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恋人交換制度!?学校のアイドルたちが俺に彼女交換を申し込んでくる件  作者: ponshiro
第2章 ねぇ、私のこと・・・【初回交換編】
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第15話 地雷と言われたのに地雷と気付かず地雷を踏む男

 「かえで命」のTシャツを着たヤバい男の話によって俺はこれまでの経緯に納得した。


「な、なるほどな。

 そうか。そうだったのか。

 確かに普通はある程度勝算がないと告白エントリーなんかしないことを考えたら60人が一人に告白エントリーするとかちょっと異常だもんな。

 ファンクラブ皆でそうすることで部外者を入り込み難くして法条を守ったって理由なら納得だわ。

 つか、平等に讃えるってまさか、お前らこれまでもこうやってずっと60:1で交際してたっていうのか」



「ああ、交際ではなく交流だが、60:1なのか否かと言われたらそうだということになるな。

 もちろん、一度に60人は多すぎるから俺達の中でもより忠誠心の高い者ごとに6人~7人ずつA~Jの10個のグループ分けがされていて、普段はそのグループごとに頻度を変えつつ、俺だけは全グループに所属して交流している。

 今日はお前という新人が来るということで我らの団結力を見せるために全員集合した。

 これまではもちろんのこと、これからの1週間についても常に俺達がくっついていき、お前は最低でも6:1:1の状態でかえで様とこの1週間過ごすことになるだろう」



 おいおい、マジかよ。

 俺は小坂が指摘する事実に思わず頭を抱えたくなってきた。


 これから1週間暑苦しいコイツらと一緒に法条と交際するだと?

 しかも交際どころか、交流だと?



 なんだよ交流って。そんなん絶対つまらんだろ。



 だいたい法条はホントにそんなの楽しいと感じているんだろうか?ファンとはいえ、異性にそんなに取り囲まれてたら普通息苦しくないだろうか?

 そもそも小坂はなんでここにいる!?




「ちょ、ちょっと待て。けど、小坂、お前、法条の本恋人ってことは今、交換彼女いるはずだよな?何でここにいるんだ?」



「当たり前だ!俺達はいついかなる時であっても、かえで様をお守りする所存だ。

 特にかえで様に盾突こうとするあの魔女が相手となればなおさらのこと!

 俺はアイツと共にペナルティを受けてこの身をかえで様に捧げる覚悟はできている」



 俺は小坂の言葉に声も出なくなった。なんという忠誠心…。

 いや、実は俺はゲームオーバーになった場合のペナルティは良く分かっていない。ただの掃除当番とか補習とかそんなもんだと思っていたんだが、先週、滝川と寺本が躊躇しているのを聞いて、相当ヤバいものなんじゃないかと察してきたところだ。だが、コイツからはどんなものでも甘んじて受け入れようという強い覚悟を感じる。「かえで命」のTシャツは伊達じゃないということか。



 てか、俺、小坂の発言から察せられた小坂の交換恋人に物凄く心当たりがあるんだが…。




 えっ…マジかよ。よりによってそうなのか?


 昨日の滝川の話では法条は俺の良く知るアイツを敵視しているという。ということは小坂が敵視する魔女、小坂の交換恋人とやらも当然、アイツということになるだろう。



 はぁ…アイツを狙う変な奴と交換恋人になるよりは全然マシなのかもしれないが、別の意味で狙われてるというか自爆テロの標的にされてるとは…。アイツ、くじ運なさすぎだろ。




「お、おい。小坂、お前のスマホ貸せ!」


「な、なにをする!」


「ちょっとだけだ。法条についても協力するから良いだろ?」



 俺が法条への協力をだしに使うと、小坂はしぶしぶ了承する。小坂のスマホでLIMEを見てみると、案の定、『MOMO』というアカウントからたくさんのLIMEが今も来ている。



 ――――――――

 MOMO

 ねえ、どうしても会えないかな?


