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青い空の下で  作者: 塔野 瑞香
10/18

第10話~回想 神戸 由梨~

いつから好きになっていたんだろう。


昨年1年生の時、彼と一緒の芸術学科になった。授業の終わりに制作された作品が集められる。その中でも良かった作品は皆の前にお披露目され、先生に批評される。小宮山(こみやま)くんはその常連だった。彼だけの作品しか選ばれない時もあった。そこから彼の名前を知った。

小宮山くんてどんな人なんだろう。入学してから約2カ月。顔が一致しなかった。ある日、男子が「小宮山」と呼んでいた。私は思わず声のした方を目で追った。「なに?」と答えたその人こそ、

・・・この人が小宮山くんかぁ!小柄な体格、艶のある黒髪、大きめの瞳。カワイー!ど・ストライク♡

それで絵の才能があるなんて好きにならない理由なんてない。彼と話したい!


私はこう見えて消極的だ。小・中学生の頃なんて男子ともあまり話さないおとなしいタイプだった。家にこもって黙々と絵を描いていたり、中・高校生の部活は美術部で内気な性格だった。

高校生の頃、何人かに告白されたこともあった。だけど私の外見ばかりを見て、内面を見てくれている気がしなくて付き合っても長くは続かなかった。自分から男の人を好きになったこともなかった。


小宮山くんのことも初めは尊敬の念だったかもしれない。でもそこから想いは変わっていった。

彼の絵は繊細さがある。きっと心の機微がわかる人。私をわかってくれる人かもしれない。


電車の中で彼を見かけたことがある。座っていた彼はお年寄りに席を譲っていた。絶対に思いやりのある人。話したい。彼と話したい。だけど男の人に自分からあまり話しかけられない私は勇気を持てずにいる日々が続いた。

ある日、小宮山くんが二科展に入選したと授業中に公表された。皆に囲まれ、たくさん話しかけられ、この日の彼はとても忙しそうだった。私も入り込める隙がないか1日、彼を目で追っていたような気がする。実際、何度か目が合ったし。気味悪がられたかな。。

結局、その日は話しかけらず意気消沈。でも諦めない!男の人に対してそう思うなんて珍しい感情だった。


そして神様は私にチャンスをくれた!通学の朝、キャンパス内を歩いていると、前方に小宮山くんが見えた。“今だ” 頭の中で号令が聞こえた。

大きく息を吸う。


「小宮山くん!」


彼が振り返った。

うわーっ!こっち向いた!

鼓動が早くなる。顔が熱くなる。


「二科展入選おめでとう。すごいね」


「ありがとう」

彼は微笑んだ。かわいー♡キュンキュンする~



しばらく数日、彼の声がリフレインして、笑顔は焼き付いて離れなかった。

その日を境に彼と少し言葉を交わすようになった。あいさつや絵に関することだけど、とても嬉しかった。勇気を出して話しかけて本当に良かったと思った。



秋になり、ミスキャンパスエントリーの話が持ち掛けられた。あまり人目につきたくない私は出場を断っていた。だけど、事前投票でトップとなり、担ぎ出されるかたちで出場した。コンテスト当日、舞台に上がって思わず小宮山くんの姿を探した。でも彼の姿はなかった。そのせいもあり、余計気乗りもせずに終わったミスキャンでグランプリをもらってしまった。


その後、何人かの男性に告白されたりしたけど、すべてお断りした。というか、小宮山くん以外は眼中にも入らない。それほど好きになっていた。

その想いとは裏腹に彼が素っ気なくなった気がした。目も合わせてくれない。話しかけてもくれない。

どうしたの?小宮山くん・・・。私のこと嫌になったのかな。せっかく近くなった距離が遠のいていく。

臆病に戻った私は理由も聞けず、彼の後ろ姿を見つめる日々だった。



寂しさを引きずり、でも彼への想いを抱えたまま2年生になり、彼と同じ学科を専攻していたことを知り、嬉しくなった。でも以前のように話すことはないのかな...と落ち込んだりもしていた。


————そんなある日、彼から話しかけてくれた!!嬉しい!!

私がミスキャンで優勝してから距離を感じていたと、釣り合わないのではないかと言われた。

それって私に好意が・・・。ううん、自惚れだわ。


そんな自惚れも撤回されたあの日。私の想いを彼に伝えようと決心したあの日、彼から告白を受けたあの日を決して忘れない。


「2人ともずっと同じ気持ちだったんだね」と私の涙を拭いながら微笑む彼に私は永遠を感じた。




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