い感じで回れるだろう。



 こうして俺ら4人は59名の法条ファンを置いてアキバへと出向くことになった。

















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 だが、俺はアキバに着いてから一つ重大なことを失念していたことに気が付く。

 俺が昨日、滝川に何を吹き込んだのかを…。



 『アキバのメイド喫茶とかおすすめだ』



 そうは言っても普通に考えたらこの広いアキバで知り合いと遭遇する確率なんか0に近いはずなんだが…。

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