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57話

誤字報告機能というものが追加されたようで、受け付ける設定にしておりますので以後よろしくお願いします

 ギルマスに求められ、時系列順に起こったことを説明した。

 その際に、実質俺が倒したと皆にばれてしまっている可能性に気がついた。

 勘違いであってくれれば一番いいのだがなぁ。




 「お前さんの言い分はともかくとして、悪名高き血狂いをギルドが発見するよりも早く退治してくれたのじゃ。金銭は勿論じゃが、それだけという訳にもいくまい」

 長考から戻ってきたギルマスが、そんなことを言い出した。

 嫌な予感しかしない発言だが、続きを聞かない訳にもいかない。

 「金銭だけでも十分だと思いますが、十分ではなかった場合どうなるのでしょうか?」

 「そうさのぉ、どの程度かはあちこちと相談することになるじゃろうから今の段階でははっきりしたことは言えんが、何階級か昇級は確定じゃろう。それだけの貢献はあるし、何より強さを示したことにもなる。国やギルド本部への報告も必要じゃし、それを受けてそちらから表彰という話が出るかもしれん」

 「そしてそうなれば皆が知る所となり、その者の名声は自ずと高まっていくじゃろう。それこそ貴族や大商会などから士官の話も出るじゃろうし、上手くいけば貴族入り、などという話も出ないとは限らん」

 「(おおよ)そ冒険者として望み得る、最高の栄達と言えるじゃろうな」

 そんなことを俺を見ながら言うギルマス。

 止めて、超止めて。

 お前、倒したのはマリエルだって言っただろうが。

 マリエルの方を見て言えよ。

 こっち見んな。

 内心で盛大に罵倒してみるが、勿論口に出して言える訳がない。

 そこで俺がやった事と言えば

 「良かったな、マリエル。マリエルが貴族入りする可能性すらあるって、凄いことじゃないか」

 とまぁ、全力で丸投げしたことだった。

 「ちょ、ちょ、ちょっとまってくだ、ください。わ、わたしが一人で倒したわけじゃないじゃないですか!!」

 そんな事を言いながら、俺に縋り付いてくるマリエル。

 その顔は真っ赤、涙目で今にも溢れ出しそうだし、軽く鼻声にもなっている。

 罪悪感が半端ない。

 功績を譲られた話なだけの筈なのだが、マリエル的には押し付けられ見捨てられたような心境なのかもしれない。

 横目で見ると、ギルマスが面白そうにこちらを見ている。

 キ・サ・マ・・・誰のせいでこうなったと・・・。

 ・・・半分は俺のせいですね。

 「とは言えじゃ、それはあくまで褒賞としての話。嫌がる者に押し付けては、最早褒賞でも何でもなくなってしまうじゃろう。断ろうと思えば断れんこともない。そうさのぉ、儂があちこち手を回し苦労をして抑えれば、表立っては金銭と昇級だけに抑えられるじゃろうて」

 それが狙いか!

 しかしわかっていても、拒否は難しい。

 ここで拒否れば、マリエルが泣く。

 ガチで泣く。

 流れ的に見捨てたのも同然だ、そう受け取るだろう。

 泣いて縋る可愛い女の子を見捨てられるほど、人間性を捨てていない。

 俺の負けは揺るがないだろう。

 最早出来る事と言ったら、体裁を整えるくらいか・・・。

 「ご覧の通り、マリエルはそんなことを望んではいない様子。その苦労をしてもらう代価は如何ほどか?」

 意図を察したのだろう、マリエルの表情が少しだけ明るくなる。

 「何、そもそも礼を言うべきはこちらなのじゃ。儂の苦労などどれほどのものか。ただ一度、一度で十分じゃ、本来なら難しい『お願い』を聞いてもらうだけでいいのじゃよ」

 くっ、引き際までよくわかってるじゃないか、この狸め。

 下手に大きな事を言っては、全てが台無しになってしまうかもしれない。

 だが、この程度なら仕方ない、そう思われる程度であれば、引き受ける可能性も高いし、今後の関係に悪影響を及ぼす可能性も低くなる。

 最善は、恩だけ売って何も求めない事だっただろうが、実際にそれを実行できるほど理知的な人間はそうはいまい。

 例えるなら、目の前に札束を積んで好きにしたらいいと言われたのに、恩を売るためだけに断るようなものだろうか。

 また、その場合は前提条件として恩が楔として十分機能する人間である、ということが必要となる。

 会って間もない俺がその条件を満たしているかどうか判断できるはずもなく、次善として軽い要求だけを求めておくのは悪い手ではないだろう。

 「わかりました。どんな『お願い』でも叶えるとは言えませんし、あくまで俺に出来るであろう事だけに限りますが、それでよければその話をお受けいたしましょう」

 マリエルがそこに希望があると言わんばかりの期待に満ちた表情でこちらを見ている。

 頭を撫で、落ち着かせる。

 「ほっほっほ、お前さんが話がわかる人物で助かったよ。しかしそうなると、昇級の話も余り上がらない方が望ましかったりするのじゃろうかの?」

 「そうですね。ベストは無しですが、1階級くらいでまかりませんかね?」

 「1階級って・・・お前さん、Gランクじゃろう? 血狂い倒してFランクはないじゃろう。そんな事通したら、儂が周り中から袋叩きにされて罷免されてしまうわい」

 呆れた様子を隠しもせずにそう言うギルマス。

 くっ、流石に無理か。

 「では、2階級Eランクと・・・今月と来月のダンジョン探索権とかではどうでしょう?」

 「あくまで儂の見立てじゃが、最低でDランク最高でBランクが順当なところじゃと思うぞ」

 ないわー、Bとかまじないわー。

 「2階級Eランクと・・・今月と来月のダンジョン探索権とかではどうでしょう?」

 爽やかな笑顔でそう繰り返す俺。

 「わかった、善処はする。が、期待はしないでほしいものじゃな」

 疲れた様子でそう言うギルマス。

 「因みに、マリエルはAって事はなさそうなのでBランクに?」

 気持ちよさそうに頭を撫でられていたマリエルが、びくっと肩を振るわせる。

 「そうなるじゃろうな。血狂いと言えどもゴブリンではAはないじゃろうし、かと言って昇級無しもなかろうて」

 それを呆然と聞いているマリエル。

 気持ちはわからないでもない。

 俺がどれだけ言った所で、自分では大して役に立っていないと思っているっぽいマリエルが、その功績でランクアップとか居心地悪いなんてものではないだろうし、まださっきのショックを引き摺っている様に見える。

 まぁ、これ幸いと乗っかかる人も多いだろうが、マリエルの反応の方が俺としては好ましい。

 その居心地悪いものを押し付けているのも俺だが。

 これで保険はろくに効かなかったが、最悪は避けられ何とか許容できる範囲内で話が纏まった。

 後は、マリエルへの対応だな。


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