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15話

 今、俺の目の前にはダンジョンの入り口が聳え立っている。

 そう、聳え立っているのだ。

 でかい、何処かの凱旋門と言われても納得しそうなほどである。

 シンプルではあるが。

 そしてその前の地面には、魔方陣としか言いようのないものがうっすら光って存在している。

 事前の講習で聞いてはいたが、実際に見ると妙な気分になる。

 アニメ・漫画の世界に迷い込んだような・・・。




 この場は地下10数mほど下った場所にあり、ダンジョンは皆このように元々地面があった場所が陥没するかのように現れるらしい。

 そしてダンジョンを覆うように防壁を設置されている。

 許可なく立ち入られないように、発見当初から敷かれたものらしい。

 ただどういう理屈か、出入りが出来ないように塞ぐと、途端に中から爆発でもしたかのように吹き飛ばされるらしい。

 それは鉄格子などの密封から程遠いものでも同様で、現在では出入り口となる一箇所を除き防壁を敷き、出入り口には24時間体制で守衛が置かれている。

 守衛に免許証を掲示し、出入り口から中に入ると直ぐ急な坂があった。

 坂を下ると平地に大きな魔方陣がある。

 この魔方陣、理屈は全くだがダンジョンから脱出するのに使えるらしく、予め魔方陣に乗り登録しておけば、ダンジョン内で同様の魔方陣を見付ければ、そこから一気に帰還出来るらしい。

 正にワープ。

 いや、魔方陣だから転移としておこう、気分的に。

 更に、ダンジョンには現在確認されている限り10階層ごとにボス部屋があり、その奥にある魔方陣に登録すれば、魔方陣から魔方陣まで移動できるらしい。

 ショートカット可能とかユーザーフレンドリーで実によろしい。

 早速魔方陣に乗り登録する。

 10秒ほども乗っていれば登録できるという話だったが、念の為20秒ほど乗る。

 どうせ混んでる訳でもないし。

 寧ろがらがらである。

 僻地にあるとはいえ、これで大丈夫なのか心配になるほどだ。

 流石日本で一番不人気なダンジョン。

 まぁ、好都合だから気にしないでおく。

 そのまま先に進み、門の前に行く。

 門の中は油膜でも張っているかのように、様々な色に光り揺らめいている。

 モンスターはどれもとても凶暴で、見付かったら即襲い掛かってくると思うように言われている。

 最初はそれほど強くないという話だったが、それでも普通は数人で組んで駆除を行う。

 俺の場合、人に見せられないので誰かと組むことは出来ない。

 つまり必ず一人で駆除を行わなければならないということである。

 緊張する。

 当然だ、能力的には全く問題にならないだろうが、平和な日本で暮らしてきた一般人の俺が、能力があるからといきなり殺し合いの場に来て、上手く立ち回れるはずがない。

 それはわかっている。

 わかっていて尚来たのだ。

 時間を掛けて覚悟を決める。

 いざ襲われてからでは上手く武器が抜けないかもと思い、予め太刀を抜いておく。

 攻撃は兎も角、防御は万全のはずだ。

 防御に不安がなければ、落ち着いて攻撃できるはず。

 そう自分に思い込ませ、遂に第一歩を踏み出す。


 空気が変わった気がした。

 さっきまでの日本の空気を弛緩した空気とするならば、ここは少し緊張を孕んでいる。

 気のせいの可能性は大であるが。

 暗視があるから全く問題はないが、聞いていた通りそれなりには明るい。

 日が落ちかけた夕方くらいだろうか。

 洞窟タイプのダンジョンで、全体にうっすら光っていて、それなりに幻想的な光景である。

 戦闘行為に支障があるという程ではないが、太刀を振り回すには少し狭く感じたので、太刀はしまい小太刀を二振り取り出す。

 左右の腰に差し、片方だけ抜いておく。

 『地図化』のスキルにより、一度通れば地図が頭の中に思い浮かび、後からでも容易に確認できる。

 スキル10だからだろう、既にかなり広範囲が表示されている。

 それ所か、多分他の探宮者であろう青い光点とモンスターと思しき赤い光点があり、下に下りる階段であろう表示まである。

 ベリーイージーモードである。

 まだ戦闘をこなしてもいないのに少し気が抜けた。

 それはよくないと気を引き締め直し、先に進む。

 もう少し先に行くと赤い光点が一つだけあるが、本当にモンスターだろうか。

 曲がり角の先だったのでこっそり覗き見る。

 目が合った気がした。

 モンスターだ!

 そのモンスターは直ぐにこちらに走り寄って来た。

 途端に世界がゆっくりになる感覚を覚えた。

 走馬灯? 俺、死ぬの? 

 そんなことがちらりと頭を過ぎったが、体が半ば無意識に動きモンスターを一刀両断する。

 一刀両断である。

 勿論骨ごと。

 抵抗らしい抵抗すら感じなかった。

 切り捨てた後ゆっくりになる感覚が元に戻った。

 愕然として自分の手の中の小太刀を見る。

 血に染まった小太刀と手に僅かに残った感触は、間違いなく自分が切り殺したことを物語っていた。

 後ろを振り返ると、真っ二つにされた猫くらいの大きさのネズミ?がいた。

 結構グロい。

 その筈なのに平然としている。

 グロを見たことも襲われたことも切り殺したことも、その辺の石を蹴り飛ばした程度のことと同じであるかのように平然としている。

 何も感じていないわけではない。

 なので麻痺しているわけではないはずだ。

 しかし、不自然なほど平然としている。

 異常がないことが異常だった。

 確認せずに進むべきではないと判断、そのまま来た道を戻る。

 ふとネズミをどうしようか考えるが、ネズミとか食べたくはないし、講習によるとモンスターは殺して回収せずに置いておくと、数時間程度でダンジョンに吸収されるかのように消えていくらしいので放置することにした。

 何処かで場所を借りて、色々試してみるべきだろう。


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