表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋人交換制度!?学校のアイドルたちが俺に彼女交換を申し込んでくる件  作者: ponshiro
第2章 ねぇ、私のこと・・・【初回交換編】
13/39

第13話 ねぇ、私のこと・・・

「あ、あのさ、滝川。

 俺の交換相手、法条かえでって奴なんだが…」



「お、おい!兼平、お前、それって…今話してた法条じゃねーか。

 マジかよ…。お前のくじ運どうなってんだよ…。

 いや、お前の場合、あんま良くないというべきなのか?」



「マ、マジかよ。てか、俺、その人知らないんだがどこの誰だよ」



「ええー!?お前あの法条を知らないのか?告白フェスタで60人記録したあの法条だぞ!?

 ま、まぁ違うクラスな上に水無瀬や神崎に囲まれてたお前だと知らないってこともありうるのか…。

 俺のクラスの女子なんだけど、兼平のクラスの水無瀬的ポジション、いやそれ以上かな。要するに本物の学園のアイドルだよ。同じく人気の高い水無瀬への対抗意識も結構あるみたいだから水無瀬の名前は出さない方がいいと思う。と、まあ俺から話せることはこれくらいかな」



「同級生だったのか…。3次元に興味なさ過ぎて全然知らんかったわ。

 とりあえず系統としては小梢や水無瀬的な感じなわけね。さんきゅー。それ以上の情報はもう大丈夫だわ。そこを知っていくのも楽しみの一つだし、周囲からの情報なんてあんまりあてにはならんしなー」


「ははは。さすがゲーマーだな。

 けど法条は…。まぁ、兼平なら大丈夫か。

 がんばってくれ」


「おう。お前も達者でな。強く生きろよ」


「お、おうぅ。強く生きろってなんだよそれ。

 なんか実感籠ってんな。わかったよ。じゃな」


「ああ、また火曜日に」



 滝川からの電話によって小梢は滝川と一週間交換恋人になることがわかった。



 小梢が俺の知らない相手と恋人になるのは全く良い気分がしなかったけれど、俺も良く知ってる滝川なら全然問題ないし、安心だ。滝川はそもそも寺本一筋だし、すげー良い奴でもある。



 それだけにこれから滝川が小梢に散々振り回される未来が見なくてもわかってしまう。マジで強く生きろよ滝川。


 小梢のことだから滝川が相手ならおそらくは平日は部室で一緒にゲームしてるだろうし、俺も部室に顔出せば小梢にも会える。

 俺のくじ運の良さは自分じゃない方で現れたようだ。




 問題は俺の方だ。法条かえでか…。告白フェスタで60人ってことは元々は恋人はいなかっただろうし、好きな相手とかもいなかったってことだよな。それにしても60人はヤバいな。1クラス男子20人だから3クラス分か。マジでアイドルかよ。



 かなりの強敵にみえるが、幸い、俺はさっきまで電話で小梢から女の子とのコミュニケーション方法やら口説き方、気に入って貰える方法やらを徹底的にレクチャーを受けた。あの小梢に通用するなら法条にもおそらく通用するだろう。



「あっ、ヤベ。滝川に法条がどんな顔の奴か聞くの忘れてた。明日ちゃんと会えんのかこれ?」



 そう思って焦っていると俺のスマホに凄い勢いで不在着信の連絡とlIMEが連投されてきた。



 誰だよ?小梢か?んなわけないか。どれどれ。



 ―――――――――

 かえで 00:04


 この私がわざわざ電話してあげてるのに他の誰かと電話してるなんて良い度胸ね。


 ―――――――――




 うわっ、やべっ!

 俺はどうやら滝川と電話している間にさっそく彼女からの連絡へのすっぽかしをやらかしていたらしい。指でスクロールして次のLIMEをみてみる。





 ―――――――――

 かえで 00:04


 あと5秒で切りなさいよね。



 ―――――――――

 かえで 00:05


 ちょっと長くないかしら?



 ―――――――――

 かえで 00:06


 早く切りなさいよ!



 ―――――――――

 かえで 00:07


 いつまでやってんのよ。


 ―――――――――

 かえで 00:07


 怒るわよ。


 ―――――――――





「・・・・・・・・・。」




 俺はこのLIMEを見て早速色々なものを察した。



 うわぁ…。

 これ、絶対めんどくさい奴だ。なんとなくさっき滝川がやっちまったな的な感じで話をしていた理由がそこはかとなく分かった気がする。これが初回だけのたまたまでなければ平日、小梢に会いに行く時間はとれそうにない。



 これだけ怒っていると第一歩を踏み出すのに緊張してくる。けど、こちらからもアクションしないと始まりそうもない。


『せんぱい、女の子にはマメに連絡!これ大事ですよ!』


 わかってるよ。俺はさっそく法条に電話をかけた。



 prr ガチャ

「もしもし」


 電話とんの早っ!


「もしもし、兼平ですけど…」


「わかってるわよ。登録されてるのあなた1人なんだから」


「そっか、ちょっと友達と電話してたんだ。すぐに出られなくてごめんな」


「ええ。別にいいわ。この私と恋人になれるとわかったからつい興奮して他に自慢していたというところでしょ。慣れてるからわかってるわ」




 …………。

 うーん。1ミリもわかっていないようなんだが大丈夫だろうか?

 ちょっと話してみて分かったけれども、向こうは相当プライド高そう(タカビー)な感じだ。もし俺が「ごめん、君のことなんか全然知らなかった」とか言おうものならどうなるか分かったもんじゃない。

 嘘は言わずに話を合わせておこう。



「ああ、法条のことを友達と話してたらつい長電話になっちゃったよ。

 それで明日なんだけど、どうすれば法条に会えるかな?」



「あなた、私の恋人になるのにそんなことも知らないの?