 ――――――――

 MOMO

 無理に交際してくれなくて良いんだ。

 ただ近くにいてくれさえしてくれれば構わないの…


 ――――――――

 MOMO

 私、今リタイヤするわけにはいかないの…

 お願い、出来る限りのことは何でもするから協力してくれないかな…?

 ――――――――



 そこには痛いほど切実なお願いのメッセージがつづられていた。


 何やってんだよ、アイツは。いくらなんでも何でもするってのはいかんだろ。

 しかし、こんなにも一生懸命、美少女からお願いされたら普通の男子はコロッといくんだが、法条の親衛隊隊長には逆効果のようだ。



 俺はそのままMOMOに通話を掛けた。すぐに相手が応答する。



「も、もしもし小坂くん?

 何度もLIMEしてごめんね…」



「いや、残念だが俺は小坂じゃない」



「えっ!?

 ど、どうして秋人くんが…?」


 通話相手のMOMOこと水無瀬は声ですぐに俺だと気づいたようだが、小坂と思ったら突然俺が出てきてパニクってるせいで、俺を大村と付き合う以前のように秋人くんと呼んでしまっている。



「水無瀬、パニクってるところ悪いが、お前の問題も含めて全部俺が解決してやるからとにかく今すぐ寮の中庭に来てくれ。そこに俺も小坂もいる」



「え?う、うん!わかった!

 大急ぎで準備するから待っててね!」



「ああ」



「秋人くん…えへへ

 ありがと!好きよ♪」



 ピッ、と音を立てて通話は切れた。水無瀬の奴、何が「好きよ♪」だよ。お互い恋人持ちの身で、Likeの意味でしかないのに相変わらず人を誤解させるのが上手いヤツだな。




 俺が小坂にスマホを返すと小坂は何をするつもりだといった表情をしている。

 その上、水無瀬の登場にこれまで黙って俺らのやり取りをみていた法条までも突っかかってきた。



「ちょっと、アナタ、どういうつもり?ここにアイツを呼ぶなんて!

 アナタまさか、私と過ごすのが嫌でアイツと一緒にデートに行くつもりじゃないでしょうね?」



「さてね」



 法条は水無瀬がやってくると知って相当焦っている様子だ。おいおい、法条さん。ちょっとばかしアイドルの演技が崩れてきてるようだが大丈夫か?てか、やっぱり素はそっちなんだな。ちょっと安心したぞ。


 さてと、どうしようか。

 法条に「さてね」とは言ったものの、俺はここで法条を放っておいて水無瀬とデートに行くつもりは全くない。


 確かに俺は、1学期に水無瀬とほろ苦い初恋のような経験をしたこともあって、一時期、水無瀬のことが好きかもしれないと思っていたこともあったが、先週、小梢と付き合い始めてからは全然そうではないし、今は水無瀬のことは完全にふっ切れている。



 むしろ、今の俺は小梢一筋。

 小梢は俺が「好きだ」と耳元でささやくと顔を真っ赤にしながら「せんぱい、私も好きです」と耳元でささやき返して甘えてきてくれる超絶可愛い彼女だ。

 あんなに可愛い彼女はこの先他には現れないだろう。



 交換恋人制度も小梢のために俺の知名度アップと友だち作りとして頑張るのであって、浮気のために使う気はない。


 もちろん水無瀬のことも守ってやりたい大切な友人であることは今も昔も変わっていないから、水無瀬が困っているなら全力で助ける。だが、それはただの友人として当然そうするというだけで、余計な下心は一切ない。



 そういうわけで俺としてはなるべくここは穏便に済ませたいし、法条からポイントをもらえるようにこの一週間、法条を目一杯楽しませてあげたいのだけれど、このままじゃ小坂含めた余計なファン集団と一緒に行動させられて、楽しませてあげられそうにない。


 つまり、今回の目標を言えばファン集団の一時解散と小坂にきちんと水無瀬と交換恋人をしてもらう、ということになるわけだが、ネックは水無瀬と自爆できる爆弾を抱えた小坂だ。



