6
「それで、今は何してるんだ?」
「ぼちぼちってところかな。冒険者ギルドの依頼を受けて、小銭稼ぎながらのんびり生きてるよ。今はその依頼のための情報収集ってとこ」
「それにしてもシンがオレのとこに来るなんて珍しいな。情報は自分で集めるような主義じゃなかったか?」
「まあそうだな。だが、今は少し時間が足りないんだ。近いうちにまたウィッチのとこに行こうかと思ってな」
ふーん…とフィルは少し沈黙する。こいつはいつも何を考えてるのかわからない。信頼はしているが底が見えないのは怖い。
「まだ酒飲んでるのか?酒は毒だぞ〜。控えるというか…ウィッチも心配してた。もちろんこのオレもな」
「はいはい。そりゃどーも。じゃ、もういいか?」
「ああ、なかなか楽しかったよ。また仲良くしようぜ、今度一緒に酒でもどうだ?」
「考えとくよ。どうせここにいるんだろ?」
言葉の変わりにフィルは笑顔で返事して、紙が重ならないようカウンターに広げる。全部で3枚。2枚は屋敷の見取り図でもう1枚は何かのリストのようだった。
「これとこれは見ての通り屋敷のやつだ。1階は全部で6部屋。使用人用の部屋が屋敷のはしに1つずつで計2部屋。正面玄関から見て右側が男用だ。あとは応接間、用具室、倉庫、空き部屋。用具室には裏口がついていて、使えるかもな」
「今回増設したんだろ?どこが前と変わったんだ?」
「使用人用の部屋と倉庫だな。ほかは手を加えてないはずだ。倉庫には斧とか武器もあるらしいが、日用品もいくつかある。誰か家のやつと会う可能性が高いから、長居はおすすめしない」
説明していた紙を横に移動させて、もう1枚のほうを見やすいように正面にもってくる。次は2階のようだ。
「セルドは基本2階にいる。2階には書庫と寝室と執務室だな。細かいことは知らないけど。セルドは食事をとるときだいたい外に出る。セルドが外に出なくとも、使用人が街に行ったりするんだ。そのタイミングで2階に潜入するのもいいかもしれん。それと増設のことだが…2階のすべてが対象だな」
「参考になるよ。それでこのリストは?」
「これは予定表というか……訪問リストかな…」
さっきと同じような動作で最後の1枚を移動させる。
「見ての通り、王国から何人か使者が来るらしい。1番近いのが4日後だな。あっちもいろいろ準備するだろうから、警備はそれなりに厳しくなると思う。お目当てのやつも隠されるかもな。言えるのはこれぐらいかね」
「ありがと。手間が省けるよ」
「小さなことでもいい…オレで良ければできる限り手伝うからさ。もっと頼ってもいいんだぞ」
「そうだな。協力…感謝するよ」
カウンターの紙をかかえ、ドアに手をかける。
「またな、フィル」
「ああ、またなっ!」
“また”を強調して別れのあいさつをする。フィルは数少ない友人の1人だ。また会うまでかなり時間があいてしまうかもしれないが、今度立ち寄ってみるか。
バックのなかに紙を入れ、ドアを開けた。もうクマくんは戻ってきてるだろうか。朝食を買うだけならかなり待たせてることになるが、観光してるなら丁度いいかもしれない。
◇◆
来るときと同じ道をたどって通りに戻る。さっきよりも人が多い気がする。まだイベントはこれからもっと賑わうだろう。
「あ、シンさん!こっちです!」
姿は見えないが、クマくんの声が聞こえた。あまり遠くからじゃないはずだがクマくんはどこなのかわからない。そのとき、波に飲まれるかのように流されていく黒いローブが見えた。
「待ってろ、すぐそっち行くから」
「早くしてください!両手が塞がってて…うわっと、今こけたらマジで大変なことなります!」
どんだけ買ったんだよ、と想像するだけで恐ろしい。お金が飛んでいくように消えていく。覚悟を決めて、さらに密度が増した人混みのなかに体を押し込み、クマくんの声が聞こえたところへ急いだ。
閲覧ありがとうございます。
次から少し文字数を増やしてみようかと思います。テンポもよくしたいですね。
感想や指摘などして頂ければ嬉しいです。pvが100を超えました!ありがとうございます。楽しんでもらえるようこれからも努力します。