 まあいいわ。明日は8時に寮の中庭集合よ」



「そっか!集合?まあいっか。寮の中庭ね。分かったわ。

 遅くに連絡ありがとな」



「ええ、ではまた明日」



 ピ…。


 

 こうしてファーストコンタクトは無事終了したのだけれど、正直全然キャラが掴めなかった。



 最初、LIMEをみたときは構ってちゃんなのかなと思ったら電話してみるとちょっとタカビーな感じはするものの構ってちゃんのオーラはなく、至って普通だった。

 どういうことなんだろうか?




 そう思っていると再びLIMEがきた。


―――――――――

 かえで


 おやすみなさい。

―――――――――


 なるほど、単にマメなだけか。俺のようなただの交換恋人にもわざわざおやすみLIMEを送ってくるとは。これが人気の秘訣なのかもしれないな。ふむふむと思いながら俺も返事をしておく。


―――――――――

 秋人

 おやすみー。

―――――――――


 俺もおやすみと送るとすぐ既読が付いて返事が来る。どうやらもうちょっとだけやり取りをしたいらしい。



―――――――――

 かえで

 遅れないでよ?

―――――――――

 秋人

 もちろんですとも

―――――――――

 かえで

 早く寝なさいよね

 夜更かしは禁物よ

―――――――――

 秋人

 そうだね。気を付けるよ

―――――――――

 かえで

 わかってくれたならいいわ

 ちゃんとお布団に入ってる?

―――――――――

 秋人

 ああ、入ってるよ

 そんなに心配しなくても大丈夫だよ

―――――――――

 かえで

 それならいいのよ

 ただちゃんと寝てるかちょっと心配だっただけよ

―――――――――

 秋人

 そっか。

 心配してくれてありがとな

―――――――――

 かえで

 どういたしまして

 けど、きっとそうは言っても私と会えるのが楽しみすぎて眠れないでしょうけどね。

―――――――――





 えっとこれは返事した方がいいんだろうか?いいんだろうな。

 てか、これいつまで続くんだろうか。いい加減、伝家の宝刀である「もう充電きれるわ、ごめん」を使いたくなってきたぞ。

 もちろん、実際の俺は法条が心配するとおり、俺はまだ寝るつもりはないし、布団にも入っていない。楽しみすぎて眠れてないのは事実だが、それはあと数分後に迫った深夜アニメの放送が、だ。ちょっと方向性はずれているとはいえ、疑っている方向性は合っている。初対面なのに俺の母親並の察しの良さだ。


 しかし、そうはいっても、おやすみと送ってからここまで延々やり取りが続くと、眠れないのはお前のせいだ、と返してしまいたくなってしまう。

 けれど、そんな皮肉を遠慮なく言えるのは小梢くらいだ。あいつとはお互い好き勝手言えるからな。



 改めて思い返すとなんて良い彼女だったんだ(数分前までの彼女に対して酷い言いようだが)。


 それにしても交換恋人始まって数分で小梢の素晴らしさを理解してしまうとは。制度の思惑に見事にハマってるな。もう既に小梢に会いたくなってきたし(数時間前まで俺の部屋にいたが)。



 いやいや、待て待て。新しい彼女との交際はまだ始まったばかりだぞ。

 会ったことがないからこそ、ここは想像を働かせて楽しまなければ。



 さっきの電話の雰囲気や『法条かえで』とかいう堅そうな名前からストレートに想像してしまうと、ちょっとキツそうな美人タイプの女の子となってしまうけれども、ここはあえて真逆。可愛い系の金髪ツインテールのツンデレ美少女だと想定しよう。



 さっきの電話も本当は俺ともっと話したくて仕方がないけれど、素直になれなくてつれない態度をとってしまった、だけど、LIMEじゃ積極的に話せちゃって止まらない、つい俺が心配で世話を焼きたくなってしまう、そんな世話焼きの幼馴染と想定しよう。イメージとしては『冴えてる彼女をヲタクっ子にする育て方』に出てくる金髪ツインテ幼馴染のエミリちゃん。これだ。



 イメージとかけ離れているものを無理やり当てはめることでさっきまでのやり取りが別物に見えてくる。やべー。超絶ツンデレですげー可愛いな、この新しい彼女は。



――――――――――

 秋人

 その通りだよ。法条に会うのが楽しみすぎて全然眠れそうにない。

 けど、さすがに眠たそうな顔を初デートで見せるのも嫌だし、もう充電も切れるから、そろそろ寝ることにするよ。

 それじゃあまた明日。

――――――――――



 調子良くなった俺は最後に気分良くLIMEして、スマホをサイレントにした。

 なんだかんだで『充電きれる』という伝家の宝刀を使ったが、いい感じにまとめたしOKだろう。

 

 俺はそれからいつも通り深夜アニメを1本みて、軽く勉強してから寝た。



・・・・・・・・・・・・


 俺はスマホをサイレントにしていたせいで、その後、彼女から送られてきたLIMEに気づくことはなかった。





――――――――――

 かえで

 ホントは私もよ。

 すごく楽しみにしてる。

――――――――――

 かえで

 ねぇ、私のこと

 覚えてる?

――――――――――

 かえで

 なんて、そんな訳ないよね。

――――――――――




 そんなLIMEが送られてきていたが、未読のまま朝になる前には削除されていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