 だが、小坂が水無瀬と自爆テロをすることが可能な爆弾を抱えているように、俺も法条と自爆するという選択肢(爆弾)がある以上、こいつらファン集団も決して俺には歯向かえないともいえるわけでもあって、状況としては一応イーブンなはずだ。


 その上、状況はイーブンでも手札はイーブンじゃない。むしろ俺が圧倒的に有利。

 水無瀬は俺の味方だし、法条もおそらくはそうだ。



 俺がさっき感じた違和感や、素の法条がアイドルな法条ではなく、昨晩電話したような大人しい系の人間だというのならチャンスはある。



 なんといっても小坂を含めてこいつらをどうにかできるのは法条ただ1人なのであって、この法条も本当のところは俺の味方かもしれないというわけだ。



 俺は俺にだけ存在する切り札、即ち、法条とのプライベートネットワークを使って、本当の法条に連絡を試みる。



 俺はゲームで鍛えたスマホコントロールテクニックを使えば、ポケットに手を突っ込んだまま、周りに察せられることなくポケットの中でLIMEの作成、送信が十分可能だ。


 俺のレベルになると、授業中にスマホを机の中やポケットに入れたまま一切画面を見ずに右手で操作をしてBDカネコの大人気スマホリズムゲームであるアイドルガールシンデレラマスターのマスターランク全曲をSランク以上でクリア可能だったりする。ローディング時間を計測するために左腕の時計だけは常に見ている必要があるけれども。

 と、そんなことを考えているうちにLIMEが完成した。



――――――――――――

 秋人


 俺、本当のところはさ、法条さんと二人っきりでデートしたい。

 けど、それには法条さんが協力してくれないと無理そうだ。

 もし法条さんが俺が水無瀬が来た後にする演技に乗ってくれて小坂やファンの連中の説得をしてくれたら、今日はアキバで俺のとっておきのスポットを案内するよ。

 どうかな?

――――――――――――



 送信っと。法条が隠れヲタクで、もし「ボクいも」のきりんちゃんと同じタイプであれば、アキバに行かないかというこの提案は魅力的に映るはずだ。

 果たして実際の法条はどんな反応をする?


 

 さっそく法条に通知がいったらしく法条は慌てた様子でスマホを確認する。さすがにファン集団も法条のスマホをのぞき見するような真似はしないらしい。連中は俺が密かに法条にLIMEを送っているとは全く気が付いていない様子だし、女友達とでも連絡しているんだろうといったマヌケな顔をしている。


 そして俺の送ったLIMEを見た法条は一瞬だけだが目を輝かせていたのを俺は見逃さなかった。




 ――かかったな。




 法条はスマホに向かってうなづきながらLIMEの返事を送っている。俺のスマホはサイレントになっているから彼女のLIMEを着信したのかはわからないが、あの様子だけでもどんな返事が来たのかはわかる。おそらくはYESという意味のスタンプでも送信したんだろう。

 


 これで準備も整った。



 あとは水無瀬が来たら俺はこの一週間、お前ら法条ファンが付きまとってくるようなら法条に0点を付けて自爆するつもりであることや小坂が水無瀬と自爆するなら俺も法条と自爆するつもりであると言って奴らを脅す。


 そこに法条や水無瀬も乗ってくれてファンの連中を説得し、奴らは解散。小坂も水無瀬ときちんと交際を開始するという寸法だ。

 水無瀬も()()()一緒に過ごしたかったということだから当然、俺の提案には乗ってくるはず。


 この作戦に何も問題はない。パーフェクトだ。 



 俺は「勝ったな」とほくそ笑みながらもう一人の学園アイドルの登場を待った。




 しかしこのときの俺は重大な思い違いをしていた。

 水無瀬は俺の味方、そう思っていたわけだ。



 俺は地雷の意味をしっかりと理解していなかったらしい。

 俺は滝川の忠告を聞いたにもかかわらず、修羅場のスイッチ、巨大な地雷を今まさに踏んでいた。

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