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「クマくん…初めてのことでテンション上がってるのは分かるけどさ? ちょっと買いすぎではないかい?」

「す、すいません。つい……えへへ」


 合流できたとき、クマくんは両手いっぱいに食べ物を抱えて人通りが少ないところで待機していた。真っ黒なローブはそのまま。とても目立ってたおかげですぐに見つけられた。


「ん? それはなんだ。見ない皿だな」

「あぁ…これですか? 主催の方からの支給品らしいです。無名商会の新商品だとか。食べ物を売っているところではほとんどこの皿が使われてました」


 ただの羊皮紙に見えるが、表と裏の真ん中に大きく魔法陣が書かれていた。強度も充分あるようだ。イベントで配れるほど安いものには見えない。ここ以外で見たことないし、新商品としていろんな店が使ってるということは広告みたいな意味があるのか?


「まあ後で洗ってから貸してくれ。興味があるんでな。じゃあどっか座れる場所探すぞ」

「お願いですから少し持ってくださいよ。手が…ぷるぷると震えてきました。腕力ないんです。ぶちまけちゃいますよ! いいんですか?!」

「はいはい、早く見つけるから頑張れ」

「お、軽くなりました。これぐらいなら大丈夫です」


 上のほうでぐらついてた2~3個を手に取る。すべて肉料理で、それぞれいい匂いがした。香ばしい焼いた匂いやタレ、香辛料などが鼻をくすぐり食欲を刺激する。かなり美味しそうだ。通りから離れて、壁にもたれる。陰になってて少しだけ快適だ。クマくんも隣に並ぶ。ベンチなどにはもう誰かが居て、自分たちは座れそうにない。


「なぁ…クマくん。少しそれくれないか?」

「これですか? いいですよ」


 クマくんの朝食をつまむ。行儀が悪いが気にしないでおく。ちょうど昼を知らせる鐘がなった。思ったより時間の進みが早いと感じたが、朝が遅かったこともあり1人で納得した。


「今日はクマくんが言ってた村に行こう。当事者たちの証言だ」

「わかりました。そういえば、馬はどうしたんですか? まかせてしまってその後を聞いてないんですが」

「あーそうだったな。ここに知り合いがいてね。馬を預かってもらったんだよ。そろそろ待ち合わせの時間かな…。先に馬を迎えに行ってくるよ」

「ま、待ってください。もう少しで…」

「いやいや、あとから来てくれて構わないからさ。ゆっくりでいいよ。昨日通ったほうの入口で待ってるから」


 クマくんはふがふがと無理やり口に押し込んでいる。止めはしたが聞いてないようだ。たまに胸のあたりを叩いてる。心配ではあるが約束を優先させた。集合場所には馬を2頭つれた男がいた。遅れてしまったようだ。


「すまん、待たせてしまったか」

「大丈夫ですよ旦那。それにしてもこの子たち本当に人懐っこいですね。素直に従ってくれましたよ」


 優しく馬をなでる。その横顔は自分の子供に向けるもの同じぐらいの愛しさを感じた。この“ガク”という男とは依頼人を通じて知り合った。たまに依頼の手伝いをしてもらっている。ほとんどが馬関係だが移動手段としても重宝している。


「いつも悪いな。それにしても代金はいいのか?」

「気にすんなよ旦那。じゃあな」


 ひらひらと片手を振ってガクは帰っていった。ガクの姿が見えなくなったのを確認して2頭のたずなを引く。開けた場所まで移動させて、クマくんが来るのを待っていると数分もしないうちに走ってきた。


「はぁ…はぁ…遅れましたー…」

「大丈夫か? もう少し休憩するか?」

「あぁ…いえ、大丈夫…ですっ」

「そうか? ならいいけど」


 馬にまたがって走り出す。目的の村に近づくほど人や集落、街などの数が目に見えて少なくなっていった。遠くに見えていた森の緑が濃ゆくなったころ、ぽつぽつと家の屋根が見えてきた。空は曇っていて、全体的に暗い雰囲気がある。近づくにつれて村の荒れようが見えてきた。家は今にも崩れそうで、畑らしきところには枯れた草の茶色と生き生きとした草の緑色が見えた。



