02話
異世界で遭遇した最初のイベントは、襲撃イベントだった。
勘違いという事もないだろうが、一方的に決めつけるのもよくない。
なので、少し観察する事にする。
馬車の護衛たちは統一された装備の、きっと騎士とかなのだろうという趣の者たち。
対して襲撃者たちは統一感が全くなく、いかにもごろつきですといった感じの者もいる。
ただ思うのは・・・美形揃いだな、こいつら。
護衛は兜で見えないが、襲撃者の方は全員が全員兜を被っている訳ではない。
寧ろ、被っていない方が多い。
そのお陰で顔が見られるのだが、揃いも揃って美形だらけだ。
ごろつきまで美形とかどうなっているのか。
あの容姿なら、日本でモデルとか余裕でこなせそうだ。
格好はごろつきとしか言いようがない感じだが。
街での行列の時は、遠くから観察していただけなので気付きようがなかったが、もしかするとあちらもそうだったのかもしれない。
その残念美形たちが、少し離れたところから弓で護衛たちを襲撃している。
トカゲもどきと御者、護衛の内数名は既に地に伏し、その数倍の襲撃者が躯を晒している。
だが如何せん襲撃者は数が多い上に、被害を恐れてだろう、近付かず弓をメインで攻撃している。
トカゲもどきは弓ではなく魔法で殺されたのであろう、焼け爛れた肌を晒している。
よく見ると、襲撃者の後ろで休憩している魔法使いですと言わんばかりの者がいた。
奴の仕業だろう。
護衛たちも奮闘しているが、トカゲもどきも御者も殺され、仲間も数名倒れている。
矢から身と馬車を護るので精一杯といった感じだ。
レベルやスキルから判断するに、護衛対象なしなら数人同時に相手しても勝てるであろう。
だが馬車を護りつつ、この人数差ではどうしようもなかろう。
寧ろ諦めずによく頑張っていると思う。
流石にこれは悪徳貴族と虐げられてきた住民とかではなく、見た通りのただの襲撃だろう。
一応後詰や指揮・監視者がいないか確認してみると、離れたところからこちらを窺う者たちを見付けた。
通りから離れた岩山に身を隠して、こちらを窺っているのだ。
これで勘違いという事もあるまい。
だがそれは後回しだ。
まずは馬車と護衛を助けよう。
『隠密』と光学迷彩を解いて姿を現し、一応確認の為に声を掛ける。
「通りすがりの旅人だが、助けはいるか?」
双方手が止まり、辺りを見回す。
これ、明らかに隙じゃないか? と思ったが、そのまま再度声を掛ける。
「上だ。再度尋ねる。護衛の者たちよ、助けはいるか?」
そこで一斉に上を見て、やっと俺に気が付く。
全員呆然を俺を見ている。
中には口を大きく開けているものまでいる。
そんな中、馬車の護衛がいち早く状況を思い出し、返事を返すが何を言っているのかわからない。
異世界だしな、言語が違って当然か。
仕方がないので別の形で返事を要求する。
「生憎と言葉が通じていない。助けがいるなら・・・そうだな、剣を掲げよ」
即座に護衛全員が剣を掲げる。
相当追い詰められていたようで、中々の反応速度だ。
「承知」
これで変な言いがかりを付けられることもないだろう。
勝手な事をとか何とか。
さて、ではどうするかな。
お互い死人が出ているようだし、殺してしまっても問題ない世界観のようだが、はっきり言えば生かしたままにしておいてもどうとでもなる程度の敵だ。
殺してしまってはそれまでだが、生かしておけば情報を得るなり何なり出来るだろう。
そう考え、殺さない程度に手加減する事にした。
ただ、余り手の内を晒したくはないので、圧縮空気をぶつけて気絶させる程度に留めておいた。
この程度なら『風魔法』でも再現は容易だろう。
問題は、数十人いる襲撃者を一斉に気絶させた事だろうが。
一斉に倒れ伏す襲撃者に、呆然とする護衛の者たち。
さっきから呆然としすぎだろう、仮にも戦闘中だというのに。
まぁいい。
これでここは取りあえずいいとして、後は監視者だな。
「これで全員気絶しているはずなので後は任せる。ここから少し離れた所に、隠れてこちらを窺っている者たちがいる。俺はこれからそいつらも捕まえてくる」
そう言い残し、光学迷彩を施してから監視者のほうに飛んでいく。
そう離れているわけでもないので直ぐに着くが、二人いた監視者が何やら言い争っている。
身なりの良い方がもう片方に文句を言い、それに対して反論している、といった所だろうか。
推測に過ぎないが、何を言っているのか全くわからないから仕方がない。
身なりが良い方が襲撃依頼者、もう片方が全体指揮者って所かな?
ともあれ、襲撃と無関係のはずがないので、二人とも気絶させる。
俺は『烈風魔法』により、圧縮空気を手の形にして色々できるようになっているのだが、これを風の手と呼んでいる。
手とは呼んでいるが、別に手の形である必要はない。
ただ、手の形で利用することが多いからそう呼んでいるだけだ。
その風の手を人間を一掴みに出来るサイズで作り、そのまま掴み持ち上げて連れて行く。
馬車まで戻ると、中の貴人と思しき人が降りてきていた。
後、お付のメイドらしき人も。
見るからに貴婦人然とした女性と、恐らくその子供である男の子。
後ろに控えているメイド服の女性二人。
さっき見なかったこの4人が、馬車に乗っていた人達だろう。
護衛の騎士らしき人たちが命がけで護っていたくらいだ、相当身分が高い人であろう。
ここは無難に膝を突き、頭を下げておく。
そうしようと思ったのだが、膝を下げた段階で、貴婦人がそっと手を肩に伸ばして俺を押し留める。
そして笑いかけながら、首を横に振る。
何か言っているが、生憎とさっぱりだ。
だが言わんとすることはわかる。
恐らく恩人である俺に、そこまでしなくてもいいと言っているのであろう。
止められてなお膝を突いたら、逆に失礼だろうからそのまま挨拶をすることにした。
「お初にお目にかかります。俺はルイ・ヴァーユ。この地より遠く離れた国から来ました、旅人でございます」
と、頭を下げながらしれっと偽名を名乗った。




