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01話

 俺こと藤井達也は、ある日突然特殊能力に目覚めた。


 こう言うと気でも触れたかって話だが、寝ぼけている訳ではないし何度も確認した。

 その上で、実際有り得ない能力を得たのだから、こうとしか言い様がない。

 ただ、得た能力そのものは今まで自分が散々妄想してきたものだったので、能力の行使に問題はなかった。

 なんとなくだが使い方もわかったし。

 問題は別にある、余りに弱いのだ。

 正に虫も殺せない、生物に干渉できないから。

 元々妄想していた能力が掃除用だったので用を弁ずることはできたが、思い付いた後、追加で考えた事は出来そうもない。

 余りに弱いから、重要なので2度言った。

 後、気掛かりなのは何故こんな能力を得たかだ。

 こんな超常現象、原因もなく起こる訳がないが生憎とさっぱりだ。

 能力を得た理由がわからない以上、わからないままに失うことも十分考えられる。

 であるなら、この能力は隠すべきであろう。

 公表して利用して、いきなりなくなったりしようものなら後の展開が予想できる、良くて詐欺師扱い最悪身の破滅だ。

 しかし折角得た能力、使わない等という選択肢はない。

 使っていく内に、レベルあるいは熟練度的なものが上がって強くなるかもしれないし。

 などと賢しく考えてみたが、実際こんな事を考えられたのは、能力を得た二日後だ。

 それまではどうしていたか。

 初日は得た能力をハイテンションのままに使いまくってぶっ倒れ、二日目はそのまま寝込んでいたからだ。

 三日目、随分マシにはなったがまだ不調な体で会社に向かい、前日の苦しみとで寧ろ鬱気味になりつつ仕事をしながら考えたのがこれまでの話だ。

 連休中で仕事に支障がなかったことを喜ぶべきか、折角の連休が潰れたことを悲しむべきか・・・悲しいな、普通に。

 仕事中にも少しだけ使い、何度か確認したがやはり使える。

 しかもこの能力、誰にも見えていないようだった。

 自分ではうっすらと在るのが見えるのだが、最初はこっそり最後は堂々と他の人の目の前で使ってみたが、誰も反応しない。

 隠すことを決めたからには見えないのは好都合だが、本当に誰にも見えていないのかは確信が持てなかった。

 偶々ここには見えない人しかいなかったとかだと困るので、結局こっそりと使うことにする。

 若しくは、特定できないように使うか。

 聞くわけにもいかないしね。

 本当に見えていないなら変人扱い、見えているのに無視しているなら、秘密にしようとしていることを自分から一方的にバラすなどという馬鹿なことになる。


 ともあれ、基本方針は決まった。

 意図せず使い過ぎるとどうなるかがわかったから、恐らくMP的なものを使い過ぎない程度を見切りつつ極力使っていこう。

 そしてレベル或いは熟練度を上げ(ることを期待しつつ)、能力の存在は誰にも悟らせないように隠し、普段通りの生活をしながら情報を集めよう。

 きっと同類がいる。

 これが自分だけに起こった特別なことだと考えるより、特別かもしれないけど自分以外にも起こっていることだと考える方が納得できるから。




 俺こと藤井達也は、隠れオタクである。


 アニメ・ゲームは大好物で、休日などは好きな作品があれば朝から晩まで遊び倒している。

 なくても遊び倒してはいるが。

 一人暮らし故に、誰憚る事無く睡眠・食費を削るなんてのは日常的で、それの為に生きていると言っても過言ではないだろう。

 生きていくために仕方なく働いてはいるが、はっきりいって積極性はない。

 趣味は隠しているので、会社では当たり障りのない話ばかりで特に親しい友人はおらず、休日は専ら同好の友人とのみ遊んでいる。

 昇給には興味あるが昇進には興味ない、何故なら昇進すれば責任が増すからだ。

 責任が増せば仕事が増える、仕事が増えれば遊ぶ時間が減る。

 生きていける金が稼げれば、後は遊ぶ時間こそが欲しい。なので、40前にしていまだに平のダメ社員である。

 最近では、長らく続けていた某大作MMORPGが実質終わりを告げネトゲ難民となり、前々から偶に顔を出していたネット小説サイトを読んで無聊を慰める日々。

 昔から本はよく読んでいたのだが、そんな中でもお気に入りはファンタジー物だ。

 某MMORPGをやっていたくらいだから当然かもしれないが。

 数あるファンタジー物の小説の中でも異世界転生・転移物は、テンプレチートを自分ならどうするか等々を考えるのが楽しい。

 というか、自分ならこんなの貰うなってのを考えてある。


 そんな俺がある日得た能力は、正しくその妄想していたものだったが、最弱状態だった。


 最強状態だと、中々に万能で強力な能力だったのだが、これは言っても仕方ないだろう。

 例えるなら、貰っただけの宝くじで2等が当たったようなものだろうか。

 1等でないことを悔しがるよりも、棚ぼた的に2等が当たったことを喜ぶべきである。

 その様に何度も何度も自分に言い聞かせる。そう、悔しがることではないのだ。

 寧ろこんな何もわからない状態ながら、妄想していた能力を得られた事を喜び、前向きに考えるべきだ。

 何とかそう結論付け、基本方針に則り情報を集める。

 主にネットで。


 そうそう、いろいろ言ったが得た能力自体のことはまだだったな。

 俺が得た、妄想していた能力の名は、



 魔法の濾過膜(マジックフィルター)だ。



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