20話
ダンジョンを出て歩いていると、ふと思う。
最近はここも人増えてきたな、と。
最初来た時はがらがらだったものだが、ちらほら人の姿がある。
ここから遠い人はもっと便利な場所にあるところへ行き、ここの比較的近くの人くらいしか来なかったものだが。
そんなわけで、ここの駆除を行っている面子の殆どは自衛官・警察官だった。
向こうは勤務中だから雑談などしないし、此方も進んで話そうとしていないので、お互い顔は見知っているが話したことはない、という人ばかりである。
こちらをちらちら見ている者もいるがスルー。
坂を上り、守衛に挨拶をして防壁を抜ける。
右手にはまだ新しい慰霊碑が建っていた。
このダンジョンに限らず、その地のダンジョン関係で死亡した人を慰めるために、死亡者が出たら慰霊碑を建てているらしい。
このダンジョンは一般の探宮者が少ないから、他のダンジョンと比べると随分遅くに建てられた。
最初の犠牲者は警察官だったと聞いている。
前を通るときに一旦止まり手を合わせる。
明日は我が身、とは言わないがそれでも思うところはある。
行きと帰り、前を通るときには手を合わせるようにしている。
もう少し進むとぽつんと店が一軒ある、国の直営店である。
中に入り、暇そうなおっさんに声をかける。
「ちはー」
「よっ、今日もお勤めご苦労さん」
名前も知らないおっさんだがそれなりに付き合いは長いし、何より利用者が少ないからとっくに顔馴染みである。
因みに、向こうは免許証提示しているから名前を知っているが、こちらはおっさん呼ばわりである。
「おっさん、これ買取してくれ」
肩に担ぎ引き摺っていた今日の獲物 (ということになっている)を買取用のスペースに置く。
「今日も首を一撃か、何時もながらいい腕だな。血抜きもちゃんとしてあるし。これでわた抜きもしてくれてたらばっちりなんだがなぁ」
毎度言われる。
「お前さんの腕ならもっと狩ってこれるんじゃないか?」
これも毎度言われる。
そして毎度
「血抜きならぶら下げておくだけだが、わた抜きは面倒だよ。狩る度に持って帰るのも面倒だし、その時間があればその分多く狩る」
と返す、何時ものやり取りである。
ため息を吐きつつ査定をするおっさん。
その間の手持ち無沙汰を世間話で潰す。
「自衛隊や警察はここに持ってきたりしないし、他の探宮者はまだそこまで深くは潜れないんだよ。お前さんの持ってくるものが一番深い階層のものなんだ。何とかならないかねぇ」
今日はやけに粘るな。
「何かあった?」
「何かって程じゃないけど、深い階層になると食べるのに抵抗が少ない獲物が増えるだろう。その所為で最近需要が増していってるのさ」
確かに最初そう思ったな。
「これもイノシシみたいなものだし、ネズミだのネコだのに比べたら普通に食えるしねぇ」
種族ボアだしな、一応。
角だの牙だのあるし、体長2m近くあるけど。
「自衛隊にしろ警察にしろ自分のとこで食べちまうから、探宮者が持ち込まないと出回らないんだよ」
「で、その探宮者はまだそんなに深く潜れる人が殆どいない、と」
「そ。他じゃ何人もいるところもあるが、ここじゃお前さんくらいだな」
「不甲斐ない。金稼ぎに走ってる奴ばかりだから、未だに30階層に届かないんだよ」
実際は100まで行ってるがな。
いやいや、それ以前にチートのお前が言うなって話か。
「そう言いなさんな。探宮者は普通金目当てで潜るもんだ。お前さんが例外なだけだよ」
まぁ、わかってて言ったが。
肩を竦めるゼスチャーで返す。
ここだと自衛官・警察官のトップが30階層後半に、俺以外の探宮者は大体10階層以下である。
俺もそれに合わせて、まだ30階層でやっていることにしている。
偶に鉢合わせたって演出をして、偽装工作もやっているし。
「全部で600でいいか?」
「あぁ、入金は何時も通りで」
と言って入金用カードを渡す。
これは直営店でのみ使える銀行口座のカードで、これで入金された分の金は所得税の対象外となる。
あのイノシシ1匹で600万とか、稼ぐ気になったら幾らでも稼げるよね。
金に困っていないから余り興味ないが。
奥まで潜れない連中も目先の金に目を奪われずに、先ずレベル上げでもすればよりうまい奥のモンスターを狩れるのに。
それにどれだけ時間が掛かるかはわからないが。
入金を終え、店を後にする。




