表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い空の下で  作者: 塔野 瑞香
11/18

第11話 不穏

 

その姿を見て俺は驚愕した。これから講義を始めるため、教室にへ入ってきた望月(もちづき)先生の姿に・・・。

左腕はギプスで固定され、三角巾の包袋が首から下げられている。自分の様子を自覚しているのか、先生は授業を始める前に、階段から落ちて骨折したと言った。似たような台詞は以前にも聞いたことがある。あの時は背中を痛がっていた。それを知っている俺はその姿で現れた先生が更に気がかりになった。授業の内容がいまいち入ってこない。いち早く、先生と話したかった。



講義が終わり、研究室から完全に生徒がいなくなるのを待っていた。俺と望月先生だけの空間になった時、


龍田(たつた)くんが聞きたいことはわかってるわ。授業のことじゃなくて、この腕のことね」

そう言いながら俺が座っている席までやってきた。


「階段から落ちたなんて嘘じゃないですか」

直感だった。先生の表情は一瞬、固まった気がした。


「嘘じゃないわ。私、おっちょこちょいね。気を付けないと」

少し焦りを感じさせる言い方に不穏を覚えた。たぶん違う。階段から落ちたなんて・・・。


「先生、俺が相談室を開いた直後に言ったじゃないですか。相談事にのってくれる?って。俺はいつでも聞きますよ」


先生の瞳が微かに潤む。何かを抱えていると確信した。


「・・・先生」


途端に俺に背を向けた。


「ありがとう。だけど何もないの」

小刻みに肩が震えた。


「嘘だよ、先生」

俺は立ち上がり、右手を取った。


「龍田くんは優しいのね」


誰にでも優しいわけではない。こんなに気にしてしまうのは、きっと・・・。

そしてまた、闇がかすめる。


「大丈夫よ、ありがとう」

掴んでいた右手がするりと抜ける。その笑った顔は不自然だ。

胸に迫る切なさと不穏を感じながら、後ろ姿を見つめていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=373163384&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