◇◆


「ここか…廃村っぽいけど」

「まだ人も住んでて、税もとってるはずです」


 馬から降りると砂埃が舞った。地面はかなり乾いているようだ。昼なのに人が見当たらない。後ろにある森の深い緑と対比するようなこの村の薄い茶色から寂しさを感じる。枯れた木の枝にたずなを固定してさらに進む。


 ここは立地的にもかなり不利な場所だ。魔物が多くいるため、農作をしようとも荒らされる。対策をしようともその資材や工事をしてくれるところなんてそういない。命の危険もある。護衛として冒険者を雇う方法もあるがさらに費用が重なる。ここを残す理由も、ここの村をまだ“村”として認めていることも不思議だ。


 村の中心あたりまで進んだが、やはり人の姿は見えないし誰かが住んでるようにも思えない。畑らしきところには雑草が生い茂っていて手入れがされていない。空き家ばっかりで、少しなでるだけでポロポロと壁やドアの表面が崩れる。周りを探索していると、正面から木材が地面にあたる音がした。そこには他の家よりも新しく、作りの違う家らしき建物があった。その家のすぐそばに、さっきの音の元らしき木材が転がっていた。


 ほとんどの家がわらと木材で四角く作られてるのに対し、目の前の家はすべてがわらで作られてる。土台らしきところの断面は円状になっていて、上に行くにつれてその円が小さくなってるというか。家の入口らしき穴があいていて、そこを布が塞いでるといったところか。


「上等な角材ですね。木の中心あたりでしょうか…色も薄くて…丈夫そうですね」

「そうなのか? よくわからん」


 後ろを歩いていたクマくんは角材に近寄り、軽く叩いたりぐるりと表面を見たりしている。そのとき、家からかなり歳をとった男が出てきた。少しふらつく足と手。猫背で古くなって汚れのついた大きな服。あごには白い立派なヒゲを生やし、片手に体を支えるための杖があった。かなり長生きしてるように見える。70と数年ぐらいかな。この村で初めて見る人間だ。


「……だれだ?…」

「こんちわ、おじいさん。勝手に入ってすまない。ちょっとこの村について聞きたいことがあるんだが、いいかな?」

「……ふむ…わかった…。まあ、はいるがいいさ。そとよりは……いくらかましだろう…」


 おじいさんは入口の布を片手で上げて、こちらを見る。招いてくれているようだ。クマくんは木材を両手で持って、家へと歩く。自分もクマくんに続くように家へと向かった。



◇◆


 家のなかは意外と広く、物も少なかった。内側からだと家の骨組みがよく分かる。床にはわらが敷かれているが弾力はない。かなり多く踏まれているようだ。思ったより居心地はいい。淡く外の光が入ってくるし、わらの隙間から涼しい風が通り抜ける。靴は家に入る前に脱がされた。汚されたくないらしい。おじいさんの顔には深いシワと大きなシミがあった。前がちゃんと見えているらしいが、目は閉じてるようにしか見えない。


「……よくきたな…。ここは…あのもりもあるから……きぞくさまいがいのひとが…きたのは……なんねんぶりかね……」


 おじいさんはゆっくりと腰を下ろして、あぐらの姿勢をとった。見た目に反して体はとても健康そうだ。


「……わしのなまえはシュロー…。“そんちょー”でも…なまえでも…すきなように……よんでくれて…かまわない…」

「なー、おじいさん。この村はあんただけなのか? 他に人が見当たらないんだが…」

「……そうだな…。ずいぶんと…まえに……わしだけになった…。ひとはすくないが…むかしは…それなりにさかえてた……」


 ヒゲを触りながら懐かしそうに微笑む。昔を思い出しているようだ。


「シュローさん、この村は何を作っていたんですか? 定期的に国へ税を納めていたと思います。ここでは何が出来たんですか?」


 クマくんがぐいっと身を乗り出す。


「しらんのか…? むかしのはなしだが……ここではな…ほかのしゅぞくと……とりひきをしてたんだよ……」

「他の種族…。まさか…魔物と?」

「…んー…まあ……そういうことだ…」

閲覧ありがとうございます。

今回から少し文字数を増やしてみました。

作者の頭のなかでもしっかり展開がまとめられて

いないというひどさ…。


感想や指摘などして頂ければ嬉しいです。

フワフワしててすいません…

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